こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

2022年のアニメ感想(7月~9月)その9

 日本の役者はレベルが高いと思う。アニメやゲームが好きな私は、それらの作品の中で日常的に役者の芝居を楽しんでいる。出役俳優の芝居ももちろん良いが、趣味的にボイスオンリーで勝負する声優の芝居の方をたくさん楽しむことになる。私は声優が大好きなのだ。

 ジャパニメーションをしゃぶり尽くせば、アニメと同時に良き声優の芝居も楽しめる。アニメと芝居はセットで楽しむに限る。

 

 で、声優って本当に凄いし偉いって思うのだ。なんであろうが与えられた役は必ずやりきる。たかがアニメだろ?と軽視するヤツもそりゃいるだろうさ。でもそこでも役者は手を抜かないのだ。

 

 昨今は一週間に放送するアニメの本数が非常に多くなった。全体数が増えると、自然とハズレ作品を見つけちゃう確率も増えてきてしまう。昨今はダメなアニメも少なくない数生まれている。

 

 そこを崩されたらどうしようもならない原作からサボっている、原作が大丈夫でも絵をサボっている、そんなクソアニメに続く道が完備された困ったプロジェクトもある。これには時間や金の都合も関係するのだろうが、それにしてもやっつけ仕事が過ぎて酷いという作品が短いスパンで上がってきすぎる。

 

 原作を見て、台本を見て、勘が鋭く働く場合には制作会社を知った段階からも、次に自分が出る作品はクソになる。そのように危機を察知したことがある声優も多くいるだろう。

 シナリオも絵も死んでいるクソアニメをたくさん見て来たけど、その中で芝居までが終わっていたという作品はそうそうない。日本には良い役者がいるので、よっぽどの手抜かりでもない限り芝居だけはちゃんとしたアニメというクオリティに押し留めることが出来る。

 だから声優って偉い。クソアニメなのに無駄に声優の芝居が良いパターンは結構ある。彼らは内容がどうであろうが、もらった本の中にある自分の役をしっかりとやり遂げるのだ。その姿はまるで、沈む船の上であっても最後まで戦う海の戦士ようだ。声優は素敵で格好良いのだ。

 

 そんな素晴らしき声優達の芝居が見れた今期アニメをプレイバック。

 

 

リコリス・リコイル

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 おおっ!今年の大型新人枠だ。一貫して秀逸な作りのオリジナル作品だった。忙しいオタクは縮めて「リコリコ」と呼ぶらしい。

 

 軽くネット検索すると、今期作品の中では世間的に大変ウケが良いと分かる。がしかし、そこはそもそも評価者の身元や鑑識眼の質も怪しいので、鵜呑みにはしない。己で全話見た物しか私は推し上げないのだ。そんな私が色眼鏡無しの究極視力を誇る裸眼で全部見たところ、多くから良い評価を得るだけの事はある。しっかり良かった。

 

 これまで面白いを享受しすぎたゆえ、面白いの新星を素直に受け取っても手放しで楽しめないというある種の壁にぶつかった状態だった。快楽追求者なら皆がどこかでこの手の壁や天井にぶつかり、今一度「楽しいとは?」を自問する段階に入る。そこから抜け出た者が真に楽しいの天才だ。私は抜けたぞ。

 そんなやり手オタの私に、新しくも心地よい風を運んでくれた良き作品だった。ありがとう。

 

 まずはキャラが良い。まじでヤバいくらいパーフェクトに可愛い。メインのバディヒロインのビジュが良すぎる。キービジュオンリーで美が満開の綺麗な世界だと分かったので安心して突入出来た。

 キービジュから不安になる作品も多いので、ナビゲートの最初手となるココで合格を出すのも何気に難しいのが現代アニメの事情なのだ。

 

ガンスリンガーガール」「ノワール」あたりで開拓した美少女がバンバン銃を撃つのが楽しいという我が趣味にマッチする秀逸なバンバンアニメだった。このガンアクションがガンガンに格好良いのだ。学生鞄が実はシールドだったというのも格好良い。見た目が制服美少女なのにやり手のヒットマンという一見ミスマッチな要素にハマる。

