こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

2022年のアニメ感想(7月~9月)その14

 

 

5億年ボタン【公式】~菅原そうたのショートショート

TVアニメ 5億年ボタン【公式】 Blu-ray 全話BOX 初回限定特典付き

 

 テロップのどこを見ても「菅原そうた」の名前がある。彼の仕事量がとても多い作品のようだ。

 この作品なのだが、はっきり言って素晴らしい。それだけに仕掛け人となった菅原氏の仕事は偉大。

 

 一見すればほんのりとクソアニメ感もあるものだが、決してそうではない。クソアニメと完全に異なる点は、全編に渡り徹底して思考を止めないこと。

 よくあるクソアニメはシナリオ的にもそう。それに対して使うまでもないからってことで見ているこちらまでがそう。なにがそうって、ほとんど思考を停止してしまうのだ。

 この作品はフザけている部分も多くあるが、根底にはインテリ脳がある。バカでは絶対にたどり着かないネタから作ったバカでは創造不可能な物語になっている。

 

 ここに安っぽい謎のボタンがある。押したら謎空間に飛ばされ、死ぬことすら許されない状態で孤独に5億年生きることになる。そうすればそれまでの記憶を消した状態で現世の時間に戻ってこれて100万円もらえる。つまり記憶や感覚の都合で言えば何もしていないのに一瞬で100万がゲットできる。では、あなたはこの怪しいボタンを押しますか?

 そんな問いかけから始まる物語。テーマは硬派な思考実験である。

 

 これは興味深い。そんなものありはしないから考えるのがアホだと思考を拒否してしまう自分もちょっとだけいるのだが、残りは押すこと、押さないことで何がどうなるのか興味深々な想いで一杯だ。よくもこんなしょうもないようでいて、反面面白いネタを考えたものだ。

 少し通ずる部分がある「シュレーディンガーの猫」の実験ネタを初めて知った時と同じような感想が出てくる。あれも半分はホントバカらしい。考えるのが無駄と思っていたが、やはりまた半分ではただ面白い発想だと感心してしまった。

 

 思考すること。それは脳で行う生命の呼吸である。それを嫌って拒否するインテリに不向きな人間も一定数いる。そういう連中には、ただのおかしくてつまらない時間で終わるってしまう。でも私は思考し続ける事を本能で止められない人間。加えて思考することが好きである。だからこういう変なアニメにもはまり込んでしまう。

 

 その昔「百年の孤独」という色々とんでもない面白い本を読んだことがある。だがこの実験は、100など比ではない5億年もの間、何もない場所で孤独に生きることになるのだ。マジで暇すぎるだろう。怖い。

  5億年を過ごしたトニオの物語を追えば、確かに長生きして楽しみたいとは思うが、その期間は長すぎ。そして孤独は辛い。体は健康でも心が弱って内面から死んでいく。想像するとめっちゃ怖くなってきた。

 赤毛のアンは、想像は孤独に打ち勝つための強き友達だと言っていた。まさにそれだな。何もなく一生続く隙間時間を耐えるため、トニオが想像をフルに働かせる場面も見られた。

 5億年も何もないことで逆に辛い目を見るなら、普通に辛い想いをしながら1年位のバイトで100万円貯める方が良いとまで思えた。

 

 一方でジャイ美の見解では、ボタンを押した後に謎空間で苦しむのは自分であって自分でない。何があっても覚えていなくて、感覚として自分は元の世界にいるまま一瞬で100万円もらえてハッピーなだけということだった。これは違うようで、感覚的にはそれであっているようで……。

 うむ、とても不思議だ。人によって5億年ボタンの考え方がまるで違っている。何だか面白い。

 

 色々と思考する過程が楽しいものだった。

 何を考えてもそんなボタンは無いし、実験時間として5億年を使うことは全ての理に反するもので無理。ありもしない仮定で話を進めるのがアホらしいと思いつつも、話に乗れば面白い。これだから日々の生活において思考を絶やすことは出来ないのだ。人が死ぬ時ってのは思考を止めた時と見たり。そんな悟りが得られる怪作だった。

 

 不気味な謎実験に挑むのは、トニオ、ジャイ美、スネ子の愉快な三人。

 ジャイ美、かわええやん。みもりんこと三森すずこの頭緩そうなギャル声は良い。 

 可愛いヒロイン達だが、絶対にジャイアンスネ夫から来ている名前だろうに。そしてトニオだけ顔がどうした。普通にキモイ。キューピーちゃんの出来損ないみたいな記憶に残る異形の顔面だ。夢に出てきそうな顔だなというのが第一印象だったが、その通りで昨日の夢にしっかり出て来やがった。

