こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

カラーで見れるぞ!愛しきアンバランスゾーン「総天然色 ウルトラQ」その2

 

ウルトラQ:怪獣フィギュアコレクション(単品)/ケムール人

 

 良いフォームで走ってパトカーの追跡もなんなくかわすケムール人のシュールな造形はマジでグッとくる。この適度な愛嬌とキモさ、意外とシュッとしたスタイルはマニアにハマる。

 

 日本警察を虚仮にしてあちこちで悪さをしたケムールは、2020年から60年代当時の日本に挑戦を仕掛けてきた使者である。

 サブタイの「2020年の挑戦」の通り、リアル時間も2020年になった当時は、ネット記事とかで話題になったこともあったっけな。確か私もこのブログに何か書いたし。

 

 私がQを初視聴したのだって本放送から何十年と過ぎてからの話だった。その当時から見ても2020年は遠かったのに、もう振り返って3年も前の世界かよ。時間の流れがすげぇな。放送した1966年当時の人間達は、21世紀到来をどんな思いで見ていたのだろう。

 

 この2020年にリアルで流行ったおぞましい事件がコロナ騒動だったわけで。

 これを受け、66年の時代に人間に殺られたケムールが2020年で復讐作戦を取ったのではないか。つまりコロナはケムールのしわざだ。という荒唐無稽の最上級のような四方山話も日本のどこかのオタクから聞けたとか聞けなかったとか。知らんけど。

 なんにせよケムールを舐めるな。そういうことだ。後からゼットンと一緒にまた地球ツアーに来るしな。

 

 何気に便利な体質で、等身大から巨大サイズにもなれる。Qだとこうしてサイズを自由に出来る怪物も珍しかったかも。

 

 ケムール人は長く生きる事を可能にした種族だが、脳よりも先に体が朽ちることで困っていた。そこで人間を拉致ってその体に移植して元気に完全な延命を行おうという目的で動いていた。

 これって怖いけど、微妙に昨今の人間の都合とも合致してきてはいないか。現代人も寿命自体は伸びても体が先にやられる、逆に頭が先にやられるなどしていわゆる健康寿命はちょっと危ないかもしれない。ケムールの願望とマッチしてしまう状態になっている人間もいくらかいるのではなかろうか。

 ちょっとリアルにも見えてくる2020年のケムール問題だった。

 

「虹の卵」の回も良い。こちらは子供が主役で、手にすれば願いが叶うという伝説の虹の卵をゲッツするために頑張る話。その願いとは、仲良しのおばあちゃんの足を良くしてあげること。おばあちゃん子の私的に刺さる。おばあちゃんて良いもんだよなあ。

 ここでドカンと登場するのがパゴス。タイムスリップグリコでシークレットレアに設定されただけあって登場がありがたい。そして格好良い。

 

 この回では、冒頭で竹の花が咲いたというニュースがぶっこまれる。100年に一回くらいしか咲かないらしく、それが咲いた年は不吉な事が起きるというらしい。マジか、そういや竹林の近くで大きくなってきたけど花なんて見たことねぇ。ジュンちゃんが言うには応仁の乱天明の飢饉、第二次世界大戦勃発時にも竹の花が咲いたらしい。結構怖いけどためになる知識だった。

 

 一番SFらしくて面白いと思ったのは、怪獣が出てこないことで見た目としては地味な回の「1/8計画」。

 コレはまず発想が面白い。で、次には結構怖い。

 

 地球の人口増えすぎ問題から、じゃあ人間を小さくしてシルバニアファミリーみたくすればなんぼでも土地に余裕が出来て地球は安泰という発想が出てくる。結果、人を8分の1にして簡単に管理するという計画が実行されたというダークファンタジーかつサイエンティスティックな内容になっている。

 これを初めて見た時は「面白い」と思った。これが可能ならいつでも「南くんの恋人ごっこが出来るじゃないか。安易にそう思ったわけである。そんなわけで瞳の中にも1/8のギャラクシーを見たい今日この頃

 

 でもなんだかそれぞれに番号を振り分けて都合よく管理される感じもあって結構怖いかも。

 これのオチはユリちゃんの夢オチでした~だったけど、最後にユリちゃんが「皆小さくなれば結局同じこと」と言ったのも何か深い。そうして知らない内に進んだ突飛な政策が、いつしか日常として溶け込んでいるというパターンも気づかないだけであるのかもとか考えてしまった。