 

 メインのちさと、たきなは当然だが、敵キャラも含めた周囲のキャラが皆生きている。これが素晴らしい。キャラが生きているなんて作家ならそう設定出来て当たり前と思うだろうが、それが出来ない者も少なくない数いる。つまり簡単な事ではない。だからキャラが死んでおらず、皆が活き活きしているだけでも高く評価出来る。それを強く感じるだけで逞しいスピリットを持った質の高い作品だといえよう。

 メインの二人よりもややアダルトなミズキ、ずっとチビのクルミと、ヒロインは年齢と属性が良い感じにバラけたベストな布陣となっている。

 ここでも久野美咲がチビ役で出ている。ホント、今期はチャンネルを合わせた先で彼女と出会うことが多い。良い事だ。

 時には逞しいおっさんも楽しみたい。そんな珍味好きになっていく段階を経た者には、ごつくて格好良いおっさんのミカが救いの一枠となる。ミカも良いぞ。

 

 キャラ同士のユニーク且つ軽快テンポな会話劇も良い。これは語彙が豊富でトークスキルに長ける者でないと作れないセリフ構成だ。役者の問題でなく、そもそもセリフが下手に作られたアニメに触れたことも多くあることから、この点にも注目してしまう。

 特にちさとのすっ惚けたキャラ性が更に活きるコミカルなセリフ運びは聴いて爽快なものだった。ちさとめっちゃ可愛い。

 

 ちさと役の安済知佳の芝居はさすが。「ぐらんぶる」という終始ふざけたアニメ(←大好きなので悪口でなく褒めている)のツンデレヒロイン役で見た時から素晴らしいと思っていたが、ここへ来てまた違う方向の芝居で弾けたな。

 相棒のたきな役の若山詩音も良かった。ボソボソ言っていじけた感じのキャラがマッチしている。

 思い返すと何気にダイナゼノンな二人が主演コンビを組んでいた。あちらの作品で若山詩音が「なんとかビーム」と言っていたのは未だにウケる。リコリコでは「さかな~」て言ってる間抜け可愛いシーンが最高に良い。

 

 シナリオはガンアクションらしく硬派に魅せる部分がメインだ。陰謀渦巻く大事件を解決に導く美少女達の戦いに燃えて萌える。火事も起きればその後は木々で生い茂って結果オーライな出来だ。

 こんなに可愛いギャル達が出てくる世界なのに、1話目冒頭では変にねじ曲がった謎のビルが出てきて、世界の治安が乱れているとすぐに分かっちゃう。萌えと不穏が同時にインプットされる意外性ある導入が良かった。

 

 松岡くんが最大限サイコパスさとヒール感を出して演技に臨んだボスの真島は、怖いけど良いキャラをしていた。後半の真島打倒までを描く戦いは怒涛過ぎて楽しかった。相棒のピンチに壁をぶち破って参上するたきなが超格好良い。

 

 永続する緊張感の中にあれば我々ポップな若者の心は簡単に疲れてしまう。そこを考慮した良い塩梅での箸休め、またはおふざけエピソードもありで楽しい。

 たきなのパンツ事情を描く回がお気に入り。うら若き乙女が色気ゼロの男物パンツで仕事をしているとか国民が揃って萎えるだろうが。スカート下にハーフパンツを穿くことで皆を萎えさせた御坂美琴の青春を思い出す。 

 たきな考案の喫茶店メニューの巻きグソデザートには受けた。無駄に料理作画が良いことで、余計にソレに見えて笑えた。確かにコレはコレでSNS受けすると思う。

 

 ちさと、たきなの凸凹コンビが出会って時間を経てどんどんラブラブになって行く展開が一生良い。純粋なユリ好きにもお勧め出来るってものだ。女の友情が素晴らしい。

 美少女なんだけど、どちらも男前のテンションなんだよな。言動がイケメンなのも見ていて気分が良い。時代はイケメンで心も格好良いギャルを求めているのだ。ヒロイン達は可愛いけど格好良さも持ち合わせている。

