こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

アイドルで繋がれ世界の輪「Wake Up, Girls! 新章」

Wake Up, Girls! 新章」は、2017年10月から2018年1月にかけて放送された全12話のアニメ。

 途中で一回中の人の特番を挟んでいる。

 微妙に放送が伸びて最終回は新年一発目まで持ち越しとなった。

 

 割りと長かったWUGアニメの最後のやつである。

 ここまで来るとギリ最近の事としてなんとか記憶に残っている。それでも2017という数字が昨日のようで6年も前なのかと思ってしまう。歴史が進むのも早い。放送から本日を迎える間にWUGは解散してしまったものな。まだあれば良かったのに。

 

 新年に入ってから謎にWUGにハマり、ここ2週間は過去作を聴きあさっている。これまでフルでしっかり聴く機会がなかったが、聴けば楽曲は抜群に良いと分かる。

 中の人のライブ映像も見る。CDよりも迫力があってライブもかなり楽しい。これはリアタイしたかった。リアタイ勢が羨ましい。

 

 今年に入って知ったけど、アニメがとっくに終わった時期にWUGのパチスロが出たらしい。こちらで楽曲も楽しめるので、解散自体も知らなかった遅れ新規がパチスロ経由で良さを知る機会になっているとか。

 私は遊技場に出入りしない人間なので、パチスロの事は知らなかった。店に入ったこともないし。

 なんだろうが、今になってWUGの良さを知る遅れワグナーが誕生するのは良い事だ。

 まぁアニメのことはともかく、中の人のライブについてはもっと高い点が出るよう再評価しても良い時期だろう。ホント、WUGのライブはすごい。そもそも曲が良い。

 

 そんな感じでWUGにたっぷりハマった状態で、WUGアニメの最終章を見る。

 

Wake Up, Girls! 新章 vol.7 [Blu-ray]

 

内容

 時は巡り巡って2017年。

 かつてアイドルの祭典の覇者になったWUGだが、それだけではアイドルとして栄華を極めるには至らなかった。

 次年度大会ではアイワンに優勝を奪い返され、現在は微妙な立ち位置にいた。ちょっとは名前も売れて来たが、いまいち勢いとして行き切らないフラストレーションの中にあった。

  

 世の動向を見れば、アイドル稼業自体が下火になっている。

 天下のアイワンも劇場を減らして市場を狭め、ライバルチームのいくつかも廃業したりと、業界の世知辛さが濃く見えてくる。

 そんな中、アイドルのニューウェーブとしてVドルのマキナXが台頭し、時代は混迷と大揺れの中にあった。

 

 そんな中、WUGは地道にピン仕事を組んでメンバーの顔を世に売って行く。ファーストアルバムを完成させ、それを引っ提げたツアーも行い、着実に前進していくのだった。

 

 事務所に後輩アイドルも配属され、WUGもアイドルとして新人の枠を出て邁進する。 

 ライブツアーファイナルの会場が決まらないなど、いつものトラブルが健在の中、WUGが目指す明日はどっちだ?と注目して見て楽しむ事が出来る新章が展開する。

 

感想

 2013年から始まった作品時間も2017年まで進んだ。思えばこれってサザエさん時空でなく着実に時制が前へと動く物語なのだな。

 かつては学生だったキャラも卒業して心身共に成長しているのが見える。

 

 ロコドルがローカルを抜け出で全国に浸透するまでの道は実に長く険しい。その都合が分かる。それだけにWUGの歩みが遅いとは言わないがあまりスピーディーではない。

 新章に入っても相変わらずギリギリのラインでやっている。コレが本当にアイドルの事務所かってくらいしょぼい事務所でつましくやっているよな。

 

 社長のディレクションで個々を覚えてもらうよう単品売りを大事にしたアニメ新章となっていた。

 この点はテレビ1期とちょっと違いがあったかも。これまでだと全員での仕事を描いて全員でちょっと前進のターンが多かったような気がする。

 今回はキャラものとして単品のターンでも売り出す方針を大事にしている。今回はピンの活動が印象的。

 

 夏夜さんがグルメ番組で食いすぎて太ったのを気にしてダイエットしたり、出川みたいに動物と戦ったりするのを描いたのは意外。そして楽しい要素だった。

「アイドルのカロリー消費量を舐めんな!」と豪語して太っちょな大食い芸人に負けじと飯をかっ込む夏夜姉さんは格好良かった。

 

