こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

明るい終末アニメ「人類は衰退しました」

人類は衰退しました」は、2012年7月から9月にかけて放送された全12話のテレビアニメ。

 

 これは本放送を見ていたのだが、かなり前のことなのでかなり忘れている。で、先日久しぶりに見たところ、とても面白いと感じた。

 

 久しぶりに思い出して視聴きっかけは、原作の田中ロミオ氏がシナリオを手掛けたギャルゲーを最近遊んだから。

 

 これを見て、2012年という最近のようで懐かしい世界を回顧すると、当時は今ほど異世界ファンタジーアニメ界が無法地帯ではなく、お行儀良くまとまっていたのだなと思えた。この作品もファンタジーだが、昨今乱立する変な作品群と違って品があり、中身がしっかりしている。昨今は放送数が増え、その分変なアニメも増えたよな~って思ってしまった。

 

 原作を手掛けているのは、有名ライターの田中ロミオ氏なので、一見緩いファンタジー世界に見えても中身は割と骨太である。昨今流行りのなろう系とかをバカにする訳ではないが、やはりプロが書いている以上ものが違う。これは高等文学であり、それとなく教養のある作品だと思う。

 

 

人類は衰退しました Blu-rayBOX

 

 人類が衰退、つまりはかなり数が減った状態にあるちょっと先の未来のお話が語られる。

 人類が衰退した後に栄えた次なる命が、だいたい10センチくらいの妖精さん。徐々に妖精が増えて、それまで多くいた人間達の人口を超えつつあるという特殊な設定の面白い話。

 

 主人公ヒロインは、妖精と人間の仲を取り持つ調停官という、人類が衰退したからこそ設けられた謎の役職についている。そんな彼女が妖精と関わる中で起きるあれこれのかなり不思議なエピソードが複数展開する。そんな内容のアニメになっている。

 

 妖精が普通にいるというファンタジーベース設定となり、加えて内容としてもタイムスリップしたり、時間ループしたり、加工鶏肉やトーストが歩き周って喋ったりと、やはりファンタジー展開が濃く見られる。 

 しかし、その中に程よく毒っ気の効いたブラックユーモアやシニカルなメッセージ性を盛り込んだ点がピリリと良い刺激になっている。

 ファンタジーと現実世界に通ずるちょっとしたネタの割合が程良い作品になっている。

 

 主人公の名前は「わたし」で、他の登場人物も助手、祖父、Y、巻き毛などなど、固有名詞は伏せてあだ名、役職などがそのままキャラ名になっている。夏目漱石の「こころ」みたいなものかな。

 こころと言えば、主人公の友人にKという人物が登場するが、こちらではわたしの学生時代からの友人Yというのが出てくる。このYが、一度は衰退して人類の記憶の彼方に葬り去られた腐女子文化を掘り起こし、同人誌ならぬ同類紙を作り、コミケも復活させる内容がかなりぶっ飛んだ内容で面白かった。可愛い銀髪ヒロインのYは、生粋のBL好きである。

 加工鶏肉が侵略行為をして来る話など、ユーモアセンスとしてもなかなか強いものを持っている作風となっている。

 

 後半のわたしの学生時代のエピソードで登場した「のばら会」のメンバーが相当闇の深い人物達ばかりで面白かった。危ない性癖を持った女子達と愉快な学園生活を送ったわたしの過去が分かるエピソードには笑える。

 特にわたしのことを「お姉さん」と呼んで慕う巻き毛ちゃんが、実はヤバヤバクレイジーレズ女だったことが分かるところは笑った。狂気性を隠し持つ巻き毛ちゃんを本気で演じた金元寿子の演技が大変良かった。

 

 本作の良さは、何よりも主人公のわたしが可愛いということ。

 ピンク髪でお目々ぱっちりのザ・メインヒロイン感があるのだが、意外にも程よく毒っ気がある図太いキャラ性を持っている。現代女子ならこのくらいが丁度良いし、もう人類も衰退してしまった未来の女子なら尚のことこうあれば好ましい。

 若者にしては冷静沈着であり、物事を一歩下がった地点から冷めた目で見るクールさもある。結構腹黒かったりもする良い性格の女子。それでいてお菓子作りが趣味で得意にもしているという点は萌える。

 この主人公ヒロインに好感を持てる。程よく冷めている点が良い。

 各話でわたしの衣装が色々変わる点にも注目。おしゃれさんで服のセンスが良い。

 

 主人公のわたし視点で物語が進み、モノローグと会話を含め、彼女のセリフがかなり多い。演じるのは中原麻衣ということで、彼女が一杯喋ることで喜ぶ中原麻衣好きはまず見ておいた方が良いと言える作品になっている。私も彼女のことは「おねがい☆ツインズ」の頃から推しているので、芝居がたくさん見れたのが良かった。

 

 妖精さんの存在もやはりキーとなる要素で、たくさん登場する彼らの存在にも注目出来る。

 高度な知能、技術を持っているようで、どこかアホっぽくもある愛すべき存在に描かれている。基本的には菓子を与えていればこちらに友好的に接してくれる気の良いヤツらとして描かれている。皆常に口が開きっ放しで喋る。妖精さんのデザインが大変愛らしくて良い。これは子供にウケるグッドデザインだと思う。お菓子と楽しい事が好きという快楽に素直な生き物で、それらが満たされるとポンポン勝手に数が増える。とにかく不思議でユニークな存在だった。

 

 本作はクリエイター共が結構やりたがる時間軸シャッフル展開がなされる作品になっている。各エピソードで時間軸の前後がある。

 加工鶏肉が暴れまわる一話はインパクト大なもので、記念すべき一話に持ってくるにはドカンと景気の良いものだったと思う。

 一話の段階では、色々あった末に短髪になったわたしが登場。メインヒロインは蓮舫議員くらいのショートカットで行くのかよと一瞬戸惑ったけど、後に髪の毛が復活してふわふわロングに戻ったので安心した。

 

 わたしの変わり者の祖父を石塚運昇が演じているのが懐かしい。2012年ならまだ元気に仕事をしていたのだな。ちょっとの移動にチャリオットという仰々しい乗り物に乗ってくるのが面白いおじいさんだった。

 ゲストキャラ、たくさんいる妖精さんの声は、かなり有名な声優で固めている。テンションとしては低めで地味に見せていく作品だが、声優が大変豪華な点が良かった。

 

 OP曲「リアルワールド」は楽しい一曲で好き。nano.RIPEのクセのあるボーカルが映える良き一曲になっている。

 OPアニメでわたしと妖精さん達が踊る衰退ダンスは当時ぷち流行りしたはずだと記憶している。改めて見てこのダンスが可愛い。

 

 綺麗にまとまった作品で、各エピソードには深く考えさせられる点もあれば「は?」って思えるバカみたいな話もあって面白い。

 風景やキャラ絵がとても綺麗で、とにかくキャラ絵が可愛いのが良い。

 当時は何となく見ていたけど、今見てみると非常に良い作品ではないかと思える。これはもっと評価されて上に上がっても良いものだと思う。

 かなり前の作品だが、二期とかあればとても嬉しい。

 

 そして思う。放送当時の2012年から約9年間が過ぎ去った今現在、人類の衰退具合はどう変化したのか。答えは我々人類が持っている。さぁ我が胸に問おう。

 

 

 

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