 ちさとがたきなを抱き上げるラブラブしたシーンが可愛い。最終回では海でもやっていたし。

 

 OPでもEDでも二人が色んな服を来ているシーンが見れて萌えた。OPアニメの最後で二人が仲良くケツをシバき合っているシーンも和む。これを見て自分のケツもシバいて欲しいと願った紳士諸君の事を私は決して罵倒しない。

 毎度のEDアニメに潜り込んでいくタイミングが良過ぎる。良い所で「花の塔」のイントロが来るから曲にも心を掴まれる。どっちの曲も良かった。今も「花の塔」を聴きながらコレを書いている。

 

 良き伝説として綺麗に閉じることが叶う良き最終回だった。これはこれでこのまま綺麗に伝説として心に残しておきたいことから、人気を得ても敢えてこれ以上先をやらないで欲しい。

 

 ジャパニメーションはまだ死んでいない。その唸りを上げたかのような勢いある良作だった。

 そんな感じのたっぷり愛せる作品だった。あの巻きグソスイーツはイベントでリアルなヤツも作れば良いんじゃないかなって思う。

 

シュート!Goal to the Future

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 これが第2の蒼き伝説か。とんでもねぇな。

  今期の怪物ネタ枠である。クソアニメハンターとしてはかなり満たされる。

 

 長い歴史と実績を持つ伝説の漫画と聞いている。我が家に本作のスーファミソフトがあるけど全くやったことがない。

 スーファミの頃からもあった往年の名作なのに、新章はまさかのネタ枠で攻めることになっていた。え、コレでいいの?オリジナルの作家に許可を取っているのか?と序盤から不安になる展開が襲ってくる。

 

 主人公の辻がウジウジして暗いし、第二のキャラの風間はそこと対照的にうるさすぎる。

 風間の情緒はどうしたんだ。一生懸命な良いヤツなんだろうけどバカみたいに見える。

 

 なんか最初からお話もキャラも絵も怪しいと思っていたが、ヤバいアニメとしての決定打を決めたのは、辻の幼馴染の小久保の登場にあった。こいつやべぇ。普通にキモイしそれ以上に怖い。辻に対してのヤンデレな態度がもうヤバい。

 小久保が登場した時点で、それまで見ていた皆さんがなんとなく抱いていた不安が確信に変わっただろう。そう、これはネタアニメである。そりゃ辻のシュートも入らなくなるわけだ。

 小久保の試合シーンはマジで笑った。演じた土屋神葉を高く評価したい。

 

 主人公の辻を演じた小林千晃は、今期だと例の賢者枠に続いて二つ目のネタ枠主演となった。せっかくの主役なのに引きが悪いな。まぁ考え方によっては美味しいのだけど。

 

 第3のキャラの黒川だが、こいつもとんでもない曲者で、実は風間ラブのBL要員った。なんだこれ。辻、風間、黒川で三角関係が始まったぞ。暗黒展開だな。

 この3人の揉め事の要素は全く予想しないもので意外性はあったが、サッカーにコレはいらん。

 BL三角関係騒動はネタ要素だったけど、風間と黒川の確かな友情が見えた展開だけは美しい。

 

 他にも基本的に毎度ふざけていて笑える。サッカーアニメなのにずっと笑えたというのはおかしいが、まぁ笑えるだけ良いってもの。

 風間、辻が二人でボールを蹴って二人でヘディングする試合シーンは面白い。

 梅原裕一郎が良い声で演じるクールなコーチだけはまともと思いきや、こいつも実はふざけている。別にいらなかった合宿回でそこのところが見えた。この回は作品の品位を落とすものであったが、でネタ要素としては美味しい。

 

 そもそもの話だが、あんまりサッカーをしていない。同期放送のアオアシがいかに優秀なサッカーアニメなのかがよく分かる。

 真面目にやって下手くそなのか、狙ってのネタ枠に作っているのか、どちらにも取れる間の完成度なのにウケる。

 

 最終回は結構超人サッカーをしていて笑えた。超人どうこう以前に普通にキモコワい小久保の暴走も面白過ぎた。辻のベッドを占領する嫁枠アピールで最後までヤンデレキモコワオモロサッカーマンぶりを見せていた。

