こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

人類よ解放されよ「戦闘メカザブングル」

「戦闘メカザブングル」は、 1982年2月から1983年1月まで放送された全50話のテレビアニメ。加えて劇場版が1本作られた。

 

 ザブングルといえば「くやしいです!」を言う芸人。くやしいです!はドラマ「スクールウォーズ」のセリフ。古くともそちらは履修済み。しかしアニメのザブングルはやっと見れた。BDで綺麗になって令和時代にもしっかり楽しめるんですね。良い事だ。

 

 ウチのお兄ちゃんがこのアニメが好きで、たまにOP曲を歌っている(鼻歌を月イチくらいで聞いちゃう頻度)。

 串田アキラの担当するOP曲は確かに格好良い。対してゆったりとしたED曲も良し。串田アキラのボーカリストとしての良いところも出た作品だった。

 

 

 

内容

 最初は少年ジロン・アモスが親の仇のティンプに復讐を行うための物語が展開する。

 その中で話はどんどん大きな方向性へと膨らんで行き、惑星ゾラの支配者階級イノセントの打倒を行うシビリアン達の熱き戦いの物語が描かれるまでになる。

 ジロンは復讐の旅の流れでアイアン・ギアーに搭乗することになり、旅の中でウォーカーマシンザブングルに乗って戦うことになる。

 

ハセガワ クリエイターワークス 戦闘メカザブングル ザブングル 1/72スケール 色分け済みプラモデル CW26

 

感想

 終盤でキャラを皆殺しにしがちな富野由悠季が監督した作品だが、こちらは終始コミカルで皆殺しは回避している。もう葬式は飽きたという上でまだまだロボアニメを楽しみたいお友達にはとてもおすすめ出来ます。

 戦争もやるアニメだから時に死者も出てシリアス展開もあるが、それよりも明るく元気にキャラが活き活きと動くターンが押し勝っている。

 イデオンとかダンバインのようなシリアスな作風の他にもこういった楽しいテンションの物語も行けたのか。富野作品の引き出しの多さが分かるものだった。

 

印象的な絵柄、キャラ性

 絵が崩れたとかではなく、基本デザインとして華がないキャラタッチだな。富野アニメの主人公は美形ではないことが多いが、今回の主人公のジロン・アモスなんかはサンライズ歴代作品中でもかなり上位のブサイクキャラではないだろうか。全然格好良くないんだよな。

 コンパスで描いたような丸顔をしていて、劇中では「ド饅頭」「メロン・アモス」とあだ名されている。ド饅頭て何よ。初めて聞いたけどとりあえず悪口ぽいとすぐに分かる。

 そんな饅頭やメロンみたいな顔の彼も、思い切りの良さややる時はやる男気でヒロインズからの関心を集めている。男は顔の丸さやダサさでは決まらない。熱したハートからのアクティブな行動が可能ならば、そこに女は寄ってくるのだ。希望が持てる非モテ顔大成の物語でした。でもジロンの声は普通に格好良い。

 

 サンライズキャラなら男女ともに美形がいて、スタイルも良くて女性は結構エッチな感じなのもいがち。だがこちらは全体的にちびっ子な等身でキャラデザに色っぽさは感じない。でもエルチのパンチラ率はまずまずで悪くない設定でした。

 

 従来ロボ作品では見ないロボをよそに人間の方がアクティブかつコミカルに立ち回る作風は子供向けであり、見ていて実にユニークだ。

 絵柄は特徴的で、どこかジブリ感もあるような。「未来少年コナン」のアクティブが過ぎる主人公コナンくんの動きをヒントにアニメーションを作っているとか。そんなことをネット情報で知りました。

 確かに敵を相手に生身でも大立ち回りするジロンやエルチの活躍を見れば、超人めいていていることからコナンくんの感じもしてくる。特に洗脳から復活した終盤のエルチは無双しすぎで物理的にステータスがすごい。敵に回したら怖いと思った。

 

 アイアン・ギアに乗り込む仲間達のコミカルな動きを見れば、大昔のルーニー・テューンズアニメみたいな感じもする。それからポパイみたいなコミカル描写だとも思える。 

 特にファットマンのアクションシーンはファンタジーかつギャグめいている。彼の活躍のターンは良かった。エルチを信じて慕う忠犬のような彼の生き様は印象的。主が洗脳されて帰ってこないのを悲しげに待つターンは見ていて可哀想になった。中盤まで何も喋らないキャラというのも興味深い設定だった。

 ファットマン、ティンプ、面白いナレーションまでを担当した銀河万丈の活躍がたっぷり見れるアニメでもあったと思い返すことが出来る。ナレーションの言い回しは独特で、これは調子こいた喋りだなと毎度楽しめた。

