こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

驚異のアフター「エイトマンAFTER」

エイトマンAFTER」は、1993年に発売された全4話のOVA

 

 今のところ国内ではVHSとLDでしか出ていない。

 結構好みな出来だったのに何でDVDになってないんや。

 

 コレの存在は以前から知っていたが、まだ見たことが無かった。前から気になっていたので、先にテレビアニメ版を見た流れのままチェック出来て良かったぜ。

 

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 テレビ版の白黒エイトマンが1963年の作品で、こちらのOVAはそこから30年後に発表されたもの。そして今はそこから更に30年が経った。初期のも30年後の新作も、今から見れば全部大昔のアニメだな。

 

 さすがに30年も経てばエイトマンが、というかアニメ技術もダンチ(段違い)に進化している。しっかり色付きでエイトマンのアニメが見れるってことで、原作漫画やテレビアニメ版からのユーザーは歓喜したのではなかろうか。

 

 しかし今回のエイトマン、だとは思ったが毛色がかなり違っている。

 街で悪さをする悪党をエイトマンがぶっ飛ばすという点では共通するが、雰囲気としては結構異なるものがあった。

 キャラデザが意外にもアダルトな感じ。サチ子さんもテレビ版より色っぽい。こういう絵でのエイトマンでもなかなか味わい深いじゃないか。

 

 物語はサチ子さんの回想から始まる。

 コズマという強敵と戦った後、東探偵は姿を消してしまった。その戦いの際、エイトマンと東探偵が同一人物だということがサチ子さんにバレてしまっている。

 テレビ版では、その事実を知った事を無かったことにするため、サチ子さんは谷博士の発明で自ら記憶を飛ばす。今回は知ったままに時を過ごして7年が経ち、そこからアフターの物語が展開する。

 この入りは興味深い。憂いたっぷりにサチ子さんが語るプロローグからして何だか不穏。

 

 厄介な敵だったとされるコズマについてはそこでしか触れていない。こっちからしたら誰やねんとなる。調べてみると、コズマが原作でのラスボスキャラだったという。本当に原作最終回の続きの世界なのだな。

 

 東探偵の記憶を宿したエイトマンは一時封印された。それでもエイトマンは出てくる。このエイトマンはどういうことなのだと思ったら、次なる人物の記憶を宿した2代目的ポジのエイトマンだった。

 今回もエイトマンは探偵、そして元刑事。その名は羽座間逸郎 。「あずま」と「はざま」で語感的に近いな。最初は変装した同一人物なのかと思ったが、しっかり別人だった。

 

 サチ子さんには結構キツイ展開だが、かつてエイトマンにインストールされていた東八郎の記憶は消去されている。今の中身は羽座間になっている。となるともう東はこの世にいないのだ。サチ子さんの切ない恋心を思うと悲しい。

 

 エイトマンもスマートかつムキムキして美形。エイトマンといえばとにかく走りまくるヒーロー。30年後のこちらでは、高速走りの描き方も未来型に進化している。閃光が走ったと思ったら次の瞬間にはどっかに行っている。閃光が走る描写も良かった。

 

 羽座間の抱えるトラウマや激しい怒りもキーポイントになっている。

 こちらは自身よりも妹を殺された事で激しく心を痛めている。扱うネタがより暴力的なもので、大事な妹を殺ったのは汚職警官だった。羽座間は怒りに任せて妹の仇となる汚職警官を殺ってしまう。警官殺しの元警官という重い設定が印象的だった。

 

 東と同じく羽座間も田中課長とタッグを組むことになる。

 7年も経ったことで、今回は田中課長でなく田中本部長に格上げされている。よくやったな。そうは見えないだけで腕は確かな警官なのだ。

 キャラデザが美形テイストに変更されても、田中本部長は言い感じに漫画的になっていて、周囲との浮き具合と浸透具合がベストな状態に仕上がっていた。

 それから田中本部長の部下に、新米警官として一郎がつくことになっている。テレビ版だと途中からフェードアウトした一郎少年が大きくなって帰ってきた。現状だと警官としての腕はポンコツだし、出番もあまりなかった。

 

 エイトマンはそれ単体で軍隊クラスの兵器でもある。その事は今回も谷博士が語っている。谷博士は何か若返っているようにも見えた。

 エイトマンが如何に危ない発明かという点も見えてくる。羽座間はエイトマンとして戦う際、強大な力の制御が出来ず暴走状態になり、過度な破壊活動を行ってしまう。ここにテレビ版には無かったデンジャラスさがある。

 妹を殺った悪党の記憶がフラッシュバックすれば、全てぶっ壊したい衝動に駆られて大暴れするのだ。まるでバーサーカー状態なので、ここへ来て始めてエイトマンの強さが怖いと感じた。世の平和のため、破滅のため、両方に適したすごいロボットなのだな。

 エイトマンのアクションシーンでは、敵のぶっ飛ばし方がややグロい。容赦なく殺っちゃうから結構血みどろの世界だった。

 

 己の怒りと正義との狭間で、羽座間は葛藤するのである。だからこの名前なの?

 苦悩するヒーロー像を描く点も見所だった。

 

 気になるのは、羽座間とサチ子さんが接近することで、ちょっとラブい感じになること。

 羽座間の正体を知る前からも、サチ子さんは羽座間にエイトマンを、つまりは東探偵を見てしまう。一度に3人の男が重なる感じになり、サチ子さんは完全にランブリングハート状態になるのだ。この何とも言えない揺らぐ女心は確かに分かる。でも、それでいいのかとも思ってしまう。この魂の三角関係ぽい設定はアダルティーで好きだった。

 

 テレビ版だとハキハキと元気で男勝りな感じも見えたサチ子さんが、こちらでは葛藤の中にあって憂いを帯びた美女に描かれている。テレビ版の時よりも髪が伸びてセクシーになっていて良い。土井美加の色っぽい声も良かった。この人の声はとても好き。

 エイトマンが主役なのに、最初に出てきて喋ることでサチ子さんの事が気になるばかりのOVAがだった。

 

 今回扱う事件では、体の一部をサイボーグ化した人間が登場する。

 小ずるい悪党が改造までされた事で、エイトマンに対抗出来る強さを持っているという点もポイント。

 思った以上にサイバーパンクな仕上がりのエイトマンだった。30年も経てば街や文明も変わるよね。

 

 全体的に不穏で凄惨で退廃した世界観が見えた。サイボーグ化した人間は性質上薬物中毒になるという点がまさにそれ。薬を求めて暴れるサイボーグ人間を描くなど、暗くて怖い事件だった。

 

 思った以上に物騒なエイトマンだったけどこれはこれで好き。

 OVA作品としてはみやすくまとまって絵も綺麗で良かった。昔のOVAだと絵が変だったり、すごく不自然な所で打ち切りなんてこともあったが、これは一つの事件がすっかり解決で良かった。

 最後は旅立った羽座間とサム少年をサチ子さんが追いかけ、合流してエンドだった。何か続きそうな感じがしなくもない。

 調べてみると、続編の企画も動いていたらしい。でもその後続く事はなかった。

 

 エイトマンもテレビ放送60周年だし、ここらで一発新作をしても良いのかもしれない。最近だと妖怪人間ベムうる星やつらなどの大昔のヤツもリブートしているし。

 新作に情けないのが多く見られる今こそ、懐古厨マインドは無しで真に過去作を再評価する時期なのかもしれない。

 

 

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