見ていて一番怖いトラウマになるのがM作戦だった。これは害悪な方向に頭が良いもので故にリアルに怖い。
MはマネーのMであり、この作戦ではまず日本に偽札をばらまく。異常な形で増えた円のためにそれまでの円の価値が崩れる。そうなると吐きそうな程勢いをつけたスーパーインフレが起き、物価高騰がとんでもないことになる。これによって人々はパニック状態を回避出来ない。計算された悪がそこにあると見えて来るのが怖い。
このゴミ迷惑な騒動を受けて八百屋の値札が変更されるシーンがあるのだけど、確かニラが一束500円でキャベツは1000円とかになっていたかな。とにかく異常な数値。
高くて米が買えないことで米屋が襲撃されるシーンも怖い。赤ちゃんがいるのに飯が食えないお母さんを見た米屋さんが善意で少しだけ米を分けてやると、それを見た飢えた暴徒がもっとあるんだから出せと襲撃をかけてくるところなんかは怖すぎる。
飢えると人は道徳心や理性を失う。食い物がないことで万引きをする者も出るし、不景気で失業者数も加速する。仕事がなくて食うに困った若者を甘い蜜で引っ掛けて自分達の都合よく使う闇バイトまで死ね死ね団が仕掛けてくる。ヤバいだろ。
自分達で仕事を奪っておいて自分の所に引き込んでブラック労働をさせるという策は実に悪どい。人を人として見ないことが前提でないことには進められない狂った悪がそこにある。ミスターKはマジで危ない世界の癌。
途中でヤクザの道から改心した鉄さんがおでん屋を始める。そこで飯を食っているおっさんが不景気からの買い占め運動の害悪性を語るのも耳と心に痛い。
最近の日本でも人気の商品を買い占めてすぐには売らず、皆が本当に欲しくて困っている時にドンと吹っかけ値で売る転売ヤーが横行して困っているものな。こういう考えは昔からあったんだな。そういう都合をおでん屋の雑談として語っている。
しかし買い占め転売ヤーなんてのは上手い商売かもしれないが、人間性の是非を問う上では不味い所業でしかない。財布と心がケチになった人間が、羞恥心と罪悪感を失うこの現象を心底情けないと思う今日この頃です。まぁ地道かつ実直に頭と足を使って稼ぐのが美徳ってものっすね。私には向かない稼ぎ方ではあるけどね。
こうして経済を荒らしまくって日本人を精神的に追い込む作戦はマジで悪いし怖い。最近の日本もこんな感じになって来ているから、まさかリアルに死ね死ね団みたいなのがいるんじゃないだろうな。深く暗躍されちゃそんなのがいても多くの人間は気づかないからな。
これを受けて動く政治面にもフォーカスしている。ここまでのことでさえ普通の特撮ではまずやらない見せない展開ばかりだが、政治に突っ込んでいくのはもっと無いことだと思う。新鮮です。
偽札の猛攻による急激な経済破壊は政府も予想しないことだからどうしたものか困っている。これは政治が上手いとか下手の問題ではなく、もう全部ミスターKが悪い。
政治屋のおっさん達がウダウダと会議しているところに、日本人パンピーの代表としてレインボーマンが乗り込んで意見するシーンはなんかすごい。ウルトラマンや仮面ライダーが政治屋の会議に来ることはないだろうに。
今は一刻も早く食料問題をなんとかすべき。なのでしばらくは配給にしてくれと提案するレインボーマン。これはなんか胸が痛む。終戦から幾年か経って豊かな時代になって来たと思ったところでまた配給に戻るこの感じにはなんともいえない切なさがある。
最近の日本も米が買えないから備蓄米を出すとか言って配るのでなく売る形でなんか変なことになっていたよな。
おまけにもう一つ妙に現実とリンクしちゃうのが、レインボーマンに出てくるおじさん大臣とリアル日本の一つ前の大臣がちょっと似ていること。これだけ古い作品と今の日本が結構重なって見えるのが変な感じ。そういや今の大臣は女性になったとか。それはまたすごいことだな。