 

 私はこのアニメが好きだ。真面目な思考実験の内容、その他ふざけたネタ要素含めて素晴らしいものだと思っている。でもね、普通に変なアニメなの。こんな変なアニメに出てくれるだなんて野沢雅子氏やみもりんは偉い。

 その他にも出てくる声優が無駄に有名人ばかり。

 

 井上博士の小難しい様々な理論は素人にとって荒唐無稽が過ぎるものだが、聴けば結構面白い。

 人類が自分の世界だと思っているのは、さらに天上の世界にいる神によって作られたプラモの世界なのでは?という世界プラモ論はそうだと怖いが面白い。

 それがマジだとすれば、創作物に対してブログで感想を書いている私がいるこの世界もまた、誰かの創造世界であり、私の事を天上より眺めて楽しんでいる者がいるのかもしれない。

 自分の棲む世界が誰かの産みし作中作に過ぎなかったとしたら、それが分かった時に人は何を思うのだろう。

 不気味だが、各世界にいる者は自分の世界の外の事を知る良しが無いのだ。妄想するほどに結構怖い。

 

 おかしなCGキャラが世界の理をラップで披露してくれるカオスコーナーもあり。これも不思議な気持ちで聴くことになる。

 本編ラストにはキャラの中の人で行う大喜利コーナーも楽しめた。これは「てさぐれ部活もの」シリーズのようなカオス展開。

 

 う〇この妖精のう〇こちゃんというキャラが可愛かった。う〇こちゃんのお父さんが真っ赤でムキムキのドラえもんみたいになっているのも笑える。色んなキャラの元ネタはドラえもんから引っ張っていたのか。

 今期では、ドエロ奴隷アニメにて濡れ場をたっぷり演じた三上枝織が、こちらではう〇この妖精を演じている。なんとも数奇なことに、ネタなヒロインを2連発で引き当てたな。

 

 OP、EDそれぞれの主題歌がこんなアニメな割には格好良い。毎度のEDのキャラ達のダンスも良かった。

 

 こればかりは見る人をすごく選ぶ曲者アニメだった。私のような者から見れば大好物。今期の傑作だと思う。

 またジャイ美、スネ子に会いたい。でもこれに出る声優達は心臓が強くないと無理だな。声優達にかかる心臓の負担はデカいかもしれない。出たくない人はマジで出たくないと思う。

 

カッコウの花嫁

カッコウの許嫁(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 春から2クール分を駆け抜けた。結構楽しめた半年間だったな。

 

 エリカ、ひろの同級生ヒロインにいまいち萌えない。可愛いし良い子達ではあるけど微妙に面倒臭そう。エリカの独特のノリには掴めないものがある。

 ひろは良い感じに何を考えているのか謎なヒロインだと分かってきた。その点は楽しめた。

 こうなると妹ヒロインから義妹ヒロインに昇格した幸の完全なる一人勝ちだな(全部私の中で済んだ勝ち抜き戦)。

 

 ホテル王の親父が、兄妹でないと分かった以上、幸も攻略対象に入るんだぜと凪くんに教えてくれたのは良きアシスト。妹とおにぃの関係性に加えて男女の事情が介入することから、凪と幸の心にちょっとしか変化が出るようになる。そこにワクワクする。

 1クール目を終えた段階で幸が一番推せると分かり、2クール目からは幸のターンに集中して楽しんだ。凪くんはもう幸一択で行ってくれ。

 

 前々から思っていたが、凪くんは近年稀に見るモブ顔主役だな。中学の同級生によく似た顔の男子がいたのでなんだか懐かしくなる。

 

 2クール目からはひろと幸がガッツリ絡むことになり、3大ヒロイン揃い踏みのエピソードが楽しめた。凪くんを間に置いた状態で3人ヒロインの心理的攻防戦が見えたり見えなかったりする。美女に囲まれる凪くんの青春が暴れている。

 

 これからも凪くんとトリプルヒロインとのワクドキ男女関係は続く。という完全なるオチには行きつかないエンドになっていた。ラブコメ的「おれたた」エンドかな。

 二期をやろうと思えばできる感じなので、いつかやろうってんならその時はチャンネルを合わせてやろう。

 

キングダム 第4シリーズ

TVアニメ「キングダム」著雍攻略戦 Blu-rayBOX

 

 後半クールも面白かった。というか最初は1クールで終わりと思っていたので、連続2クールだったのに驚き。そして嬉しい。

 