 お天気アイドルのシャーク林田が爆誕したのはシュールな笑い要素となっていた。藍里の中にある真面目さとちょっと変な所が産んだベストな新キャラとなった。サメの被り物が無駄にリアルな点も面白い。

 番組視聴者の学生達が「真面目だけど変」と評しているのがまさにそう。藍里の面白い所が見えるのは良かった。

 

 バラエティ、モデル業、情報番組、俳優、グルメ番組など、各員がベストな配置で戦っていた。

 

 各種メディアで爪痕を残す難しさを知る洗礼を各員が受けることになる。この点は結構リアル。

 グルメ番組だからって食っては「うんめぇにゃ~」を言えば済むわけではない。バラエティだって座っているだけでなく気の利いた事を言って会場を温めなければならない。そんな都合から芸能人は難しいと分かる。

 

 菜々美と未夕が挑戦したバラエティ番組の「いわし御殿」って、芸人のさんまのパロディだよな。ここで菜々美が言った「ポニーテールは本体です」は良き概念だった。確かにポニテの事は女子の頭についたおまけだと軽視することは出来ない。重視すべき武器である。

 

 グルメ番組には「まいうー」の石ちゃんと彦麻呂のパロディみたいなのがいた。他にも笑ったのは、WUGが出るフェスの出演者一覧に富沢梅男の名前があり、持ち曲は紙芝居だった事。これは梅沢富美男の夢芝居から来ているやつだろう。紙芝居ってしょぼいな。

 こんな感じで微妙にパロっている点は面白い。

 

 チームワークのことも考え、皆一緒に寮暮らしさせた方が良いという社長の方針により、全員が同じ家で住むようになるのも新要素。

 これによって互いがいつも一緒にいる日常スポットを描きやすくなった。良き工夫だと思う。

 日常の中で協力して仲良くするシーンには和む。たまに喧嘩もありなので、女子達のワクドキな日々が見れる。実波と菜々美がぷち喧嘩するシーンは可愛かった。

 

 アイドルのシェアハウスともなれば、なんともファンタジックな御殿を想像しがち。でもここの事務所には金がないので、そんな立派な物は用意できない。めっちゃ普通の日本家屋に住んでいる。これも意外なようでリアル。ウチのじいさんの家みたいな所でギャル7人が仲良く暮らしている。

 

 共同生活によって一層絆を深める7人の物語が美しい。

 7人の絆を見るアイテムといえば、よっぴーが手作りした愛情たっぷりのシュシュ。古くなった昔の衣装を解体して再生産した思い出たっぷりの新シュシュが登場する。よっぴーのこういう所、好きやな。最初はもうちょっとドライな女かと思ったが、実は愛がある。

 それからよっぴーの髪が前作の劇場版の時よりも伸びている点にも注目。前のは短すぎだった。ちょっと伸びたこの時が完成形かも。とても可愛らしい。

 

 共同生活の中で、皆が一緒に食事を用意するシーンもほっこりする。

 ここでまゆしぃが料理音痴だと発覚。たまにいるジャガイモってどこまで皮を剥くのが正解が分からないで、どこまでも小さくして何も残らないというアレをやっていた。マジか、まゆしぃがここまで出来ないとは意外。

 

 共同生活の中で、ブログやネット動画投稿を始めるメンバーも出てくる。各員が時間を有効に使って自身の売り込み方を研究する芸能人ならではの大変さが見えてくる。

 去年やっていた新人アイドル声優育成アニメの「CUE!」でもこんな感じの事をやっていたな。共同生活して、時間がある人間は個人の魅力を発信するためにあれこれやっていた。どこの芸能人も覚えてもらうために色んな活動をして大変な想いをするのだなと分かった。

 

 ピンで各員が徐々に売れてきたことで、7人仕事に全員が揃わないということも起きるようになってきた。売れて来たグループではあるあるのことなので、こうなっていくのは好ましい。

 ファンと一緒に回るバスツアー企画が組まれる。ここでは実波だけ他の仕事で合流が遅れる。こういうこともありがちだよなと納得。その遅れて来た実波の前の仕事が、2時間マグロとにらめっこしてなかなか飯を作らない職人を起用したグルメ番組だったのはふざけている。早く飯を作って食わせろやと突っ込んでしまう。

 