ミスターKも日本の産業や政治は将来性がないとか、目先のことに一生懸命なばかりで先の見立てがなっていないと説教めいたことを言っていたからな。国のあり方ってのは盤石にして行くべきだな。
一連の恐怖を生み出す元となった偽札にまつわるシナリオも怖い。
まずは本物とそっくりのハイレベルな偽物を作れる職人をさらってくるところから始まる。一級製版工の爺さんをさらってくるのだが、この爺さんの物語なんかもカットして問題ないところを濃く描いているから怖い。
ある日からなんか基地にいた爺さんでも良いのに、そこをしっかり描くのがリアルに重きを置くレインボーマンクオリティ。爺さんには愛する婆さんと可愛い孫がいるからそこを人質に取られたら偽札を作るしかない。偽札の型を作るシーンなんかも見えて、ああして作るのかと学びになった。こうしてやけにリアルに恐怖を掘っていく展開が見どころ。
この爺さん役の俳優も良い芝居をしていた。偽札を作ってしまったことで、今程自分の職人の腕を恥じたことはないと嘆く爺さんの叫びのシーンは印象的。
レインボーマンも爺さんの救助に必死になるが、この爺さんも遂には助からず偽札製造工場と共に爆死してしまう。爺さんが帰って来れないのが可哀想。残った孫と婆さんはどうするねん。
守るべき日本の皆さんを次々死なせてしまっていることで、レインボーマンが己の無力を悔いることがある。ヒーローのこういう苦しい心情を掘っていく作品も最近だと珍しいかも。これをやると元気な作品にしたいところがどうしても暗くなるからな。
偽札を世間に浸透させる過程も怖い。ここでは宗教マインドが関わって来る。
お多福のお面を被った巫女さんが仕事をする「御多福会」の支部をあちこちに設置し、貧乏な信者の方々に偽札を渡す。待っていれば時期にそれが世間のあちこちに広まる。この方法で偽札騒ぎを起こした。
困っている人間の心を偽の宗教と偽の金で救ったフリだけして騙す。最悪の作戦だわ。でもこれも世間を見ればありそうな詐欺商売で怖い。宗教をやるならどれを信じるかしっかり検討しましょう。
偽札はマジで精巧な作りでプロでも見分けるのが難しい。政府はそこを危険視し、しばらくはお札の使用を禁止する。家にあるお札は銀行のプロ鑑定人を通してOKをもらえないと使えないということになった。
ここの偽札にまつわる政策やルールもやけにリアルで怖い。こうなったら現金の中でも硬貨が強いんだなと思った。
こんなのを見れば、まさか知らん間に財布に偽札が紛れ込んではいないだろうなとちょっと不安。
しかしなんつう設定を盛り込んで描いてんだよと思う。抜け目なく細かいM作戦の描き方だった。
M作戦を打ち破っても死ね死ね団の猛攻は止まらない。
次にはモグラート作戦で人口地震や津波を起こして日本を潰しにかかる。地中に突っ込める戦車が出れば、空を攻める戦闘機も出てくるから死ね死ね団の資本もすごい。
外交問題にも害悪介入してきて、日本の印象を国際的に下げまくり、他の国から孤立するように仕向けることもしてきた。ここまでになるといじめや嫌がらせも国際的過ぎて笑えん。
日本はヤバい国だから関わるなと他の国に思わせて貿易をストップさせれば、食い物から諸々の燃料も入ってこなくなる。その結果日本は終わるという魔の計算で攻めてくる。ヤバいって。
日本ぶっ潰しシュミレータとして割とリアルに使えそうな作品になっているのが面白いが悪趣味で怖い。
後半からはミスターKも景気づいてきて、外国からエージェントを次々呼び込むし、レインボーマンの超能力に対応出来る特殊軍隊DACを組むなどもうやりたい放題にすごい。
この大規模な悪に対してあまりにも孤独な戦いに出るレインボーマン、またはヤマトタケシの青春も気の毒。家族との時間やイケてる彼女のよしえさんとのデート時間などプライベートタイムも圧迫されてしまう。そこのただの青年としての葛藤を描く点も印象的だった。
