こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

言霊の力で立ち上がれ巨人「鉄甲機ミカヅキ」

鉄甲機ミカヅキ」は、2000年10月から2001年3月まで放送された全6話の特撮テレビドラマ。

 タイトルから「魔人ハンターミツルギ」をちょっとだけ思い出す。関係ないけど思い出したからには書いておこう。そっちもその内見たい。

 

 テレビ番組としてはイレギュラーな形を取っての放送となり、6話を月1放送でお届けした。1話目は約75分、後は50分サイズで放送した。

 

 これは一話見たら次月の放送を忘れてしまうユーザーもたくさんいたのではなかろうか。この時代だと今みたいに見逃した者を助けてくれるネットサービスは無かったはずだ。見逃した者は大変ショッキングだったことだろう。今って何でも見やすい良い時代。

 

 内容はまるで覚えていないけど、かなり前に親にビデオを見せてもらったことがある。主役機のミカヅキがゴツくて格好良いことだけは覚えていた。

 最近はやけに特撮が見たいのでふと思い出したコレをしっかり見ることにした。

 

 先日いくつか見た特撮作品が半世紀前の古いものだったのに対し、こちらは2000年代の作品。そうなると約20年前のミカヅキがめっちゃ進んだ新世界に見える。70年代特撮を見た次の日に00年代特撮を見ると進化レベルが異次元。

 

 このくらいの時代の特撮技術とCGの割合が個人的にはベストかもしれない。最近の物だとCGに頼りすぎて生のアクション成分が足りないこともある。

 新時代を非難するばかりの喧しい懐古主義者を気取るつもりはないが、この時代にはこの時代の良さがある。

 

 ミカヅキの特撮シーンの完成度は素晴らしく良かった。ザ・特撮といった感じに最大限熱の籠もった作りになっていた。かなりご機嫌に特撮している。

 これは特撮好きには刺さる。もっと世間に広まっても良い作品ではないだろうか。

 

 そんな訳で思い出の特撮番組を振り返って色々と殴り書いて行こう。

 

 

鉄甲機ミカヅキ DVD-BOX

 

内容

 主人公少年 岩動 風雄(いするぎ かぜお)と黒き巨人ミカヅキが一つになって悪の怪物と戦う物語が展開する。

 

 風雄、ミカヅキと共に正義の機関「AIT(エイト)」も一緒になって戦う。

 

感想

 特殊な形でお届けした番組なだけに、作り込みも特殊だった。6話という短い物語にかけた時間と金は莫大なものだっという。

 第一話の制作だけで1年を要したとのこと。すげぇな。

 最初は劇場作品として発表する予定だったことから、時間をかけた豪華な作りになった。一話目を見た時は劇場版クオリティだぁと思ったものである。

 特撮番組につぎ込むには破格の予算で挑んだという。確かに特撮面においては金に糸目をつけずやりたい放題やった感が見られる。

 

 特撮面では抜群に作りが良い。迫力満点で美しい戦闘シーンに仕上がっている。

 まず主役の巨人ミカヅキの鉄壁感よ。固くて強そう。厳しくもやや慈愛を感じるイケメンな顔面デザインも良い。

 ミカヅキを見ると、鉄人かジャイアントロボあたりの横山光輝作品に登場するロボ感があるなと思う。少年とタッグを組む要素もそれっぽい。

 最近の作品でいうと、放送しては延期を繰り返す「メガトン級ムサシ」に登場するロボ感もある。とりあえず好きなデザイン。

 

 少年と巨人だけいれば看板要素として成立する。そこにおまけしてたった6話しかない割には、特撮の花形とも言える要素をジャンジャンつぎ込んでいるのが良い。

 

 毎度新型が登場する月光機の存在も光る。この月光機軍団も良い味を出している。神秘的巨人ミカヅキの持つ荘厳さと比べ、こちらは明らかに人間が手作りしましたという俗めいた感じがある。二つが並んだ時の愉快な違和感が良い。月光機はどれも好きだったな。

 丈夫な鍋とかを作る「あけぼの重工」から次々納品されるハイスペックなガラクタでミカヅキよりずっと弱い。でも愛嬌のあるデザイン性からミカヅキよりも注目してしまう感じもある。関係ないけど鉄人の敷島重工を思い出す。 

 月光機シリーズの中には、どう見ても「禁断の惑星」のロビーぽいのがあり、そいつが一番お気入り。

 大破しては次が出てくる交代制だが、最終回では歴代機体が勢揃いでラスボス戦に参戦する。あそこを見るだけでも興奮した。

 

 ミカヅキと月光機、大型戦力が二つだけで見所は十分だ。加えて特撮熱を盛り上げるのが「AIT(エイト)」という正義の機関。 

 こちらの機関で有する科学力もヤバい。戦闘員はタクティカル・スーツという格好良いスーツ姿に変身する。変身ヒーロー要素もありなのだ。もっとスタイリッシュになったエクシードラフトみたい。あと普通に皆が着ている隊員服も格好良い。

 そして客員が乗り込む戦闘機もあって格好良い。メカニックの面でも抜群のセンスを出している。

 

 思念の塊がモンスター化した敵怪獣もスゴイ。

 一話目ではデカいスイカの化け物が空を飛んでくる。次には扉、風鈴と、風景として見ればシュール。デカいスイカが空に浮いている絵面には笑った。

 本格的にモンスター化すればグロテスクかつ格好良いデザインで良い。

 敵側のシンゲツも格好良かった。

 

