「スラムダンク」は、1993年10月から1996年3月まで放送された全101話のテレビアニメ。加えて途中でSP放送が2回あり、劇場版4作品が上映された。結構たくさん作られている。
バスケ漫画の決定版でもある素晴らしきアニメ。そんな本作の新作映画がなんと2022年末に公開するらしい。
マジかぁ~ゴリにまた会えるのか~。
そんな事をアニメや漫画に疎い我がお兄ちゃんと話し合ったのが2週間前の事。アニメなんてそんなに知らないという人間でも触れているくらい親しみやすくメジャーな作品がスラムダンクだった。
新作をやるのなら久しぶりに見よう!
というわけで、ここ半月の間に全部見た。これが本当に面白い!
これが平成初期のジャンプ本誌を盛り上げた漫画作品であり、当時のテレビ業界を盛り上げたアニメ作品なのか。素晴らしい時代だ。
最近の人間のくせして懐古主義をやりたがる私としては、この時代の素晴らしき勢いを知らない今の子供達が損をしていると思えてくる。スラムダンクを見た後に最新のしょうもない異世界転生とかのアニメを見たら落差がすごい。魂の濃さが違う。
古いのと最新のものとを交互に見ていけば、時代ごとにオタク文化が、またはオタクの好みや質というのも変わってきたなと思える。まぁ二つの時代を並べて優劣の事を指摘することはしないけど。私は今のアニメもド古いアニメもそれぞれ良いと思っている。
スラムダンク視聴は二周目であるが、一周目を見たのは10年くらい前なので結構覚えていない。
花道が暴れ者のド不良なこと、それを容易に押さえつけられるくらいゴリがすごく強いくらいの基本知識は抑えていた。それくらいの理解で二回目の視聴を行うと、こんなに面白かったのかと改めて良さが分かる。
スポーツものに限らず、色んなアニメを見てきて比較することが出来るようになったからこそ本作の良さが改めて知れるというもの。
まずキャラが良い。特にゴリ。
ドラマティックな試合運びも良いし、古い割には作画も頑張っていて違和感なく見れる。一試合にみっちりワンクールくらい使うから、選手達の魅力や試合の緊張感がよく伝わる。長くとも試合シーンに退屈を感じることがない。
そしてとどめは歌がめっちゃ良い。当時のビーイング所属の精鋭達が交代交代で名曲を歌ってくれている。MANISHの「煌めく瞬間に捕われて」は、売り上げこそ他の主題歌に劣るが内容は充実したもので一生良い曲。
あと前期OPアニメ冒頭で流川、仙道、ゴリ、花道の順にダンクを決めて「君が好きだと叫びたい」イントロが始まるあの仕様も好き。
久しぶりに見たらすごくハマったので、スラムダンクの魅力とかを殴り書いていこう。
内容
神奈川県湘北高校に入学した赤髪の不良 桜木花道が、可愛い子ちゃんの晴子さんに気にいられるためにバスケを始めたらどんどん強くなって全国まで行けちゃったというサクセスストーリー。
エセ感の強い自称天才バスケットマン花道と共に、正統派の天才 流川楓もバスケ部に入部し、弱小だったバスケ部はどんどん強くなっていく。
暴れん坊の宮城、脱不良を決めた三井寿も部に戻ってきて最高の布陣で全国を目指す。
花道が成り上がるバスケ物語であると同時に、三年間部を守ってきたゴリとメガネくんが報われる物語でもある。ゴリ×メガネコンビが好きな人はその観点からでもしっかり楽しめる。
花道のキャラ性がとにかく愉快
本作が広くオタクに受けた理由はコイツにあると思う。そう、我らが桜木花道だ。花道は本当に愛せるキャラ。
キャプ翼やイナイレのような超人スポーツものと違い、スラムダンクは実地でバスケを行うファンタジー感の薄い作品である。キャラクターを通して実際のバスケルールや効果的な作戦の説明が入ることもあった。何気にお勉強にもなるリアル路線なのだ。