ミスターKの部下にはイケてるお姉さんが多い。こちらの作品はヒロインに恵まれていて、当時のイケてるギャルが大集合なのである。
ド悪い軍団だが、幹部クラスには格好良くてお綺麗な姉ちゃんズがいるので目の保養になる。クソみたいな悪者組織でもそこだけは良い。
そのお姉さん達も後半になればサイボーグ手術を受けて戦闘兵器化していた。アイビームという目から光線を放つ技も使うようになり、レインボーマンもそれで殺されかける。デジコよりずっと先に「目からビーム」をやるお姉さんがいたんだ。
終盤になると魔女イグアナの母のゴッドイグアナもレインボーマンを狙ってくる。ここは個人勢で、死ね死ね団とは別口で動くから三つ巴合戦になる。
このゴッドイグアナを演じたのが、特撮の女といえばこの人の曽我町子だったのは忘れてはならないポイント。魔女姿が実によく似合う。多分曽我町子を初めて見たのもこの作品でのことだったと思う。それか近い時期に父に見せてもらっていた「サンバルカン」のどちらか。
ゴッドイグアナが出してくる怪人も見た目が変質者すぎた。
最終回になれば東京を潰すために死ね死ね団が本格的に侵攻してくる。これを受けて現地の皆さんが大騒ぎの疎開騒動になっているのも怖い。
これも跳ね除けてレインボーマンはとにかく連戦して苦労した。それなのに、それを越えたラストでも結局ミスターKを追い詰めることは出来ず、死ね死ね団も潰せていない。
レインボーマン ヤマトタケシの成長を描いてこれからも戦っていくという明るいメッセージは受けたが、それでも戦いは続くため、いわゆる「おれたたエンド」なのはしっかりとスッキリするものでなく怖さも残る。
あれだけ孤独なキツすぎる戦いをやって来たのに、最終回になってもまだレインボーマンを休ませてあげることが出来ないのは、ファンとして強めに気の毒に思う。ヤマトタケシをこの時代に生きる当たり前の青年に戻してあげたい。
でもこのレインボーマンに関しては、どこまでも灰汁とトゲがある作品としてやって行くのが正解の味付けだとは思う。それを叶えるためなら悪を消滅させてのよくあるハッピーエンドでなく、あえて渋くビターなエンドになっても良かったと思える。
終始カリスマ的ヒールムーブを決めたミスターKはしっかり憎いが嫌いなキャラではなく、むしろ良い味を出していたと評価出来る。彼の死が来なかったというならそれはそれで安心。
しかしミスターKを演じた平田昭彦といえば、東宝作品でよく見る顔だな。かつてはゴジラから日本を救った博士を演じたのに、今度は日本を潰す悪者ボスで出てくるのな。色んな役をやるんだな。うちの父もそこは気づいてツッコんでいた。
というわけで、日本生き残りをかけて戦う孤独なヒーローの話となっており、これがとてつもない熱量で見せるもので楽しかった。こんなに良い作品なんだからBDで出せよ。
ずっと面白かったが、ひとつ心残りというか、一回くらい見たかった展開が7人の化身全てが揃って戦うところ。後半になればパワーアップということで、化身2人分の能力を同時に発動出来ることが可能になる。そこまでのことは叶ったが、同時に複数人出せるのも見たかったかも。
7人全部並ぶとちょっとだけ「忍者キャプター」な風景なんだよな。というわけでそちらも父に教えてもらいました。
レインボーマンの7人の化身が横並びになれば「レインボー戦隊ロビン」よりもっとレインボー戦隊な見た目なんだよな。とまぁどの作品も良いものですわ。
本作を見た時が、特撮と交わる楽しい青春に虹がかかった時でした。私はあの日見た虹をいつまでも忘れない。
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