こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

今度は異世界転生する「聖戦士ダンバイン OVA」

 聖戦士ダンバインには、テレビアニメ版の続編となるOVAが存在する。その正式なタイトルは「New Story of Aura Battler DUNBINE」。長いし全部英語と来ている。

 

 テレビ放送終了から4年経った1988年にビデオ全3巻がリリースされた。テレビ版から結構時間が経っての発表となったのだな。でもまだギリギリ昭和のことか。どちらにせよダンバインってのは古いアニメだな。

 

 売り方は特殊でユニークなものとなった。全3巻でリリースし、各巻の内容は、OVA1話とTV版の総集編1話がセットになっている。

 新作をチェックしようと思えば必然的に旧作もお勉強出来るシステムになっている。OVAから入った者にはシリーズの過去が学べる仕様となり、既にテレビ版通過組には4年前の楽しい世界を復習出来ることでお得。これは賢い売り方ではなかろうか。

 仕組み的に途中で購入を止めると、都合ニ作分が中途半端な切れ方になってダブルで損な気がする。だから次巻購入を止めづらくもなる。そんな観点からオタク心理をついた売り方だったとも考えられる。

 

 総集編は完全に昔のをそのままということもなく、ボイスには新録部がある。役者の都合でトッド、キーンらの声が違う。トッドの声が堀内賢雄になっているのは注目点。堀内版トッドが楽しめるのはここだけなので、彼のファンは必見だ。

 

 以前レンタルビデオ屋でダンバインDVDを借りた時にOVAもチェックしたのだが、こちらはまるで記憶に無かったので新鮮な思いで見る事となった。

 とりあえず新オーラーバトラーとしてサーバイン、ズワウスが出るのは知っている。というか「第4次スーパーロボット大戦」で登場する機体なのでそこから学んで覚えていた。

 第4次スパロボではサーバイン、ズワウスのどちらか一体しか仲間に出来なかったはず。そしてこれは確実なのだが、攻略本無しだったら「それは初見じゃ無理だろ~」ていうくらいゲット出来る条件が難しかった。隠しユニットで普通に遊んでいても仲間にならなかったのだ。真っ黒でごつくて格好良いから敵側のズワウスを仲間にしたなと覚えている。

 

ROBOT魂 [SIDE AB] ズワウス 聖戦士ダンバイン Ss

 

 そんな懐かしの記憶を呼び起こしてBD化したOVAの方を見てみると、テレビ版とは随分雰囲気が異なっていると分かる。たった三話のことなのであっという間に終わってしまい、なんだろうコレは?となる部分もアリ。結果的にそこまで面白くはない。

 う~む、これはどうなのだろう。こちらはテレビに沼ったファンから受けが悪そう。

 

 ちゃんと続編ということで、テレビ版の凄惨なラストから700年後のバイストン・ウェルが舞台となっている。今回は地上には出ず、こっちだけで事が終わる。

 700年経ったバイストン・ウェルだが、文明が発展してビッグシティになっていることもなく、全体的にはあの日のまま。いやもしかするともっと時代が遡った古臭いファンタジー感が漂っていたとも言える。

 

 主人公は狩人の少年シオン・ザバ。前作のショウ・ザマと同じく中原茂が演じ、顔も声もそっくり。顎に怪我の痕みたいなのが見えるのも同じ。

 この少年、聞く所によると700年の時を経てショウ・ザマが転生した姿なのだという。マジかよ、日本人が大好きな異世界ファンタジーの始祖とも呼ばれるダンバインだが、今回は現代のオタク界のフロントラインを騒がす異世界転生モノになってる。

 異世界への召喚も転生も抑えていたとはすごい。やっぱりダンバインは、ファンタジー作品を発展させた記念碑的一作だったのだな。この時代からここに目をつけて掘り下げた富野監督は、やはり目の越えた傑物だったのだな。胴上げしたい人間その1だ。

 

 2010年代、しかも後半に寄る程、アホみたいに日本であっけなく死んでは日本のどこにもない謎の異世界に転生する連中の存在が明らかになって行った。それがまさか昭和時代からもいたのか。これの次だと「ぼく球」くらいが転生要素牽引作品になったのだろう。転生モノの歴史も浅くはないと分かる。

