こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

煉獄杏寿郎、炎の青春「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」

「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」は、2020年10月に公開した劇場版アニメ。

 

 テレビシリーズで好評を博した本作の待望の続編はなんと劇場版。テレビアニメのラストで汽車に乗り込んだ一行の未来はどうなるのか、という謎がしばらく待った末にやっと解禁された。アニオリでなく、正式にテレビ最終回の続きから入る劇場版って珍しいなと思う。

 

 この映画が公開してからというもの、腐る程の人間が劇場に足を運んだという。結果、空前の大ヒットとなった。すごい! 

 公開当初からあれだけ世に騒がれ、オチを知る人間がたくさんいる中、BDを待つ派の私は遅れること10ヶ月程経過した今になってやっと見ることが出来た。こちらのBDの売り上げもアニメ円盤としては異例のヒットだったという。鬼滅人気がすごい!

 

 良い作品なので作品自体には文句がないが、BDの特典映像が別個DVDに収録なのはなんでだろう?令和になった今時まだDVDかよ。ていうかBD版買ってるんだから、おまけディスクもBDにしてよ、って強く思わずにはいられない。これはどういうことなのだろうか、なぜここでケチる?まぁ大人の事情があるのだろう。

 

 そんなわけで、やっと見れた大ヒット映画の感想を書き殴ろう!

 元々クソ暑い7月に、煉獄さんの炎の剣技と熱い生き様を見ることで、もう体の水分が放出されまくって仕方ない。面白いけど、こういった事情から夏休みに見るにはやや危険かもしれない。と最初に言っておこう。

 

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 炭治郎達一行が、無限列車に乗り込んだ先で遭遇する事件が描かれる。

 ここで一行は、柱の一人である煉獄杏寿郎と合流する。

 

 まずは「美味い!」を連呼しながら駅弁を食いあさるフードファイターモードの煉獄さんに会える。テレビアニメの時にちょっと顔を出したキャラだが、あの段階では「なんか変なヤツ」の印象しかない。で、今度も登場時には弁当を食いまくる変なヤツのイメージから入る。

 

 伊之助が人生初汽車に浮かれて騒いでいるのが面白いしちょっと可愛い。「るろうに剣心」の陸蒸気を見て興奮する左之助を思い出す。

 

 汽車は下弦の壱の鬼による襲撃を受ける。こいつはテレビアニメ後半から出てきたヤツだけど、平川大輔の高い声が映える気持ち悪いヤツというイメージは、映画を見る前からも記憶に残っていた。

 人食いに快楽を得る普通に悪者のクソ野郎だった。悪者らしい不気味さ、それでいて妙に物腰柔らかな点が気持ち悪い鬼の魅力をたっぷり引き出した平川大輔の演技はベストなものだったと思う。

 下弦の壱の戦法は、相手を心地よい夢世界に誘うというもの。この展開を見て、無限列車と夢、幻の「夢幻」がかっていると気づく。上手い構成だ。

 

 炭治郎が夢の中で今は亡き家族との平和な暮らしを見る展開にはほっこりするけど、これが結局は作られた偽物と分かることが可哀想で仕方ない。

 人間の姿で山菜取りに出る禰豆子と出会うシーンで音楽が止む仕掛けが良い。兄として切望した瞬間をしっかり見せるこのシーンには泣ける。

 幾度と無く心の中で見てきた優しい世界だからこそ嘘であると気づくこの残酷さに胸が締め付けられる。

 

 煉獄はそれまではふざけたお兄さんのイメージしかなかったけど、柱としてやっていく心を作るまでの過程が夢幻の世界で描かれることで、そんなイメージも変わってくる。煉獄という男はこういうヤツなんだという紹介を、事件にからめてスムーズに行っているのが良い。煉獄ビギナー(私含む)に優しきナビゲートだった。父と弟を愛し、強き母からしっかり愛されたことが分かる煉獄の過去にもグッとくるものがある。

 

 伊之助の夢はパーティーを組んでダンジョンに潜るもので、うさ耳禰豆子が仲間になっているし、他のメンバーも獣人化していて一気にコミカル。これだと中の人の松岡くんの事情でいうと「ダンまち」ぽい世界観に見える。うさ耳禰豆子がとにかく可愛い。

 

 善逸の夢は本当に自分に都合の良いように作られたもので、禰豆子が彼のベストヒロイン化して出てくる。これが視聴者的にもベストなもので大変萌えた。炭治郎の場合もそうだが、夢世界であることを良いことに、禰豆子に、または鬼頭明里に喋るターンをしっかり与えている点が良い。禰豆子もそうだが、鬼頭明里の声ってやっぱり可愛い。せっかくの劇場版でも唸り声だけだと寂しいので、彼女の人間としての喋りも聞けて良かった。

 

 自分の気持ち良い夢に侵入した刺客を、大きなハサミを持って追い返す善逸が描かれている。あれってクロックタワーのシザーマンじゃないのかと思えて笑えた。

 そういえば善逸は「眠りの小五郎」スタイルで攻める剣客だったので、夢世界に入ったまま覚醒を迎えなくても戦えるんだ。寝たままで雷の剣技を放つシーンの描き方がめっちゃ格好良かった。すごい良いところで禰豆子をお助けするので、禰豆子のヒーローになれそうなものだが、やっぱり間抜けなので格好良く決めきれない点が面白い。