 実波推しには気の毒なことになったので、菜々美が実波のトラのキグルミでライブに登壇するけど、失敗してすぐにバレる所は可愛かった。

 実波、菜々美のカップリングが結構推されていたような。ライブで中の人を見ても、ここ2人のシンメは確かに華があって見栄えも良い。

 

 ファンとアイドルが間近に接近するこの手のファンイベントについて、プロオタクの大田さんが興味深い意見を発していた。

 アイドルとオタクはそれぞれがステージの上と下に存在するものであり、二者の好ましい距離感がコレだとされている。この境界を越えてアイドルとお近づきになろうとするのは真のオタク魂に反する的な事を言っていた。

 でも、大田軍団の他3名はちゃっかりバスツアーに参加してWUGと写真を撮っていたと後でバレる。それを知った大田さんが怒っているところが面白い。大田の語るアイドルヲタ論も面白い。そしてやっぱりガストで騒いでうるさい。

 

 アイドル業界にも波が来て一部は落ちぶれ、また一部は隆盛を極めていく。いつの世も流行の動きとしてコレは絶対に見えるものなんだよな。芸能界の残酷な真実でもある。

 天下のアイワンも勢いを落とし、大規模な体制のアップデートを行うしかなくなった。

 WUGの後輩として新しく「Run Girls, Run!」、縮めてランガが結成され、新時代アイドルとしてヴァーチャルアイドルのマキナXも爆誕する。

 こんな感じで作中のアイドル事情も激しく変わって来る。この点も見どころ。

 

 そういえばランガが学校にいるシーンって、外で走ったり歩いたりの多分体育?の時間が多かったような気がする。こいつら、何でいつも運動させられてるんだ。仙台の学校は体育が多いのかな。

 

 現代なら「腐る」の概念無きヴァーチャル世界出身のアイドルも「腐るほどいる」の例えを使っても良いくらいマジでたくさん出て来た。

 作品が放送されたこのくらいの時代からヴァーチャルアイドルも新進気鋭の物として注目されるようになったのだろう。Vチューバーの始祖たるキズナアイの誕生が2016年だったというから、これの放送時期とも近い。流行りを取り込んで新章を展開させた工夫が見えた。

 ヴァーチャルがリアルにも進出してくるというオタク世界の大きな変革についても取り上げた点も印象的だった。VドルがWUG達リアルアイドルの仕事を取る内容も見られた。これも時代だなぁ~。

 

 VドルのマキナXの声がスーパーアイドルみもりんこと三森すずこだった事には助かった。

 

 アイワン内部の物語も濃く描かれて面白い。

 白木さんが発令した革命的作戦により、既存のグループが解体され、真に強いグループを作るための再構成が行われた。リーダー、センターも一旦は役職を降ろされ、全て新たに決め直す。大胆な事をしやがる。

 それまで地方を強くするため各地に派遣していた猛者も全部本部に呼び戻し、ガチで最強集団を作る段に入った。ここら辺の展開にはなんかワクワクすっぞ。

 

 博多に流された志保にも東京集合の声がかかる。ここで揺れる志保の心にも注目。

 アイワンで一流アイドルをやることに拘っていた志保も、博多でネクストストームをやる内にすっかり里心を抱くようになった。その結果、博多に残って活動することを決意する。この心の変化は意外。

 主役はもちろんWUGだけど、志保も主役級に美味しいボジションに据えられていた。

 

 ネクストストームを解体したくないけど、本部に戻ってまた活躍できるチャンスも大事。2つの想いで志保の心が揺れる。

 これは同じような立場を経験したまゆしぃに相談するしかない。ドラマでダブル主役共演した2人は、密会して相談するのである。ここのシーンも良い。

 

 志保と会っていることは、志保のプライバシーのためにも他言出来ない。そんなわけで、まゆしぃはメンバーに密会を黙っている。その事が後によっぴーにバレてしまい、よっぴーは激しくオコ状態になる。また2人の間に一悶着勃発する。よっぴーがヤキモチを焼いているようにも見える三角関係ぽい感じがちょっと楽しい。 

 でもそれくらいに、今回シリーズでまゆしぃと志保がかなり接近している。まゆしぃ、志保のカップリングはとても推せる。

 