 その内には転生して異世界に行った人間をまとめた事典が作れそう。もちろんアニメの中の人間オンリーの並びになるが。私もいつかはそいつらの仲間入りを果たそうと思う。

 

 生が転がってのショウの次なる人生は騒がしい日本ではなく安息の地バイストン・ウェルだった。その点には安心できた。日本から弾き出されたとも考えられる人生だったので、シオンは最初から現地生まれで良かった。

 

 転生者はまだいてリムルが転生したレムル・ジルフィードというお姫様が出てくる。これがメインヒロイン。ルーザに脳天をぶち抜かれて逝ってしまったリムルが、元気に次の命の時間を過ごしていたことに安堵する。

 TV版だとニーの相手役だったリムルの転生体が次代のメインヒロインになっているこの組み合わせは意外だった。マーベルやシーラ様の転生した姿は無しだった。

 そういえば思い出すが、テレビ版でショウはそれと知らずリムルにプロポーズの儀式を仕掛けていた。ただ綺麗だからという理由で、ショウは野に咲く花を摘んでリムルを元気づけるためにプレゼントしたことがある。たまたま選んだそれがバイストン・ウェルではプロポーズ時に送る花だったということがあった。あの時のリムルはまんざらでもない反応で、先にプロポーズされてニーは焦るという平和なラブコメチックな風景が楽しめた。

 今度はあれの伏線開放で二人がメインの男女になったか。まぁそんなにラブな感じもなかったけども。

 

 シルキー・マウというミ・フェラリオも登場する。これはジャコバ・アオンの判断で小さな妖精と化したテレビ版のシルキーが転生した姿。

 ショウは主役だから分かるとして、他の転生メンバーは意外な並びだった。

 

 敵側には、髪色がジェリルだけどガラリアの転生者という女がいる。

 そして宿命のライバル黒騎士も転生し、また戦うことになる。ラバーン・ザラマンドというバーンが転生した姿である。こいつが悪さをする目的は、レムルを自分の女にするという物。男の欲望としては素直だが、元がバーンの割には言動の動機に小物感があるとも言える。

 

 注目の人物としてショット・ウェポンの名前をあげることが出来る。これは転生ではなく当人がそのまま登場する。700年もの間生き続け、体は朽ちてしまい魂だけになってそこにいる。ダイの大冒険ミストバーンみたいなガワを被って出てくる。

 考えてみればオーラーバトラーという発明をこちらの世界に持ち込んだのはショットだった。テレビ版の悲惨なラストを呼んだ元凶もまたショットだったと考えられる。

 ミ・フェラリオとしては、世界のバランスを狂わせたショットは大罪人。というわけで死という魂の安息をお預け状態にして、いつまでも惨めに生きる罰を下してこうなっている。この設定はしっかりファンタジーだが、都合の悪い部分に蓋をせず悪者を反省させるという点ではリアルとも言える。

 

 最近放送した異世界アニメの「処刑少女の生きる道」では、異世界人の中にも地球からの転生者が来ると迷惑に思う者がいる。だから殺るという都合を描いていた。

  ダンバインの頃からもその都合をしっかり描いているのがすごい。ダンバインはご都合お気楽ファンタジーではなく、元あった世界に異物が混入する不都合について逃げずに描いている点が硬派で良かったな。そのくらい、安息の地を荒らしたショットの罪は重い。

 

 お話としてはラバーンがレムルをさらって悪さをするのを、シオンがサーバインに乗ってとっちめるみたいな短く複雑性の少ないものだった。

 肝心なオーラーバトラーの戦いだが、これが曲者な演出で困る。サーバイン、ズワウスがバトルするのが味噌となるのだが、なんだか大きく描いた岩のような、または風景画のような感じになっていて、とにかく動きが少なくバトルに臨場感がない。なんだコレって感じ。

 サーバインの全体像もつかみにくく、やはり岩っぽい。スパロボで先に見たのとかなりイメージが違っている。ちゃんと新作オーラーバトラーが出た割には視覚的に記憶に残らない。そんな作りになっていた。

 

BANDAI SPIRITS HG 1/72 サーバイン

 

 そんな感じでお話的には特別面白い感じもないけど、異世界転生の基礎を習えたという点では面白みのある作品だった。

 なんだかんだ言っても私はファンタジーを愛しているのだな~。転生好きはとりあえず見とけって感じなアニメだった。

 

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