「Wake Up, Girls! Beyond the Bottom」は、2015年12月11日に公開された劇場版アニメ。
前後編に分かれた劇場版の後編にあたる作品である。
前編が思った以上に楽しく熱くワクワクしたので、さっそく後編も見たぜ。少女達の苦悩とそれを越えた先で掴んだ栄光が見えるドラマ性たっぷりな良作だったぜ。
内容
心機一転、WUGは仙台に立ち戻ってアイドル人生の新章をスタートさせる。
実質日本最強が決まる一大イベント「アイドルの祭典」に向けて各員が意気込んでアイドル活動に励む。
心を一つに大会に臨む中、菜々美の脱退問題が再浮上する。
光塚入団とWUG、2つに1つしか選ぶ事が出来ない菜々美の葛藤が、他のアイドル達の心をも揺るがすことになるのだ。ここへ来てWUG、またまたのピンチである。
一方でI-1clubにも波乱が巻き起こる。
例のグループ内チームシングル売り上げ合戦に敗北した志保が、東京から博多へと島流しに合う。そこで現地の精鋭3人と合流した志保は、新たなるグループ「ネクストストーム」を結成する。
アイドルの祭典を制覇する栄誉を賭け、WUG、アイワン、そしてネクストストームの強者三つ巴による世紀の合戦が展開する。
感想
うむ、今回も熱いヒューマンドラマが見られ、情報量も多い。油断せずにしっかり見ればと思わせる怒涛の展開だったぜ。
出戻りアイドルとして、再び仙台でコツコツやっていくWUGちゃんをとにかく応援したくなる。
こういうことは芸能界では普通にあるのだろうな。力不足だとか、土地によって肌に合う合わないがあるから、進路は人それぞれだ。
また仙台で活動を始めると、地元の人達の愛が温かいと感じるWUGちゃん。東京の風は凍てつく寒さであり、地元は温い。それが分かる展開にはほっこりする。そんな中でも地元の皆に甘え過ぎは良くないとグループを引き締めるよっぴーの言動は頼もしい。決意の断髪後には益々リーダーの風格が宿った。
東京から仙台に戻って作ったグループ宣伝ポスターに「行ったり来たりしてごめんね」と書いてあるのはちょっと笑う。
地元に帰ってからは、アイドルの祭典に向けて着実に力をつけて本戦へと勝ち進む。その過程で、テレビシリーズにも出て来たクセの強いスケバンなまはげアイドルとも再戦を展開する。レベルアップして帰ってきたなまはげ女達にも注目だ。
大きな見どころは、グループの指揮が上がったタイミングで菜々美の脱退問題が再浮上すること。カヤの地元に行った段階で一度は見送った光塚入団について、親と話し合った結果、再度挑戦すると決意する。ここは深刻だった。
厳格そうな父と菜々美が進路について家族会議をしているシーンはなんだかリアル。親も娘の事は真剣に考えるから怖い顔をしてきつい意見も言うものだった。てらそままさきの真面目な父の演技は良かったぞ。
何かやけに態度がデカいし物怖じしないことから、末っ子の感じがしなかった彼女だが、実はグループ最年少だった。それから今更だけど山下七海の声が可愛い。
劇団にはフレッシュな時期の16歳までに挑戦した方が良いとされると発言していた。実際の宝塚でもそんな都合があると聴いたことがある。アニメの「かげきしょうじょ!!」でも入団を決意するまでのリミットは短いと言っていたし。
WUGか光塚か、兼任は無しで一つを選ぶしかない。齢16歳で将来を左右するこの重い選択が迫るのはきつい。追い込まれる菜々美の心境は実につらいものとして描かれている。
芸能人コースに進むと、早い段階で重要な判断を求められるのか。なんだかすごいなぁ。私が16の時だったら、たくさんあるゼルダシリーズの内、次はどれに手をつけようかという判断を気楽に行っていたな。まぁ気楽に選んでも選んだ物はマジでやっていたけどね。
脱退報告を受けても、まゆしぃ、あいりをはじめお姉さん達の反応が優しい。WUGを犠牲にして進路選択を取ることで菜々美が罪悪感を抱かないよう、一同で意見を合わせて光塚入団に向けて背中を押してくれる。このシーンでは、メンバーの愛がとても暖かいことに感動しちゃう。
これまでグループを抜ける者を見送って、自身も抜けた経験があることから、一番にまゆしぃがそこのところを理解して光塚入団を押してくれる点にグッとくる。ええお姉さんやんけ。
脱退が寂しくてめっちゃ泣いている実波も可愛い。大事なお守りを菜々美に授けてくれる実波の友情にも泣ける。
社長もアイドルの事情はよく分かっているから優しく背中を押してくれる。ここの社長は頼もしい。
そして迎えた決戦の朝。なんと菜々美が来ている。これは泣いた。
光塚を蹴ってまでWUGを選んでくれた。良かったぜ。ええ話や。こういう燃える女子の友情を見ると萌える。
まぁ受けてはいないのだけど、彼女ならオーディションに行けばきっと劇団に合格していたはず。
アイワンの動きにも超注目だ。
アイワン内のチーム同士のシングル売上合戦の結果、たった100枚差で志保のチームが負けてしまう。どちらも50万を出し、合わせてミリオン売上を回復している。白木さんも意地で名誉を守った。
