こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

もはや伝説の異世界的出会い頭事故「スマホ太郎」の台頭

 スマホ太郎を覚えいてるだろうか。

 

 スマホ太郎とは、スマホを持って異世界を練り歩く転生少年の青春を綴ったその筋では金字塔と最底辺を兼ねるとにかく伝説の作品である。ちなみに「スマホ太郎」は、主人公の特性をもじった本来のタイトルの別称であり、同時に蔑称でもある。愛称で用いるパターンはほぼ無い。

 

 この作品の特筆すべき点は、死んだ主人公が異世界転生の際に「スマホを持たせてくれ」と神様に条件を出し、スマホを転生後の世界に持っていくことにある。転生後の世界はよくある西洋ファンタジーみたいな感じで、そこにはもちろんスマホなる発明はない。それまでの世界のあり方から言えば主人公は異端であり、スマホはもっと異質な文明としてそこにある。

 ドラクエをやっているのにスマホがあるみたいな、分かりやすく浮いた要素をぶっ込んだ所が光るという出オチアニメだった。

 

 現在では「異世界に行く」という根っこのテーマは同じで、後は諸々手を変え品を変えで基本的に同じような作品がいくつもある。今日まで続いて来た異世界物の「手を変え品を変え」の部分を特化した作品の走りとも言える。

 

 作品は今から5年程前にアニメ化され、これが好評には程遠い愉快な評価を受けた。平成時代に放映した全アニメの内半分は絶対に見たであろうライト圏完全脱出のヘビー寄りアニオタの私が、その人生の全てで知る限り、平成時代史上ここまでオタク(とその他一般人含めて)から揶揄されまくった作品は他にない。そのレベルですごい作品だ。

 将棋アニメでも無いのに「まるで将棋みたいなクソアニメ」という話を聴いただけではもちろん、ちゃんと見ても尚よく分からない評価を受けたマジに謎作品である。

 

 この私もリアタイで全話見たのに「この時間は何だったのか?」と言えるくらいに中身を覚えていない。いや、見るに、記憶するに足りないと脳が判断したからなのか、目は開いても記憶機能がシャットダウンしてしまった。

 内田真礼上坂すみれが出ていたことしか覚えていない。

 

 1クールやってそれだけ何も残っていないということは、中身があってないというか、本当を言えば無い。というのが種明かしである。

 出オチ勝負に特化するのが狙いであって、予てから中身がすっからかんのスタイルで戦うと決めている作家だって多くいる。だから何話放送を重ねても視聴した我々の中では、得た物として何も積み上げがない作品だって山のようにある。そんな虚無型アニメの中でもスマホ太郎は軍抜きですごい。

 

 多くの人間に揶揄され、私だってしっかり笑った作品だ。

 でもね、コレがすごいことなのだ。

 例えば芸人スターでいうと出川のてっちゃん、その後輩の英孝ちゃんとかがそうなのだが、従来の芸人のテクニックを用いた気の利いたアクションをしない、出来ないにも拘わらず面白い奴として確立している者がいる。大したテクを使えないのに裸一貫でぶつかる仕事ぶりから、技を持たぬポンコツ芸人、滑り芸人と呼ばれる者が誕生した。でもコレの技を使っていないようでいて、使わずとも生き残っているのが既に大技という矛盾したような面白さが素晴らしいのだ。だから私は出川も英孝も大好きなのだ。

 

 スマホ太郎もその口だ。

 中身がない、無駄、つまらない、クソアニメ、別に無くても良かった時間、放送時間の30分が如何に大事かが分かる程視聴時間を無駄に感じた、などなど様々な負の意見が飛ぶ要素も確かにあった。

 しかし、その負の部分を貫いて向こう側の世界に行けばそれはもう新機軸なのだ。面白いならもちろん、つまらないならもっととことんまでに突き詰めた方が良い。さすればどちらのアプローチでも伝説の高みに登れる。

 スマホ太郎は、従来の創作物の面白みの遥か外を行きまくった点に、つまらないを通り越した面白さを見出した異色作である。ありふれたもの以下であり、以上でもある。いずれにせよこれはその手のジャンルの特異点だ。だからこそなんだかんだ言われても愛されている。ただの面白いアニメ、またはクソアニメではこんな特殊なポジションは勝ち取れない。狙って何とかできるものでもない。

 クソアニメにも愛される物とガチで嫌悪される物があるが、本作は間違いなく前者の該当する。コンテンツに触れる者が天邪鬼な反応をするだけのことで、四捨五入すればスマホ太郎は愛される人気者なのだ。最終的にこの枠に収まったという功績が本当に凄いと思う。

 

 私はスマホ太郎の作者を尊敬する。豆腐のようなメンタルであれば、アニメ一期の評判を受けて早々に筆を折って創作とさよならすることだろう。

 継続は力だ。あんな物語だが、5年待った末にはまさかのアニメ2期の話が持ち上がった。すごい。今年はコレと「進化の実」の2期製作発表があったことにマジで驚いた。なぜって22世紀まで待っても続きがあるとは思えない代物だったから。

 

 一度解散した役者チームも2期収録となれば再結集することなる。これに関しては、主人公役からヒロイン役を含め、誰もが二度目の集合の声がかかるとは思っていなかっただろう。ヤフーニュースで一期の役者陣のお祝いコメントがまとめられていたが、こんな取材を受ける未来が来ると予想していた者は一人もいなかっただろうとツッコミながら読んでしまった。ていうかこんな番組に新人時代のまりんかこと高野麻里佳が出ていたのかとビックリ。

 

 この作品の一期なら業界的迷走の末の行き止まりで出来た産物と納得出来るが、二回目ともなると、ある種悪ふざけの産物か世紀の賭けかと考えてしまう。

 いずれにせよ偉業だと思う。例えば「鬼滅の刃」や「ヒロアカ」あたりが続編をやるのとはまるで訳が違う。だってあのスマホ太郎だぞ。

 これでも2期があるということは、別の見方をすれば、一期のみで以降続編が出ていない全アニメに2度のアニメ化チャンスがある。もっと言えば、まだ映像化していない連載作品を持っている全作家にも映像化チャンスがある。スマホ太郎2期を作るという事は、それくらい業界に希望の光を照らす大事件だったと言えよう。

 

 すごい。すごいぞスマホ太郎。

 中身がなんであろうが、継続して話を作ったから続きのアニメ化がある。とにかく続けないと希望の光は差さない。全てのクリエイターに向けて、続ける限りは全員にチャンスがあるという新時代の指標になったのが伝説の異世界アニメ「スマホ太郎」だった。

 2期を作るという話を受けてからは、この私ですら何か書けば大なり小なり何かしらのチャンスが巡ってくるのかもしれないと希望が持てた。ラノベ、ちょっくら書いてみようかなとも一瞬思ったが、さすがにそれは無いか。スマホ太郎を越える薄味小説は私には作れないだろう。

 

 2期ももちろん見るに決まっている。2期もどんな将棋アニメになるのか期待だ。2期も笑いながら見れると良い。

 なんだかんだ言っても私は2期を大いに歓迎する。なんなら3期もやってハリウッドで実写化もすれば良い。そうなったら21世紀で一番笑える事件になるだろう。

 

 ちなみにコレの一期放送時から本日になってもまだガラケー持ちな私は、未だに現世でもスマートフォンと共に生活が出来ていない。二度目の人生でもお供にしたいくらいスマホって良いものなのか?

 そんな事を考えながらもガラケーと共に元気に生き、スマホ太郎第二章放送日を楽しみに待とう。

 

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