こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

少女よ、大志を抱いたなら明日を目指せ!「あしたへアタック!」

あしたへアタック!」は、1977年4月から9月まで放送された全23話のアニメ。

 

 女子バレーものなら「アタックNo.1」を先に見ている。だが続くバレーものにこういうのがあったとは令和に入るまで知らなかった。勉強不足だ。

 

 長期放送のアタックNo.1と違い、こちらは放送期間が半年したなかった。そのこともあって、バレーものとしてはちょっとマイナーになった模様。

 でも面白かったっす。昔ながらのスポ根物で、時代と技術はド古いが面白い。

 最近のアニメを見ていると、絵が綺麗なのにシナリオや演出がクソだなって物も多くある。だからもうトータルでのクオリティの判断に新しい、古いは関係ないと割り切って、どんな作品も真正面からぶつかって楽しもうと心がけている。

 

 古いなら古いでそこにも良さがある。

 そんな古い女子バレーものをプレイバック!

 

内容

 かつて橘高校のバレー部では、先輩が後輩を鬼しごく特訓があった。その鬼しごきによりとある部員は亡くなってしまった。

 間にボールを挟んでいるとはいえ、これは客観的に見れば殺人にも取れる。そんなレベルの不祥事があればバレー部を閉じるしかない。

 

 そうしてしばらく廃部状態になっていたバレー部を、主人公女子の聖 美々(ひじりみみ→「きよみみ」ではない)が復活させるところから物語は始まる。

 

 再会したバレー部に訪れる最初の問題は、人数が足りないこと。まずは数を揃え、出来たてのチームをなんとか形にして美々達は少しずつ強くなっていく。

 

 周囲の学校を見れば、恐ろしい必殺技を持った強敵プレイヤーがわんさかと確認できる。

 技には技を。美々達もチーム力と必殺技を磨いて強敵と渡り合っていくのだ。

 

 出来たての弱小チームだった橘高校バレー部が、全国を相手に成り上がっていく熱き物語が今開幕する(1977年春の話)。

 

感想

 部活は再始動という形だけど、実質は新たに立ち上げの段階からスタートとなる。

 バレー部復活の最初の段階こそ、10人以上の人間が集まっていい感じだったのだが、ここで厄介な事態が起きる。

 かつて鬼しごきで死んだ女生徒の幽霊が部室に住み着いているという良くない噂が学校中に広まったため、球を追う根性はあれどお化けには臆病な部員達は出て行ってしまう。これは情けない展開。

 昔の人間は今以上に幽霊を身近に感じていたのかな。本気でビビってバレー部に近づこうとしない。昨今のJKならあんなにビビらないと思う。

 

 そんな中、逆に幽霊話に釣られて集まってくる者もいたりした。落語部に入りたかったけど無かったから、バレーの練習の合間に寄席をさせてくれと言って入ってくるユニークな者も出て来た。ウケる。

 お化け騒動で部の始動段階からモタつく青春物語に見どころがあった。

 

 主人公の美々は家族想いでバレー好きな良い子ちゃん。欠点少なき美少女である。これを今だったらONE PIECEのビッグマムを演じている小山茉美が演じているのがなんかすごい。最新回でビッグマムは、ローとキッドのコンビに討ち取られました。つまり歴史が動いたのです。おめでと。

 清いバレーボーラーをやった過去もあれば、今は恐ろしい巨人のババア役だからな。役者って演技の振り幅がすごい。小山茉美はすごい役者です。

 

 美々が主役だけど、私が気になるのはかなりの曲者ヒロインだった一条明日香。美少女お嬢様のような見た目だけど、中身が剛毅過ぎる。

 大柄の番長男の嵐くんにも食ってかかるじゃじゃ馬ぶりは逞しい。嵐くんの声はジャイアンの声で有名なたてかべ和也

 こういう厄介で面倒な女、結構好きである。

 

 最初は5人しかいないバレー部に6人目の間に合わせとして合流。自分をキャプテンにすることを条件に加入し、あとは部員に嫌がらせをしていた。

 ムカつくこともいっぱいしてくる明日香のバックボーンはよく練られていて、多分作り手にも好まれたキャラなのだと思う。

 調子こいた女だと思ったら、バレーの腕は一級品だと判明。ものすごく揉めた結果、美々達と友情で結ばり、改めて純粋なメンバーとして部に加入する。この流れに美しき青春物語を見ました。

 

 序盤は明日香が暴れん坊過ぎて、それをなんとかする一同の苦闘の日々を描くターンが豊富だった。一条明日香が一番の推しキャラだった。

 

