「ストレンジドーン」は、2000年7月から9月まで放送された全13話のテレビアニメ。
だいたい世紀末くらいに元気な作品が集まったとされるあのWOWOWノンスクランブル枠作品である。
我が人生においてリアタイ出来たWOWOWノンスクランブルアニメは一作品もない。だから人伝に「コレいいよ!」と聞いた物を後になって見るのみだった。
まさか放送から22年遅れて見ることになろうとはな。すっかり古い。
この作品はどこかでタイトルを聞いたことがあるような、ないような感じの中身をまるで知らないものだった。
先日ラジオ番組「井口裕香のむ〜〜〜ん」を聞いていたら、ゆかちがWOWOWノンスクランブルアニメは良かったと過去を懐かしんでいた。そこにこの作品の名前が一瞬出てきたのがきっかけで視聴した。きっかけをくれてありがとうゆかち。
原作に佐藤順一、ハルフィルムメーカーの名がある。これよりも後にやった「ARIA」の布陣だな。知っている人間の名前が見えたことでも興味を持って視聴した。
内容
日本の女子高生 奈津野 エリ、宮部 ユコの二人は、気がつくと異世界を彷徨い歩いていた。
そこで彼女らが最初に目にした不思議な光景は、小人達による紛争だった。
小人によって召喚された魔人として二人の女子高生は世界に存在することになる。
小人の世界の情勢に振り回されるながらも女子高生達は世界に関わり、心の成長を遂げて行く。
感想
絵柄は可愛らしく、まずは二人のJKが可愛い。チビ人間の小人達も可愛らしい。
異世界といっても随分田舎で、文明は日本より劣るものだと思う。牧歌的でどこかジブリ感のある雰囲気が楽しめる。
女子二人で異世界転移することになる。最近の作品だと「裏世界ピクニック」的要素がある。
小人達にはちょっとだけ「ミルモでポン」的要素を見る。放送時期としても近かったはず。
召喚されしJK魔人 エリ、ユコのまるで異なるキャラ性が織りなす人間ドラマが印象的。
一般的な見方をすればユコはクラスの中心グループにいそうなイケてるギャル。エリはあまり人と喋らずに端っこで本とか読んでいそう。
基本は大人しいエリだが、神経は意外と図太く、メンタルも強靭な部類に入ると思う。
ギャルなユコも意外と冷静で客観的にグループの人間関係を見抜いたりと、洞察力に長ける所がある。荒々しいギャルと思いきや意外と色んな事を考えて空気を読む力がある。
ユコを演じた清水香里のズケズケ物を言うサバサバ系ギャルの芝居は結構好きだった。この時だとめっちゃ若いよね。
全然タイプが違うが、どちらも付き合えばそれなりに楽しそうな人間達。タイプは違えどどちらも普通に可愛くて好き。
最初は会話も噛み合わない二人が、なんだかんだで友情で結ばれて仲良しになってくる感じが愛しい。やっぱり可愛い子ちゃん同士で仲良くするのが尊くて良いよな。
このJK達が何をするってわけでもなく、小人の世界の揉め事に巻き込まれていく不思議な物語になっている。
召喚といっても乱暴なもので、昨今よくある異世界もののように神様や女神様のナビゲートがあるわけでなく、ナレーションでの説明もない。魔王討伐のような明確なミッションが与えられるわけでもなく、JK達にはチート能力も与えられない。小人に対してデカすぎるってだけで有利ではあるけども。
こうしてJK達も小人達も、そして視聴者としても色々と良く分からない中で話が展開する。だから一話目から結構続きが気になってくる。
どういう世界かという前に、どういう経緯でこっちに来たのかも謎。日本の学生だったのは分かったが、描くのは小人の世界のことだけで日本の事は遂にノータッチだった。これはどうとでも予想や考察が出来る。
毎話のエンディングの映像や劇中でも出て来たプリクラ写真から、ユコは学校の男の先生と何かあるのでは?くらいのざっくりな予想が出来る。先生のことを少し気にしていると言動から読み取る事が出来た。でもしっかりネタバラしはしていないな。多分先生の事が好きなんじゃないかな。
可愛らしい小人達の世界だが、全編を通してやっていることは戦争の揉め事。もうめっちゃ揉めているから困る。
魔人の存在は兵器とされ、政治的駆け引きに用いるアイテムにもされている。ここに巻き込まれるJK達も面倒臭い思いをする。
小人達目線で物語を見れば戦争のこと、政治的駆け引きのことで当然面倒臭い。そこに加えて、世界がどんな状態であろうがストップをかけることが出来ないもう一つの楽しい厄介事がある。それが若者のラブ。登場する小人達のラブにまつわるいざこざもぶっ込まれる。
これが意外で、見た目は小さくで可愛らしいのに、等身大の人間として見ても同じような揉め事があるよなって事ばかりやっている。人間様だって戦争をするし、それをやっていても情事に待ったはかけられない。
