こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

美しき吸血鬼「吸血姫美夕」テレビ版

吸血姫美夕」は、1997年10から1998年3月まで放送された全26話のアニメ。

 

 先日、先行して世に出たOVA版を見たら大変楽しく、感動も出来たことでしっかり気に入った。この調子でテレビ版も見たくなり、3日かけて全話完走。楽しかったぜ。

 

 OVAが1988年に発表され、そこから約10年経ってまたテレビ版として帰ってくるとは、この段階で既に息長く愛されたコンテンツだと分かる。ヴァンパイアの美夕は命の時間が止まった永遠の美少女だが、長生きする中でたくさんの日本人に愛されたのだな。幻想と美が渦巻く素敵な作品だった。

 

 DVDにはしっかり全26話が収録されているが、当時のテレビでは25話のみしか放送されなかった。早くも未放送となったのは第2話だった。リアタイで見ていたオタクは、いきなりの蔵入りに驚きがっかりしたことだろう。

 これの原因はアニメにはなく、当時を騒がせたリアルな事件にあったという。なにせ古い話なので詳しくは不明だが、たまにこの手の現実がアニメ事情に突っ込んでくることがあるから困る。

 最新の事例なら、現在かっ飛ばし放送中の女子漫才アニメ「てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!」の第2話も痛ましい現実の事件が関係して未放送になった。さすがにこっちの事件は新しいので耳に届いている。

 そんなことから当時の荒んだ時代背景も見える作品だった。

 

 では、前作から約10年ぶりとなる美夕の活躍を描いたこちらの感想も書き殴っていくぜ。

 

吸血姫美夕 Integral COMPLETE-SLIM-BOX [DVD]

 

内容

 人の心を蝕む悪しき妖怪を総称して「神魔」と呼ぶ。神魔は人の世と棲み分けられた闇の世界に一度は封印されたが、時を越えて現代社会に蘇ると、再び人の世に溶け込んで悪事を働くようになった。

 

 人の世にあらざる悪しき神魔の動向を監視する者として存在するのが、美しきヴァンパイアの少女 美夕である。

 

 闇夜に紛れて悪しき神魔を討伐する美夕の活躍が描かれる。

 

感想

 まずはメインの声優が変わっていることに注目。

 今回の美夕役は長沢美樹エヴァのマヤ役で、関智一と仲良しだった人だな。そういえば関智一も千里の兄貴役として後半に出てくる。

 ラヴァが仮面をつけた後にもしっかり喋る設定になっていて、今回は三木眞一郎が演じている。相変わらずいい声だな。

 OVA版にはいなかった美夕の第2のお供として、死無(しーな)という絶妙にポケモンのピッピっぽいマスコットキャラが登場する。キモグロ可愛い路線で行くちびキャラで、美夕の肩に乗っている画がキュート。チビマスコットキャラの声が映えるかないみかが演じている。

 こんな感じでメインはなかなかの有名人で固めている。

 

 基本的に1話完結の怪しく切なく面白いストーリーが連続し、各話には人間、神魔含めたゲストキャラが入れ替わり登場することになる。それらゲストキャラを演じる声優も豪華な顔ぶれになっていた。

 

 ゲストの人間キャラが持つ心の隙間に潜り込んで悪事を働く神魔の活躍から、人間の持つ愛憎、愚かさなどの煩悩が見えてくる。

 社会的ストレスからの万引き癖、ちょっぴりの同性愛、やや行き過ぎた近親愛など、人間の持つ様々な内面問題をストーリーに上手いこと落とし込んでいる。単純に化け物退治を行うだけの話ではなく、どこか社会派で風刺の効いた毎話の人間ドラマは大人向けに楽しめる作りで良い。シナリオはとても面白い。

 人間の闇ともっと闇を極めた化け物の討伐、これらの魅力で攻める点に「鬼太郎」の活躍を思い出す。テレビ版だと、より美夕の女鬼太郎感が強まっている。

 

 ラヴァの過去が明らかになるエピソードでは、珍しいことに西洋の神魔が登場する。おしゃれに船に乗って日本までやって来る。ここは鬼太郎の妖怪大戦争みたいで結構ワクワクした。リリスというかなり萌えな西洋の神魔ヒロインが良かった。

 

 美夕がヴァンパイアとして覚醒するまでのストーリーもしっかり描き、メインキャラの掘り下げもよく出来ていた。現在より少し幼い過去の美夕の姿にも萌える。

 

 美夕とは同業者でありながらも、主義が異なることから対立関係にもあるライバルキャラのポジに冷羽がいる。美夕の格好も雪女っぽいが、こちらの冷羽はマジの雪女である。

 大人しそうな顔をして内面はかなり冷酷であり、良い神魔なら活かそうとする美夕と違い、冷羽はサクっと消してしまう。

 ヒヤリとするヒール役要素のある冷羽を出すことで物語に緊張感が生まれて良かった。

 

 冷羽のお供は松風という少年の姿をした人形。最初は腹話術で冷羽が喋っているのかと思ったが、どうやら人形の松風にもお喋り能力があった模様。

 少女の冷羽、少年の松風、両方を緒方恵美が演じている。彼女の男女キャラの演じ分けが見れる点でも楽しめた。

 

 OVAとは絵柄も大きく変わっている。OVAも十分に綺麗で可愛く描いていたが、テレビ版の方が萌え度と艶っぽさが高まっている。個人的にはこっちの方が好み。この時代にしては絵が綺麗。作画崩れもかなり抑えた良き出来だった。

 とにかく美夕は可愛いし、他の女子キャラにも萌える。特に良かったのは、第20話に登場した曽根璃莉というユリ臭い見た目をしたとってもパパラブなヒロイン。あれは良かった。

 

 学生として美夕が人間界で生活する中、美夕と最もお近づきになった重要ヒロインが千里だった。第2話からずっと登場するキーパーソンの彼女なのだが、これがかなり可愛くて萌える。

 良い感じにモフっとしているアイドルカットとでも呼ぶのであろう髪型が良い。バスタードのヨーコやコレクターユイみたいな感じの髪型だった。

 

 放送半年をかけて育てて来た美夕と千里の女の友情は美しい。が、そのオチは意外な方向に向かう。美夕も千里本人も気づかないことだったが、作品の大ボスが千里だった。初見で千里がボスと見抜けた人はいたのかな。

 最初からいた友人キャラがボスになるこの感じは、デビルマンのオチを思い出すものだった。

 

 可愛い親友キャラなのに、最後は美夕の討伐対象として首チョンパの流れに持っていくしかなくなる。

 かつての友のフレッシュな生首を抱いて戦いの終わりを迎える美夕の姿を映して物語は落ちる。

 この運命は誰がどう見ても悲しく残酷。だが、ラストショットは悲しくも美しいもので不快感は薄い。そこが印象的。この物語にはベースとして悲しさと寂しさがあるが、そこを上塗りするのは美しさなのである。という訳で落とし方として不満はない。

 同じく首チョンパエンドに持っていった問題作「スクールデイズ」とはその点で全く異なる。生首も扱いや映し方によっては、幻想的演出を可能にするアイテムになる。

 

 見終わって個人的にかなり評価が高い。とても楽しかったしキャラ絵に萌えた。

 1話完結のこの感じで行くなら、扱う事件と出てくる人間を取っ替えれば令和に復活させても良いのではないかと想える。鬼太郎も何回もアニメ化しているし。

 和風萌えヒロインも時にはゆっくり楽しみたい。それも乙。そんなことを想える良き作品だった。

 

 

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