 ここから動き出したキーパーソンが太后とロウアイ。急に出てきた冴えないロウアイについては「マジで誰やねん」と思った。新しい国を作って嬴政達にぶつけて来ることで、政治的にも武力的にも厄介な抗争となった。思った以上にとんでもない国単位での衝突になって焦る。

 

 登場初期には凡夫に過ぎなかったロウアイが、太后の傍にいることで徐々に漢へと成り上がっていくサクセス性も見所だった。段々コイツのことが好きになれた。最後は残念なことになったが、生き様にスピリットを感じる憎めないキャラだった。

 

 嬴政が良き王、良き父として大成していく姿に感動出来る。こいつ、本当に偉くなったな。鼻垂れの頃から知っている幼馴染が国民栄誉賞を取るまでになったのを傍で見て感動するような想いだ。そんな関係性の人間はいないのだが。

 長らくお仕えした嬴政の出世を喜んで感涙する昌文君の想いは確かに分かる。そのくらい加冠の儀での嬴政の姿は逞しく神々しく見えた。

 

 太后呂不韋の二大ボスを相手取って嬴政が知恵と勇気で大立ち回りした。印象に残るのは、このメンツが揃うことで漂う緊張感よ。一緒にいたくない。

 めでたい加冠の儀の裏では、ボスキャラ同士が全面衝突する政治的駆け引きが展開し、会場の外では大乱戦が勃発。中も外もすごい事になっていてずっと見所が続く。

 

 静かなる昌平君が激しく動き出した所には「そうきたか!」と驚いた。彼のアシストがあってこそ呂不韋の悪の尻尾を掴むことが出来た。戦場を駆る昌平君の勇姿もそうだが、演じた諏訪部さんも格好良い。

 

 後半で描かれた嬴政、呂不韋太后が揃っての会議シーンには頂上決戦の緊張感があった。

 武力で太平を掴む嬴政、金の力で太平を掴む呂不韋、ぶつかり合う二人の主張をしっかり聴かせる展開には見応えがあった。それぞれ組織の頭を張る人間同士のレベルの高いやりとりだった。

 

 嬴政、太后のかなり複雑でねじ曲がった親子関係に切り込んで行く展開も印象に残る。

 太后が子供の処刑は勘弁してくれと頼み込むシーンには息を呑む緊張感があった。怖くてムカつく女の一面もあったが、その人生にたっぷりの悲哀を背負った女でもあるんだよな。そう思うとドラマをたっぷり持った魅力的なキャラにも想える。

 実は呂不韋との間にもラブの物語を持っていた太后から目が離せない2クール目だった。

 

 呂不韋太后をねじ伏せた嬴政の出世ぶりは素晴らしい。中華統一へ向けて本格的に動きだす嬴政と信の怒涛の青春がこの先には待っている。続きも楽しそう。新六将は誰なのかという問題も面白い。

 最終回では媧燐将軍の進路に大きな変化が起きそうだと分かる。この食えないデカ女将軍が何をしでかすのかも気になる。

 

 いつか5期もやって欲しい。それまで頑張れNHK!次には弱ペダと進撃の巨人のアニメをしっかり頼むぞ。

 

世界の終わりに柴犬と

世界の終わりに柴犬と (MFC)

 ナニコレ、オモろい。

 世界の終わりを迎えるにあたってそれまでのお共を誰にするかの選択は個人の自由。例えそれが柴犬であっても自由な選択の範疇として何も問題はないのだ。

 そんなわけでギャルと犬と楽しむ終末紀行である。

 

 いわゆる終末系なのだろうけど、JKと犬が愉快におしゃべりしてかなり緩い。

 カロリー控えめに犬もご主人も淡々と話すテンポが心地よい。 

 

  しっかりアニメではなく、漫画のコマをそのままに映してキャラが喋っているみたいな変わった手法で見せている。

 可愛いJKのご主人様は内田真礼が演じている。今期彼女が演じたもう一人のメインヒロインのヴェルメイさんよりこっちのJKの方がずっと可愛い。内田真礼はしっかりと可愛い女子の芝居が出来る役者なんだなと再確認出来て安心した。

 

 犬が犬のくせして人間が聴いても「ほほぅ」と感心してしまううんちくを割りと多く語ってくれる。バカっぽく見えて教養もそこそこにある一作だった。

 

 世界の終わりまで楽しんでいたい結構お気に入り枠なアニメである。

 

koshinori.hatenablog.com

 

 スポンサードリンク