 色々あった2人が同じドラマに出る事で世の注目は当然集まる。このドラマ撮影を通して2人が仲良くなる物語は好きになる。

 撮影中の志保は、役者に馴れ合いはいらないということで控え時間も無口。まゆしぃとしては、これが2人の正しき距離感であり、これで上手くやっている状態なのだと言っている。

 なんだろうか、まゆしぃが語る志保との関係性には、熟年夫婦のごとき互いを分かり合っている感が出ていた。これはこれで萌える。てか志保は絶対にまゆしいが好き。

 くっつかないけど絶対に離れてはいない。そんな一流アイドル2人の距離感が愛しい。これがプロのアイドルであり、真の友のあり方でもある。2人の関係性にラブと熱が見えるのが嬉しい。

 

 美術部の役なのに絵が下手なことから、志保のスケブの画像は別人が書いた物と差し替えになっている。初期からそうなっていたが、がんばり屋で凝り性でもある志保の腕前は撮影中にもどんどんブラッシュアップされて行く。後半では志保本人の絵が撮影に使われるまでになる。こういう志保の進化と真面目な所が見えるのも良かった。

 ネクストストームメンバーはじめ博多の人間達にも大変モテていることから、志保の良きアイドル性もしっかり実感出来た。彼女もしっかリ成長している。

 WUG面じゃないけど、彼女の事も大変推せる。大坪由佳の声も良い。

 

 WUGのツアーチケットの売れ行きがいまいちだったり、楽曲とステージの準備が間に合わないという先行きが不安ないつものハラハラも待っている。

 早坂さんがなかなか曲を作ってくれないし、今回はまさかの歌詞はそっちで作れというオーダーも出してきた。良い歌詞を上げてこないと曲をやらないという課題が出た。アイドル達はレッスンしながら7人で知恵を絞って作詞にも挑戦する。これは新しい挑戦。

 

 作詞ってどうやるの?とあれこれ調べる姿も印象的だった。確かに普通に生きていてそんなポエミーな活動はやらないものな。私も作詞経験はないし。作詞って大変なんだなとちょっとだけ分かる。

 

 今回の味噌の一つがその新曲になっている。

 アイドルについて、自己のあり方についてもそれなりに考えた末の難産となった早坂さんの最後の神曲、そこにWUGの想いを言葉にして載せた作品が「Polaris」である。これはガチ神曲だった。先にファイナルライブで歌った映像を見て来たが諸々最高すぎる。

 

 早坂さんの実写版が田中秀和だったのだな。どちらもすごい音楽家だな。

 早坂さんが売れすぎて情熱大陸みたいな密着ドキュメントに出ていたのも印象的。最初は嫌なヤツに思えたけど、全部見ると好きになるし、イケメンで良かったな。早坂さんもイチオシキャラ。

 

 最終回のツアーファイナルでは、日本中のアイドルの想いを込めて「Polaris」を披露した。

 大雪でマイクの電源が落ちても、魂から絞り出した声を皆に届けてステージを成功させたWUGちゃんに感動。この曲はマジで染みる。WUG大団円には持って来いの曲だ。 

  

 最終回では、同じ日に各地でライブを行うアイドル達が心を一つにする美しい展開が見える。

 アイドルをきっかけに、世界が一つの輪で繋がって超ピースフルって感じで締める。ここにくればVドルだってその輪の中にあった。アイドル魂が極まった良き時代が見えて良かったっす。

 

 WUGアニメを全部見たが、しっかり面白かった。

 放送中には作画が間に合っていない事でちょっと話題になっていたが、BDではリテイクしているので安全に見れる。

 話は良いんだよな。仕組み上絵に萌え切らない点は、萌えオタにとって加点要素が低いとは思う。でも私は好きなコンテンツだった。

 曲が良いし、新章のアニメではライブシーンが進化しまくりで、CGでしっかり踊っていた。ダイナミックなカメラワークも良きポイント。

 

 本作で誕生した後にもアニメを飛び出て走り続けたランガも今年で終わると聞いた。ランガが出演して盛り上がったプリチャンも楽しかったな。あれも終わって久しい。 

 こうしてWUG系譜も終幕を迎えるのか。終わった後になってハマったコンテンツだが、良い物があったのだなと教養になって良かった。

 

 というわけで、仙台から日本全部に向けて愛を送り届けたWUGの物語を端から端まで見れて楽しかった。

 アイドルよ永遠なれ。そしてワグナーもね。

 

 

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