そんな中、最も現実離れしたファンタジックなキャラが赤髪の不良の花道だ。リアル思考ではあるが、こういうとんでもないネタキャラを置いてくれると導入部をくぐるに際してオタク的に助かる。
花道のキャラ性にはとにかく笑える。このキャラを作ったセンスは素晴らしい。
何かあれば殴る、蹴る、頭突きも多用する。内外共に塗り固められた生え抜きの不良だが、女子が絡めばそれもちょっと揺らぐ。
やはり「女」の「又」に「力」と書いて「努力」。ヒロインの晴子にバスケの才能があると褒められたら、それきっかけでホイホイと部に入ることになる。後で出てくるリョーチンもそこは一緒。
最初の動機は不純だったり、その場のノリの要素が強めだったかもしれない。だが後にはバスケが好きになり、自主的にバスケに打ち込むようになる。短期間で天才的な伸びを見せる花道の成長が見える点にワクワクする。
劇的に能力が伸びたかと思えば、粗が残る所はしっかり残っていて、いつもプラスとマイナスが交互に出てくる。結果的に本当に天才なのか、勢いだけでやっている下手なのかよく分からない点も笑えて面白い。
スポーツ×不良要素も大衆に受けるものだからその点でも楽しめた。
バスケの良さをしっかり描く一方で結構ガチな喧嘩シーンもあって良かった。善良をも越える境地に立った最高の不良の青春を楽しめる。花道の戦闘力はダンチ。
終始揉める相手のゴリ、流川をはじめ、出てくるだいたいのキャラに喧嘩を売っている。よく考えるとイカれているレベルで何にでも噛みついていた。元々気性が荒いのにどこまでもしつけを怠って大きくしたバカ犬みたいな出来。
その暴れん坊ぶりは最終回まで健在。晴子ちゃん、彩子さんの言うことだけは大人しく聞いて敬語で言葉を返す。でも後は年長者だろうがおかまいなしのド不良の出方で行くのが面白い。
中でもゴリこと赤木とのやり取りはずっと面白い。クレヨンしんちゃん並に毎度ゲンコツを多発させたアニメで、花道がバカをやればゴリがゲンコツで叱り飛ばすのが形式美。 この二人がまるで親子みたいで和む。
ゴリはバカな花道をめっちゃ怒る父のようで、小暮は「まぁまぁ」と宥める母のような役回りに見える。この3人の構図が丁度我が家の親子の図と重なる。他人事とは思えない。私もフザけたことばかりしてはゴリみたいな勢いで父に叱られ、それを母が小暮みたく穏やかに収めてくれた。というわけで、ココはハートフルファミリー感が見える良い部活だ。
ゴリと花道のベストなエピソードといえば、連続する2つの試合終わりの整列でのやりとりだ。
海南戦では、ゴリと間違えて高砂にパスをしてしまった花道のミスで試合が終わる。パスシーンで画面を白黒にすることで、ゴリか高砂か一瞬分からなくする演出が良かった。
しかしあれは高砂が似ているのが悪い。もっと言えば、ゴリ、高砂、牧、それから宮さんと学生のくせに老け顔なヤツが一箇所に集まりすぎ。瞬時に区別がつきにくい状態が完成しているのも悪い。
未熟を恥じる想いと敗北の悔しさから花道は泣いて動けず、そこでゴリが試合後の整列にいくぞと声をかける。
でも次の陵南戦終わりには、逆にゴリが泣いて動かない。勝利の男泣きで動けないゴリに、次は花道から整列にいくぞと声をかける。
この逆転するやりとりに泣ける。良いシーンだ。負けた次の試合で花道が心身共に強くなっていることが分かる。ここ一番で最強の不良は言動が粋なんだよな。
ゴリと花道が喧嘩ばかりするけどなんだかんだで信頼関係のある仲良しな点が良い。こういう仲良く喧嘩するというトムとジェリーみたいに関係性が好きなんだよな。
海南戦でゴリが捻挫した時には、自分も勝ちたいし、ゴリを勝たせたいとも思って気合を入れる花道は格好良い。ゴリへの愛を感じた。