 

 こんな感じで、テレビシリーズ同様に、緊張が続くばかりでは疲れるとうことを考慮したような落差あるギャグが入る展開が愛しい。

 

 夢から覚めるためには、何度でも自分の首を切るという炭治郎の鋼の精神力が見られた。すごい意志の強さだ。

 

 アクションシーンの凄さはテレビシリーズの頃より据え置きのもので、今回も凄まじく迫力がある戦闘が展開する。

 昔からそうだが、やはり走る汽車の中なり上なりで繰り広げるアクションシーンにはテンションが上がる。走行中列車の上でやりあうのは大体の人間が好む展開だと思う。

 

 炭治郎を刺した運転手が列車の下敷きになったことについては、死んでも仕方ないと捨て置くこと一択で臨む伊之助の言動が面白い。

 

 映画の大きな見どころは二部に分かれる。一部は乗車中の戦い、そして二部は下車後に上弦の参の鬼が攻め込んで来ること。

 強敵を相手に煉獄杏寿郎が一人で戦い抜く姿に熱い男の生き様を見ることが出来る。珍しい展開なのは、敵の鬼が煉獄のことを心身共に強者だと褒めて讃えて仲間に是非と勧誘してくること。しかも、ものすごい熱心にだ。強い鬼も惚れ込む炎の剣士の実力が見て取れる。

 

 鬼とは価値基準が違うときっぱり断る煉獄のスマートな言動は格好良い。鬼に炭治郎を侮辱されれば、炭治郎は強いと弁解し、最後には鬼の禰豆子のことも戦士だと認めてくれる。包容力のある良い先輩だ。柱たる者、部下の盾となり、戦士の生き様を教えるのは当然と考える点も好感が持てる。自分のミスを下っ端になすりつけて逃げるブラック企業上司諸君は見習ったほうが良い。

 

 上弦の参の鬼は敵だが、純粋に武の道を極める武人である点は爽やかで良い。最後の最後のまで煉獄を仲間に引き込もうと情熱を持ってスカウトする点も良かった。石田彰の芝居も良い。

 

 超人二人のバトルを見て、未熟な自分では助っ人に入れないと悔やむ炭治郎の姿を見るのが辛い。この構造を見て、ガイ先生とマダラの戦いに入って行けず己の未熟を恥じて泣くロック・リーがいるという「NARUTO」のワンシーンを思い出した。

 

 奥義・煉獄を放った後、煉獄が腹に重い反撃を食らったの見て炭治郎が悲痛の唸りを上げるシーンが印象に残る。ここでの花江夏樹の叫びの芝居が良い。

 

 大技の応酬に続き、朝陽が射すまで絶対に離さないと鬼を掴む煉獄とそれから逃げたい鬼の攻防までが描かれるバトルシーンは、息つく間が無い程に迫力満点。今の所、令和に入ってからの日本アニメ史1位の大一番がココだった。

 炎の竜まで出す煉獄の戦闘シーンは圧巻の作画だった。すごい。

 

  命を燃やし尽くして最後には笑顔で逝く煉獄の最後にとにかく泣ける。死にゆく煉獄が最後に母の姿を見るところが良い。自分を産んだという点から、母は命の始まりの地点とも言える。それを命の最後に見るあたりには説得性がある。きっと多くの命が最後を迎える時には母を思い出すのだろう。

 

 逃げる鬼に対して炭治郎が叫ぶ内容にも心掴まれる物がある。鬼に有利な夜の世界で戦っている人間の都合があるのだから、せめて逃げるなと叫ぶ炭治郎に泣かされるものがある。

 

 自分が死んでも捕らえられた200人をひとり残らず救出すればこちらの勝ちという価値観に深いものが感じ取れる。

 

 煉獄の死を受け、炭治郎、伊之助、善逸がボロボロ泣く後半シーンは可哀想。気落ちする仲間達を鼓舞する声を上げたのが伊之助だったことが意外。シリーズ始まって以来、伊之助が一番まともに見える良いシーンを後半にぶっ込んできた。

 

 頑張って壁を越えた先にはもっと大きな壁があり、すごい人は自分よりもずっと先にいる。目指す地点の遠さと己の未熟を痛いほど実感して涙する炭治郎の姿を見て、色んなことを考えてしまった。人生ってそんなものだよな。

 

 2時間の映画の中で、煉獄のイメージがただの変なヤツから「すごい男」にガラリと変わるマジックが楽しめた。

 熱い物語展開の中に見えるメッセージ性に泣かされもした。めっちゃ泣いた。

 

 最後に流れる主題歌の「炎」の意味するところは、煉獄への鎮魂曲だった。本編を理解して聴くと、一段と味わい深い楽曲に仕上がっていると思えた。

 

 声優陣の芝居、劇伴も大変良く、全体的にクオリティの高い作品だった。これは見る価値があったと思う。

 BDでのオーディオコメンタリーでは、俳優陣の芝居へかける想いも聞けて良かった。

 

 厳しい列車旅の終わりになったが、ここから炭治郎達がいかに立ち上がっていくのか、その続きが見られる次回作が楽しみだ。近々続編がテレビ二期としてスタートするので、そちらも楽しくチェックしよう。

 

 

 

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