等身大の人間としてこういった戦争やラブの揉め事を見せられたら画として暗くシリアスになりすぎる。だから小人で良かったのかも。
小人の村の警備隊長のシャルの事をレカ、マニの二人の少女が好きになっていて、もう一人の男のダールはレカが好き。村の中で三角や四角のラブの関係図が見えてくる。JK達はそっちのけで現地人達の方が濃いドラマ展開をしてやがる。
レカが結構厄介で面倒臭いけど、このくらい暴れたヒロイン性の方が恋愛するには面白みがあっても良いかもしれない。
小人のくせしてラブの揉め事の厄介度は等身大な点がユニーク。この要素がじれったいけど、それはそれで見ていて結構楽しいものだった。
この世界の男女間の性の都合にはオリジナル性があり、その点もちょっと面白い。
日本なら服を脱ぐってのが最も恥じらいを覚える行為であり、ゆえにラブのコミュニケーションを取る時にもそこを見せてまで愛を深めて行く。
この世界では人前で靴を脱いで素足を見せるのが全てを見せるみたいな禁断の行為になっている。ある小人は、成人してからは親の前でも素足を見せたことがないとまで言っている。マジか、日本だと皆家では裸足だろうに。
JK達が素足を見せたことで小人達がすごく反応しているのが面白かった。この世界で足を全部見せるのは、日本で言うとパンモロにして街を歩くレベルで恥ずかしい事らしい。
意外にも足に性のあれこれの都合が出るこの世界の性概念がユニーク。まぁ足も悪くない。
JK達からすればガリバー旅行記の小人の国編と同じことだから文化の違いで困ることもある。
印象的なのはJK達がトイレはどうしようかと相談すること。まぁそこらでする以外に方法はないのだが。その都合はファンタジーのストーリー上無視しても問題ない点なのだが、あえて突っ込んで行くのが印象的。
当然だけど、異世界でもJK達は服を洗って干す。他には年頃なので生理の都合から生理用品の事も描かれる。日本のJKだが、異世界に行っても日本同様にやらないといけない生活サイクルがある。その点がリアルに描かれているのも印象的。
風呂や生理の事をどうしようとキャラが言っている異世界ものもたくさんはないよな。書くも見るもなるたけ頭空っぽのストレスフリー世界でってのが昨今のファンタジーの売りだし。
この手の異世界転移もので特殊能力無く、ただ普通に学生としてブラブラするというのも珍しい。魔法とか剣とかは無しで、小人相手に何かするにしても物理オンリーだった。学生鞄を武器にしたりとかしていた。この点は物珍しいから面白い。
最後は魔人様の力というか、ただ女子高生の押す力だけで遺跡を破壊し、そこから不思議な力が発動して日本に帰ることになる。帰った後の事も一切描かれず、本当に終始小人世界の話だった。そこまで触れないのも珍しい。でも帰ってオチな異世界ものもあまり無いから珍しいかもしれない。
遺跡を壊す時には、二人のJKが人生の中で溜まった鬱憤を大声で吐き出して暴れる。このメッセージから、二人は閉塞的な青春時代のモヤモヤの中にあるギャル達だったのだとなんとなく予想出来る。青春という名の迷宮をグルグルする内に入り込んだのがこの異世界だったのかもしれない。性質の異なる二人だが、そういう心のモヤモヤがあった点では共通していたようだ。
暴れていくらかは発散して前向きになった所で日本にカムバック。これは青春として前進出来たハッピーエンドと取って良いのかもしれない。
ファンタジーを好むエリが、ファンタジーの事を「逃げの文学」と称している点は印象的だった。異世界アニメなのに、キャラが異世界アンチの概念に触れている。この点は深いなぁ。
逃げのファンタジーではなく、少女達は帰ったら帰ったらで面倒な日本での生活に挑む形で物語は終わっていく。逃げのファンタジーに引きこもった者達に送りたいメッセージ性がここにある。
しっかり説明がないままのことなので、考えようによっては投げっぱなしなオチとも取れる。しかしあえてしっかりと答えを言わないオチに一種の魅力がある。それによってこちらは思考し考察を深めるのだ。脳の刺激になってよろしい。
まぁこんな感じで、迷える青少年ってのは、皆ある意味異世界迷宮の迷子者。そこからの脱却によって大人への成長が叶う。
私個人の考察としては、そんな感じのメッセージ性が読み取れる作品だった。結果、良き出会いだった。
以前に見た「今、そこにいる僕」ぽさもちょっとだけあったけど、それよりは画的にも内容としてもポップになっていた。ファンタジーではあるが、シリアスとリアル思考を置いたことで、当時としては挑戦的な内容になったのだと思う。
結構楽しく見れたので、出会えて良かった作品として思い出に加えておこう。
ファンタジーは現実に至る戦いだ。
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