陵南戦終わりには、ゴリの相棒のメガネくんにも「引退が伸びたなぁ」と気の利いた一言を行ってくれる。これを受けて「泣かせるなよ」と返す小暮が嬉しそう。
ビビるのと尊敬出来ることから誰もが安西先生には歯向かえないのに、花道だけはオヤジ呼びで先生のぷよぷよの皮を引っ張っている。試合中には、ベンチに突っ込んで先生をクッションにしたこともあった。あれは笑う。
しっかり老けたことで田岡監督のことはジジイ、17歳なのにOBのおっさんみたいな牧のことはジジイに足りないことからジイと呼ぶ。赤木はゴリ、小暮はメガネくん、魚住のことはボスザル、信長のことはノザル呼びしている。誰にでも雑なあだ名をつけるから現代の小学校教育ではアウトだな。最近はあだ名禁止らしい。
花道発ではないけど、巷でゴリは「ゴール下のキングコング」、魚住は「ビッグ・ジュン」、それぞれユニークな異名がついているのに笑う。そして花道は「キングコング・弟」になる。
初期の花道は本当にただの暴れん坊のサルであり、バスケのルールをまるで知らない。肝心なタイトルのスラムダンクのこともスラムダッシュって言っていたし。
最初にゴリとバトルする時は、ラグビーやサッカーと区別がついておらず、ボールを持ってめっちゃ走るし、ボールカットにスライディングを使ってくる。なんでもありで笑えた。本当に何も知らないんだなコイツ。
流川が絡むと一気に低俗なキャラ性を出してうるさいバカになるが、そんな主人公らしからぬセコい三下感が出るのもまた笑えて愛せるポイント。親しみが湧く。
試合に出してもらえない段階だと、コートの外からもヤジを飛ばすなど、色んなことをして敵や味方の邪魔をしてくる。陵南の田岡監督にカンチョーしたり作戦を盗み聞いたりと、暴れん坊ぶりがすごい。
試合ではゴールではなく選手の頭にダンクを食らわせるし、試合の連続退場記録も持っている。退場しまくってまともに戦えないのも面白かった。
そういえば勉強になったのは、花道がやりまくったファールを意図的に誘うのもバスケの常套手段ということだ。5回のファールを誘って強敵を退場させるのもゲームを有利に進める作戦だというのは奥が深い。キャプ翼で美杉くんが使うオフサイドトラップのバスケ版みたいなものか。
花道を除けば敵も味方も経歴を積んだやり手ばかり。そこに常識を知らないから何にも捉われず素人プレイで潜り込む花道を配置させたことが面白い。敵の監督もセオリーで動かない素人の攻略に苦労する。試合中に何をしでかすのか分からないから終始安心して見ていられないのが逆に面白かった。
最近だとクールな無感情主人公は敬遠されがち。よっぽど上手に作らないとつまんない人間で終わるからだ。かといって賑やかにするとうるさすぎと注意される。それくらい主人公は詳しく厳しく評価されることになる。
花道は明るく元気でもちろんうるさい。時には普通にうざい。がしかし、総合的にはそれら全部を笑いながら気持ち良く見ていられる仕上がりになっている。この絶妙なキャラバランスが良い。
うるさい不良だけどいいヤツで熱いヤツだから好きになる。自信家で傲慢でうるさいけど嫌味にならないのは、演じた草尾毅の腕もあってのことだと思う。花道のゲスい芝居をしても爽やかボイスを崩さない良さがあった。
人から好かれる主人公を作ることは、作品全体の質を上げる重大な仕事だ。それが出来ているのが偉い。とかなんとか言っても最後は個人の趣味だけどね。
良いキャラは多くいるが、とりあえず花道一人を見るだけでも面白い。コスパの良いアニメだ。なにせ天才ですからね。
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