  今思えば小久保のキャラ性って天才的アイデアだったのかもしれない。幅広い価値観に触れさせることで子供を感性豊かにを育てるのに向く現代においても、ここまでのハイブリッド超人なお子様はまず出て来ないだろう。

リコリス・リコイル」の素晴らしき最終回を見た後でこの方向性の全く異なるもう一つの素晴らしき最終回だからな。同じラストでもこのテンションの差よ。そこに笑える。

 

 ネタアニメだけどこれは愛せるバカさがあって私は好き。なんだかんだで変なキャラ達にも愛着が持てる。来週はどういうネタ要素があるのかと何気に放送を楽しみに待つ日々が続いた。

 迷作中の名作という出来に落ち着いた。狙って取れるポジではないのでこれはこれですごい。 

 

 話題になったEDのやる気ナッシンクネクネダンスからの「ア~ン」もマジウケる。

 

  無いとは思うが2期来ないかな。来たら面白いし絶対に見る。

 

Engage Kiss

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 今期はバトルヒロインが豊作である。

 戦場を駆ける可憐な一輪花を愛でるのが生きがいな人間は私だけに限らず地球の上にわんさかいることだろう。というわけで、可愛い子ちゃんが活き活きとバトルするこの作品は毎週の楽しみとなった。リコリコと本作は戦う女子が格好良い週末の良質アニメだった。

 

 まずは主人公青年のシュウくんに注目。悲しき運命を背負う楽しい紐男である。紐男を受け付けないという寛大さの足りない人間にはキツい一作かもしれない。こういうダメな男がモテるとは言わないが、少しくらいダメな男が良いという女は絶対に滅びず一定数がいつまでも生き残る。それが世の真実。

 そんなダメンズハンターのキサラ、アヤノの華やかなヒロインズが、シュウくんを真ん中において女子特有のバチバチをやり合うラブコメ展開が楽しい。

 

 キサラの献身的かつヤンデレな要素、アヤノの面倒見の良い健全なエロス持ちな要素、どちらも捨てキャラになるはずのない特大の魅力があって良かった。マジ可愛い。

 ピンク髪ヒロインならそれだけで問答少なく食いつくのが人として当たり前のリアクションなので、その点からはキサラが気になる。

 しかしアヤノのツンツンしてるくせに結構チョロインで可愛くて萌える感じも良い。Lynnのツンデレ芝居はやはり良い。「ぼくたちは勉強ができない」のツンデレ先生の芝居でハマった声優である。あの先生感も出たアヤノの芝居はとても良かった。

 ツインヒロインのどちらが良いのかで楽しい脳内会議が捗る良き作品だった。

 

 ここに遅れて合流する戦うシスターヒロインのシャロンもすごく良い。シスター枠はやはり癒やし。 

 後半には闇落ちした妹のカンナが登場。最終回で正気に戻ったはいいが、他の女子とシュウお兄ちゃんを取り合う新たなラブコメ要員になった模様。妹が追加したことでもっとややこしくなるシュウの青春も見たかった。

 

 キサラ役の会沢紗弥は去年に放送した「大正オトメ御伽話」のメインヒロインで初めて知った。あちらでも夫に尽くす良き乙女を演じたが、こちらでは尽くすは尽くすでも薄幸な女の負の感じもありだった。同じ尽くす女の芝居でもテンションの明暗が分かれるんだな。それぞれイメージの異なる良き芝居だった。

 

 契約悪魔とのキッスから始まる物語なら同期放送作品のヴェルメイさんもそうだが、同じ設定でも軍配が上がったのはEngage Kissの方だな。

 

 ご機嫌なアクションが楽しく格好良い。回を追うごとにシュウの過去を含めた世界を覆う謎が解明されていく。シナリオの作りとしてもかなりまともな出来で大きな文句がない。

 

 OPで誰彼マジスクランブルって言ってる歌は、一人で歌うとかなり疲れると思う。

 

koshinori.hatenablog.com

 

 

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