 

 まだ怖くなる小ネタが、この小人人間計画が、どこかの軍事作戦としてリアルの人の脳内にもあったということだ。なんとかっていう古い書物に1/8と同じような事が書かれているとか。面白そうなんだけど、ずっと怖いも残るから、好きな話だけど後味がちょっと悪い。

 

 それから小人にされたユリちゃんが、自分は大きくなりたい側の人間だと言っていたのは、後の歴史を知っていればくすりと笑える。この後のウルトラマンのフジ隊員を演じた時には、小人の逆で巨人になるのだった。数奇な運命だよな。

 

 久しぶりに見て思わず笑ってしまった点は第10話「地底超特急西へ」に登場するM1号の顔。

 トランクの中に人間並みの知能を持ったすごい人工生命体がいるのだと序盤に説明があるが、その正体があんな小ゴリラみたいなやつだったのは間抜けで笑う。これってもっと格好良く設計しようとかならんかったのかな。初見だと良い意味で期待ハズレすぎてコケる。

 

 ジュンちゃんがM1号はどんな見た目をしているのかと科学者に聞いても、当時は「さぁ?」と返すしかない状況だった。今だったら顔が似ているとガキ使でネタにされたダウンタウンの浜ちゃんみたいって言ったら納得するだろうな。ちゃんと見たら本当に二人の顔が似ている。

 

 特急列車の上に乗っているM1号はウケル。この回のオチが大昔のルーニーテューンズアニメみたいな結構コミカルな感じになっているのも好きかも。

 最後にM1号は「わたしはカモメ」という「?」な言葉を残す。これを小さい時にビデオで見た時には、大昔の宇宙飛行士がそう言ったのだと親に補足説明をもらった。今でも覚えているぜ。M1号、結構良い声だったな。

 

 最後の「あけてくれ!」も怪獣、怪人無しの地味な路線で行くことで印象深い。

 これは謎の空間に繋がる異次元列車の怪奇がテーマになっているが、真に描くのは社会人の精神的疲れ具合についてかも。

 変な空間に入ると元の日本に帰ろうってまずは思うけど、帰ったところでそれはそれで閉鎖的で苦痛なのではないか。では同じ閉鎖的であっても家庭での責任、職場での責任などから開放されたストレスフリーの電車の中の方が良いのではないか。登場する疲れた中年リーマンは、そんな感じで現実と異次元、二つの世界での生活を天秤にかけるのである。

 う~む、このマインドから生まれた昨今の流行りコンテンツがご都合主義の極みとも言える異世界転生ものってわけか。60年代からも苦しむ人々の現実逃避マインドは確実にあったわけだ。いつの世も人はアンバランスゾーンとの遭遇を待望しているのかもしれない。そんな私はこれといって疲れを知らない現実向けな1人。

 

 セリフとしても本編に出てくる「あけてくれ!」は、電車の外に出るためか、それとも中に入るためか、果たして人の本心はどっち?みたいな重くて怖い問いかけをされているようだ。

 このラストがなんか急に突っぱねたようにアンバランス感から現実感に戻す仕様になっていて怖いけど上手いと思う。アンバランスゾーンからの開放ってことで、リアルな日本社会の困り事を最後に見せたのかもしれない。怪獣無しで現実部分を濃く見せられると冷めるけど、28あるエピソードの内、作品のオチとして持ってくるならコレがベストな配置だった。

 それと死神博士の中の人の天本英世が異次元の住人役で出てくるのも印象的。Qの最後には死神博士が見れる、それが昔からの記憶だった。

 

 それからゲストキャラをよく見てみると、ハヤタ、ムラマツ、イデの中の人達がこの段階でも顔見せしていた。で、ユリちゃんはフジ隊員だから、意外に科特隊メンバーが顔合わせしていたのだなとも気づけた。

 

 こうして3回目か4回目の視聴となると随分冷静な大人マインドで見ることが出来る。成長する程ウルトラシリーズは何かグッとくる。これは皆思っていることだろう。

 ではまたどこかで出会えると良いな愛しきアンバランスゾーン。

 

 

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