 序盤だと明日香の他に、女子バスケ部の白木ルミもめちゃくちゃ嫌味ったらしい。こちらもヒールキャラが立っていた。 

 バレー部を嫌味たらっしく煽ってくる。育ちの悪いお嬢様特有の陰険なイジり方に出てくるので、私なら多分殴っている。

 気になるのは、白木さん以外のバスケ部のメンバー。中心の白木さんを可愛く描くのにリソース全振りで、取り巻きの女共は全部ブス。絵の力の入れようの落差がすごいから笑った。

 

 序盤は白木さんと揉めて美々がスムーズに部活を行えなくなる、後援会がないから何をするにも金がない、ユニフォームが買えない、部費獲得会議でも実績がないので金が取れない、顧問がつかないなどなど、問題だらけだった。そんな中で明日香が暴れる事もあったので、美々の青春はてんてこ舞いだ。

 

 この問題だらけの物語運びにはハラハラするものがあって面白かった。部活に後援会とか、そんなのがあるんだと初めて知った。生徒会室に部長が集まって部費を決める会議の存在も初めて知った。

 

 6人で試合をするようになっても、最初はまともに他校に相手をされず、長い航海から一時丘に帰ってきて暇な船員達と戦ったのが初試合だった。しかもそんなお遊びでやっているおっさん連中にも敗北してしまう。

 だがその一回の負けの屈辱を全員でシェアすることによって、チーム全体の「勝ちたい!」の気持ちが高まるのだった。なんであろうが共通意識があれば組織全体のパワーは底上げされる。

 女子同士の対決を見るまでになかなかの時間を要した。

 

 この手の作品なら待っているのがお約束な超人的技を持つライバルもどんどん出てくる。

 相手選手が放つ強力スパイクもすごいが、その勢いを殺すため、美々がバク転しながらレシーブを返す技は面白かった。これ以外にも美々の技はえらくアクロバットを極めていた。

 最終戦四条通高校の3人の選手による空中合体技などサーカスみたいで笑う。1人が前でクルクル縦回転して、後ろの2人のどちらが打つ。それもどちらが打つのかタイミングを読めなくする混乱だらけの技だった。

 これを見たお兄ちゃんが面白すぎて吹いていた。

 

 大雪山学院には、放ったサーブボールが下から上へと舞い上がる重力を無視した技を使って来るものもいた。結構ネタな技もあり。

 

 手を出せば腕の骨を持っていかれる殺人スパイクを放つ強敵ライバルもいた。やべぇ。

 主人公達のチームは試合に出れるギリギリの6人しかいない。選手層がペラペラなので、怪我へと繋がる事をしかけられるのに滅法弱い。

 

 出来立てでたった6人のチームにしては大健闘で、全国大会は準々決勝まで進み、続くインターハイでは優勝する。これはめちゃすごい。ていうか未だに全国大会とインターハイの違いが分かっていない。 

 

 後半では美々や明日香が卒業後の進路をどうするのかでも悩み、そんな中でバレーの試合も展開する。最終回ではその進路も決まって良かった。

 描く内容は高校生の範囲で収まったものであり、その中で割りとリアルに部活の都合や生徒の人生の歩みも描かれていた。こじんまりとした中に親近感が湧く良き作りだったと思う。

 

 ライバルチームの1人の羽鳥京子は、心にぐっと来る名言を残している。

 彼女は「バレーは遊びでやっている」と明言するが、同時に「遊びに命を賭けるのもイカした生き方じゃない」とも言っている。これは格好良い。人生はゲーム、ならば本気で楽しんだ者が勝ちとは言い切らないものの、少なくとも負けではない。彼女のバレーへの、というか人生へのポリシーは素敵です。

 作中で一番心に残る内容でした。私も遊びにこそ命を賭ける素敵にイカしたマイライフを謳歌し、最後には笑って死んでやる。

 

 美々を応援してくれる祖母の声がサザエさんのフネ母さんで有名な麻生美代子だった。この段階からでもおばあちゃんキャラの声だったのか。なんか懐かしい声で良かった。

 かすれ声の少年やおばさんの声をやりがちな青木和代が、ここでは美々達の後輩選手として登場している。お母さんみたいな見た目の貫禄あるキャラだが、とりあえず若い女子高生の役で声を聴けるのは何か珍しい。

 懐かしの有名声優の名前も結構並ぶ。私の推しの一条明日香を演じた吉田理保子の高飛車女な芝居がとても好みでした。

 

 古い作品だけど退屈なく全部完走出来ました。

 美々も明日香もガッツのある良き女達でした。美々って名前は可愛いよな。

 

 胸に希望を抱く者は皆輝く明日を目指せ。

 

 

 スポンサードリンク