でも志保は博多に左遷となる。これも計画的なことだったのか。白木さんの采配と真意が読めない。悪者かどうか、なんとも判断出来ない。
ここからは志保のターンで、地方から再スタートを切った彼女のアイドル道にも注目出来る。
ツンツンして気負いし過ぎだった志保が、後輩達と特訓を受ける中で、改めてアイドル活動が好きになって行くと分かる描写が良い。まゆしぃと同じく都落ちの島流しアイドルになってこそ掴める光があった。
WUGはワゴン車で全国ツアーを行う。金が無いから移動費が最大限浮くこの方法が取られた。本当に人間と金が全然足りていない事務所なのだなと再確認出来た。
同じ時期に放送したであろう「アイカツ」のルミナスもワゴン車で全国ツアーをやっていたな。金は浮くけど結構きつい活動らしい。
このワゴン旅の道中、まゆしぃと志保がこっそり会っているシーンが印象的。
バチバチ攻めてくる志保の凶暴さも博多の風が薄れさせてくれた。今回は穏やかに戦友として再会する。志保はライバル意識を向けるからツンツンしていたけど、それとは別にアイドルのまゆしぃが好きだったのだな。なんだかんだでこれは愛だと分かった。
二人が分かり合うやり取りはなんだか尊い。後で美味いラーメン屋の情報を教えてやると親切に出た志保のツンデレには萌えた。大坪由佳のツンツン声も良いな。
志保に焦点を当てるターンを多く取ったことは意外だったが、そこに楽しめるドラマが見えて良かった。
志保の後釜のアイワンメンバーは上田麗奈が演じていた。こんな所で出ていたのか。この段階だと知名度が全然ない時期ではないだろうか。彼女の声は良いよな。この当時だと例のふざけた部活アニメで全モブキャラをやっていた時期だろう。
ネクストストームメンバーに高野麻里佳、安済知佳がいるのも意外な発見。まりんかはイヤホンズ以外にもこんなところでアイドルの仕事をしていたのか。皆こんなにも前から頑張っていたのね。
WUGにもライバルのアイワン内部にも波乱が巻き起こる。これを受けてワグナーにも新たな波が来る。
なんと最古参オタクのゴッド大田が私設ファンクラブ「わぐらぶ」を立ち上げる。ステージの下にいる人間達の青春にも一波乱あり。
で、立ち上げについての会議とかはまた例のファミレスでうるさく行って店員にうるさいと叱られていた。こいつらそろそろ出禁になるんじゃないかな。大田が店から叱らえるのが作品の形式美になっている。このオタク達の青春も好き。
WUGがデビューステージを飾った会場に帰って再び歌って踊っている。それを見た大田が感極まっているシーンも良い。一寸のオタクにも五分以上の魂ありだ。
アイドルの祭典が最高潮を迎えた瞬間で、WUG、アイワン、ネクストストームが顔合わせすることになる。なんか強者のオーラがすごい。
元々アイワンにいた者達が別チームとして顔合わせしての同窓会状態になっていた。なんかすごい現場だ。「黒子のバスケ」で、チームが分かれた後にキセキの世代が再結集して顔合わせしたみたいな王者の空間が見えた。
この最強三つ巴合戦を征するためにWUGが用意した持ち曲が「少女交響曲」と「Beyond the Bottom」の2曲だった。どちらも出来が良いし、曲の雰囲気が違っていてそれぞれユニークな作り。
後編で誕生した名曲「Beyond the Bottom」は、社長の旧友のサファイア麗子に発注をかけた。なんて名前だ。ゴーストライターとして優秀な成績を残したすごい人が提供してくれた。こういうライター事情も言わないだけで業界にはいくつかあるのだろうな。
作品序盤で社長が金を持ち逃げした原因は、死にかけたサファイア麗子の療養費を工面するためだった。持ち逃げはいけない事だけど、碌でもない要件でなく人命救助のためだったと分かったことには安心した。友情に厚い良き社長だった。
社長役が日髙のり子でサファイア麗子が役が佐久間レイ。これにはらんま好きとして反応してしまう。良きツーショットだった。共演が見れて嬉しい。
そしてサファイア麗子作の「Beyond the Bottom」の披露シーンはなんとも荘厳。楽曲的にもそうだし、メンバーの女神様感ある衣装からもその感じがした。
先にライブとPVを見て楽曲は予習済みだった。この頂上決戦で持って来るには適任な曲だ。
「少女交響曲」もそうなのだが、こちらもサビに辿り着く前に格好良いゾクゾク感があるのが好き。新曲発表の度にかなり作風が変わるのがWUGの特徴だったな。
楽曲パフォーマンスシーンの作画については、アイカツやラブライブみたく派手ではない。そこが作品のちょっと弱いところだけど、曲はどれも良くて他のアイドルに負けていないんだよな。中の人のライブも素晴らしい。
戦いの結果については長く尺を使って語ることはしない。
ラストシーンでは、トロフィーを掴んだWUGちゃんの写真が映されて作品は幕を閉じる。言葉は無く、勝ったのは彼女らだと伝えた粋な演出だった。
浮き沈みのかなりの波を越えて確実にWUGは大きくなった。充実したアイドルサクセスが楽しめる良き作品だったぜ。前後編共に楽しかった。
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