 

 全体的なキャラ性として印象的なのは、とにかく喧しいヤツらだったということ。

 キャラ同士の絡みはダイナミックな漫才調子で、とにかく喧しい。

 エルチ、ラグ、コトセットあたりが特に強めのヒステリック持ちに描かれている。主人公のジロンだって少しそんな感じがある。ヒスなキャラが多かった。

 エルチなんて美少女ヒロイン設定のはずなのに暴れん坊過ぎて凄い。見ていて飽きないキャラだった。可愛いとは思うけど、これだけ暴れたヒロイン性持ちなら面倒臭すぎる。これの事を最後まで好いていたホーラも結構変わっているのかも。洗脳後にイノセント側戦力に回ってもエルチは仲間から鬱陶しがられていたな。

 

 エルチ、ラグで長らくツインヒロイン体制を取っていた。それぞれマジで面倒臭い女で笑えた。どちらも人間としては面白くて魅力があって私は好きだが、付き合ったら100%に近い確率で喧嘩別れしそう。

 二人共船を降りる家出旅をしていて、その先で男を作っては戦争で先に死なれて出戻ってくる。別のヒロインで同じような家出旅エピソードがあったのも印象的。これに引っ掻き回されながらもフォローしたりのジロンは面倒見が良い。 

 島津冴子の声は綺麗で色っぽいからとても好きなんだけど、彼女が演じたラグの事はマジで面倒臭いし怖いから付き合いたくないって強めに思いました。まぁそれとは別に楽しそうだとは思うんだけどね。

 

 途中からビリン・ナダ、マリアも加わってヒロイン4人体制になってくる。こちらの2人もやはり図太い。ていうかこのアニメはなんだかんだで出てくる人間全部が最終的には図太い人間に仕上がっていた。

 マリアのキャラ性が初期から後半で大きく転向したのは印象的。何があっても争い事は駄目で銃を取ってはならないという鋼の非暴力主義を通していた初期のマリアが、ジロンと再会した中盤以降は必要があれば武力を用いることに待ったをかけない戦闘ヒロインになったのは大きく印象に残る。これも時代や環境に合わせて進化していくシビリアンの在り方の自然性を描いた結果の演出だったのかと思える。

 

 敵キャラのホーラ、ティンプまでもがギャグシーン担当になっているので、悪者だけど憎めないヤツに思えてくる。そういえば結局ティンプは生き残り、ジロンの当初の目的は果たせていない。まぁ復讐がどうのこうのってを越えて話が大いなるヤバイ方向に行ったからな。

 こっちについたり敵になったりのカタカムも面白いキャラだった。作中は文化に乏しい世界観設定になっており、そこでエルチが文化を発展させる活動に出る。死者を葬る文化の「葬式」が広く伝わっていない世界で、葬式を知らない人も多くいる。そんな中でエルチのオヤジとカタカムは作中では珍しい葬式を上げられたキャラとなった。でもカタカムは実は生きていたのに葬式を上げられて帰るに帰れなくなって退場となった。あそこはちょっと笑った。

 

 キャラクター達がこれはアニメであると理解し、各員が主役、サブキャラの意識と理解を持っているなど、メタな要素を入れたギャグ展開もありだった。こういった仕組みはシリアスに寄りがちなロボットアニメでは珍しい。

 最終回付近になればそろそろ放送が終わるという都合をキャラの方で理解していて、寂しいという気持ちを表面に出してくる。そんなシーンも愛嬌があって面白かった。 

 

ロボット 

 青い閃光ザブングルは主人公機らしい威厳のある格好良さで好き。ザブングルスーパー戦隊のロボにでもいそうなちょっとごつい感じだけど、他のロボはボトムズみたいに地味な感じだった。

 

 ジロンのザブングルが大破して乗り換えた次のウォーカーマシンのウォーカーギャリアも悪くはないけど、顔部分がそんなに格好良くない。色やデザイン的に亀さんの感じがしてちょっと間抜け。ちょっとだけダイレンジャーのダイムゲンを思い出す作り。

 ぶっちゃけ最初のザブングルの方が好きだったな。

 

 車が合体して変形するシステムも良い。車だから操縦は他作品のロボみたくレバーやボタンではなく、丸いハンドルで行う。ロボットの操作があのハンドルなのも珍しい。

 

  戦艦のアイアン・ギアーが大変形して人形ロボになるのは、ダイナミックな仕掛けで格好良い。戦艦マクロスみたいな仕掛けだ。

 

 やっぱりロボットアニメだからロボバトルは一番注目して見たい。ロボット戦でもロボがコミカルを動きをするシーンが見えて楽しめた。

 