 人間態の敵のトルパが装着しているスーツもアメコミヒーローみたいで格好良かった。

 

 ビジュアル的に点数が高いので、これらがドンパチやっている特撮だけ見れたら最低限のお得感は味わえる。

 

 他に気に入った要素は、ドラマ性とキャラクターにある。これは普通に見て面白かった。

 

 たった6話しかないのが惜しいくらい良いキャラを作っているではないか。

 名物キャラは戦う女子高生社長のアカネちゃん。そしておっさん枠だが土肥原さん。

 

 毎度強敵に大破される月光機に命がけで乗り込むボーイッシュ美少女アカネちゃんの活躍ターンもかなり多い。で、結構可愛い。これは男子人気がでそう。この負けん気の強いヒロイン性を見ると「花より男子」の牧野つくしを思い出す。一番記憶に残る逞しい女だった。

 女子高生だから当然学校に行くし、「あけぼの重工」にたくさんいるおっさんの社員の未来も背負っている。そしてロボに乗って強敵と戦う。一番仕事しているキャラだったな。

 

 土肥原さんは愉快過ぎる。タクティカル・スーツを着て戦う武闘派なおっさんなのだが、勤務中に酒をやるし女好き、そして離婚した妻とよりを戻そうと頑張っている。私生活が駄目で面白い。

 キャバ嬢とデートに行った先で怪獣の襲撃を受け、生き埋め状態になる。そこからキャバ嬢を脱出させる時に、嬢の尻を見て「良い尻だぁ~」と言ってるのが名シーンだった。

 

 どこに行くにも青汁パウダーを携帯する健康志向なAIT隊員の木場さんも面白い。

 

 人の思念が怪物化するテーマ性には、やや社会派なメッセージ性も見えた。

 ミカヅキが動くのは単純に風雄の言葉を受けてではなく、言霊に反応してのことである点も画期的で良い。より魂を震わせる設定だった。

 

 一話目の入りは結構悲惨で、風雄が洒落にならんレベルで学校の同級生に虐められるシーンが描かれる。この始まりは不穏。

 いじめっ子が口にする風雄への虐めが成立しないロジックがすごかった。自分達がやっている事は人間相手なら虐めになるかもしれない。でもお前は犬だからこれはしつけになる。この内容である。

 震えるわ。ある意味ハイスペックな虐めが見れた。ガキなのに根性悪すぎる。

 

 ニ話目の扉にまつわる思念のエピソードも、ガキ同志のいざこざによって生まれたトラウマを抱えた青年の物だった。こういうきっかけで犯罪者が育っていくのかもしれないと思うとリアル性もありだな。

 扉のトラウマを持つ青年は、現在「仮面ライダーギーツ」に出演しているネオンちゃんのパパの人だ。この時から良い意味で人相が悪い。

 

 ストーカーをテーマにしたエピソードも印象的。ヤバいなぁコレ。

 この回では怪獣好きのオタクサークルが登場する。所属するメンバーの人達が芝居で作ったのかリアルか分からないくらいまんまめっちゃオタクだった。雰囲気と喋りがオタクすぎて、そこらにいるマジの大学生でも引っ張ってきたレベル。

 この中の一人がどぎついストーカー化して困る。社長JKアカネちゃんの友人ユキちゃんを狙ってストーキングしてくる。キモ怖い~。

 大変怖い行為がある。それはユキちゃんが捨てたゆで卵の殻のゴミを回収して食うというもの。ヤベェ。美少女の綺麗な指で剥かれたのなら殻のゴミもご馳走になるというヤバヤバ理論。

 そこから進化した変態プレイが、わざわざ卵をユキちゃんの前まで持ってきて、目の前で殻を剥いてくれと言うものだった。リアタイで殻のゴミを回収出来る。これはすごい発想だ。変態性にいくらかユニーク性も絡んでいる。

 この変態なユキちゃんの指フェチ、または殻フェチストーカーは、シンゲツの乗り手として覚醒したユキちゃんにすっきりターミネイトされた。そこは良かった。

 

 シンゲツを撃破して大団円を迎えた後、風雄くんはどうするのだろう。ハイスペックないじめっ子がいる学園に戻っていくのか。爽やかな終劇を見た時、思わずそんな事を考えてしまった。

 

 巨悪と戦う中で、いじめられっ子少年の心が強く成長していく過程が見えた。それと共に、いなくなった父親と風雄の心の絆も描いていた。なんだかんだ親とは大きな存在だから、いなくなっても心と記憶の中にはいつまでもいる。そんな事が分かった。

 風雄の幼少期は神木隆之介が演じ、父は杉本哲太が演じていた。結構な有名人が見れたぞ。

 

 DVD特典になっている劇中作品「超空童子 ワンダーセブン」の存在もすごい。

 本編ではアカネちゃんが気に入って見ている特撮番組として登場する。劇中作だったこれを実際に30分の作品として作っているのがすごい。こちらも特撮熱の籠もった良き仕上がりだったぜ。

 こちらには声の出演で川上とも子が出ている。今は亡き人だが、好きな声優だった。

 

 各回に見る人間ドラマには大人向けな要素があったが、純粋に特撮として見れば子供心がワクワクする素晴らしい作りだった。

 これはBD化して未来にも残して欲しい。キャラもメカも怪獣もとても良かった。

 格好良いのでミカヅキのフィギュアが欲しい。

 

 というわけで、最高に特撮している熱い作品としてミカヅキを推す。

 

 

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