作品世界観、設定の秀逸さ

 アニメを見たざっくりな感想は、サンライズ作品にしては地味だな~ってこと。あっ、絵柄がね。

 舞台としてもイノセントドームの中とかは別にして、基本的にはだだっ広い荒野を行く感じで景色としても地味。砂漠の惑星タトゥーインみたいな感じもする世界観だな。

 

 しかし主人公機のザブングルは格好良くて好きだった。キャラのやり取りを見ればバカっぽいアニメに見えるが、世界観や設定は面白くて秀逸なものだったと思う。

 一部の支配階級がその他多くを管理している。支配される者達が段々と支配を逃れるべく進化して支配者に対して疑問を持つようになる。そうなれば立場が入れ替わるレベルで二つの勢力がぶつかる大きな戦いにもなっていく。この流れには、あたり前の人の感情や倫理観が見える。人間心理のリアルなところを捉えたシナリオ展開だった点が良い。

 

 惑星ゾラの人々を上手いこと支配して管理するために定められた価値観として「3日間の掟」というものがある。この設定が他のアニメと変わっていて面白い。

 3日間の掟とは、あれこれの犯罪をしても3日逃れたら無罪放免になるというもの。盗み、殺しだってその範疇。

 3日間の掟に従わず、それ以降の4日目にも罪を問うて来るなら、そっちの方が悪で頭がおかしいと判断されるくらいなのだ。この設定はユニークな思考で生んでいるものだが、狂っていて怖いとも言える。

 この掟に従えば、親が殺されても復讐出来る期間は3日間に限定される。4日目には無罪になるからだ。でもジロンは、一週間経過しても掟を無視して仇討ちに出る。それを聞いたラグやブルメがおかしいとバカにして笑うのは異常なワンシーンに見えた。

 

 それまで当たり前だった3日間の期限を越えて憎しみや執着を継続させるジロンの言動を仲間達は珍しいものに思い、そこから全体の思考にも動きが出てくる。

 これは人類に対して精神的に鶏頭になるな。思考することを止めるなと言っているように思える。まぁ3日も続かない想いなど本物じゃないってことだ。

 

 実はイノセントの方が身体的に脆弱な過去の人類であり、シビリアンはそれを越えて地球に適応出来る進化種だと分かる。

  スペックとしていずれは自分達より上を行く勢力がある。それがまだ幼いうちからこちらに逆らわないようにしておけば、力関係はずっとひっくり返ることがなくて安心。そんな考えの元でシビリアンを管理する一連の流れはまるで社会実験のようにも見えた。

 

 途中からイノセントがエルチをさらって洗脳する流れは、予定外の進化を遂げた者を予定内へと強引に押し込む作戦で怖かった。

 ラストで洗脳から復活したエルチが、不完全で暴れたヒロイン性を持っている面倒臭い自分に対してそれが自然でそれが良いと叫ぶ内容には感動した。

 

 イノセントの定めたルールや価値観に対して「?」を掲げて独自の考えで動くようになる。それがシビリアンとしての正しい進化であり、我々リアルな人間の世界で考えてもそこは同じだと言えよう。

 大人しく賢く支配者に従うターンもそりゃ平和で良いさ。でも平和や正義を見つめて人の真実を掴みたいならそこを突破せねば。そう思わせる深い内容だと思う。作品のテーマとして、抑圧と解放が含まれているのは私の趣味として好ましい。

 

 予てより続く社会規範だが、目の前の今でもそれを適用して生きるのは果たして理にかなっているのか、正しいのか。そこら辺の判断はいつだって今を生きる現役の人間が思考していかねばならない。

 思考を止めた時が人の終わり時であり、逆に始めたらならそこが誕生の瞬間。そのようなメッセージ性が伝わる。

 キャラクター同士の喧しくてバカみたいなやり取りの中にも、このような正しく重く教養のあるテーマ性を盛り込んだテクニックはすごい。拍手です。

 

 最終回のサブタイ「みんな走れ!」は良いフレーズだな。

 大きな戦いがあったけど、それが終わって皆が希望に向かって走る。文字通り総員マラソン状態で終わる。イデオンと違って可愛くて平和な終わり方。こういうラストも好きです。

 映画版だったら実はアーサーが生きていて、彼の知識でエルチの失明を治してあげるというもっと希望が持てるラストだった。エルチ良かったなぁ。カミーユみたいに傷を負っての終わりじゃなく、回復出来るラストだったならとても良かった。

 

 というわけで私もザブングルよろしく疾風のように素敵ライフに向かって走っていこう!

 

 

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