「うずまき」という怪奇作品を知っているだろうか。この作品、はっきり言ってイッちゃってる。もちろん良い意味でね!
本作はあの有名な伊藤潤二先生が描いた漫画作品である。
ウチの親が伊藤潤二ユーザーなので、作品の名前とカルト的にヤバい人気があることだけは知っていた。
こちらの作品は実写映画にもなったというし、レトロゲームユーザーにはお馴染みのワンダースワンでもゲームソフトが出ている(しかも2作)くらいだから、割と広範囲に渡ってメディア展開している。
一見お茶の間に向かないだろうと思える作品だが、意外とあちこちのメディアとマッチするようだ。単純に人気があるようだ。諸々成功した作品です。
漫画、映画、ゲームと様々なメディアで作品が出ているものだが、なんか怖い&キショいとうことから、これまで手を出したことがなかった。
で、今回そんな伝説の作品が、一番手を出しやすいアニメという形で令和時代にリブートを決め込んだ。これなら楽に見れる。今の私なら、あらゆるホラーやその他キショいあれこれをしゃぶり尽くしたことから精神的に結構平気で見れる。
というわけで、この度出来上がった全4話のうずまきアニメを見てみた。
古くからも巻かれた渦はその後も多くを取り込み、今となっては最新時代のアニメ業界をもそのターゲットに捉えた。そしてこの度、私もそこに巻き込まれました。結構楽しかったので、気持ち良い渦巻かれ体験となったぜ。たまには渦に飛び込むのも悪くはない。
このアニメは本当ならもっと早くに公開予定だったそうなのだが、コロナ時代の影響はじめその他諸々都合があって、なんだかんだ数年遅れでやっとこの世に出すことが出来た。結構難産になったのだなぁ。だが遅刻してもこうして仕上がったのならおめでとうです。最近は遅刻を決め込みまくった末にフェードアウトで一生やらないアニメもあったりなかったりするからね。
で、これは大変面白かったです。変化球の面白さが大変印象的な1作となったことで、今後も長く記憶していくことになりそうだ。見れて良かった。
全編を通して貫徹させた狂気性、真っ向から来る恐怖、そしてキショい話の中に光る見世物としての独特のセンス。どこを取ってもなんだかんだ魅力の塊で面白いと言える作品だった。
ただ面白さの方向性が既存の作品が持つそれと全然違っていて、これはこれでエンタメ界にドカンと投下された爆弾、またはスーパー発明といえる作りとなっている。とにかく異色作として持つ異色成分がエグヤバい。変態的とも言えようものすごい熱量で作られたヤバい作品です。
凄まじい独創性、唯一性を持っていて、これだけ色んなアニメを見てきた私としても、類似する作品としてコレだと挙げられる物が全然思い浮かばない。うずまきナルトくんが出てくる「NARUTO」を思い浮かべるので精一杯だった。ナルトくんがこちらの作品に出てきて螺旋丸を放ったら、それを見た皆さんのヒトマイマイ化が促進されることであろう。
最近の深夜アニメのラインナップを見ていれば、「もう何回同じをやつやったよ!」となる既視感バリバリのもの、言い方を変えればパクった物がたくさん並んでいるが、あれら凡庸などんぐりの背比べを見ていると、この作品の持つ異質さと尖り具合がめちゃくちゃ光って見える。どんぐりにならないことがどんぐりの背比べから抜けれるただ一つの方法。だが、それになるのはとても難しいのである。それを叶えた本作には秀逸なアイデア性が詰まっていると言えよう。
やっぱりどういう形であれ、他との差別化が叶うことが、新規顧客に興味を持って覚えてもらうきっかけとしてデカい要素になるのだな。そんな感じで広く見世物の作り方や上手な魅せ方についてもやんわり学べて来る出会いとなりました。
まぁ単純に新作アニメを楽しむにあたっては、こういう変に玄人めいた思考がノイズにもなってくるのだろうけども。
こんなものはガキの頃に見ていたら、その世界観のキショさとヤバさで恐怖のトラウマになっていたことだろう。大きくなってからの視聴で良かったかも。
物語の舞台は、黒渦町という呪われた地。ノスタルジックな田舎感もするが、一方では親近感ゼロの新世界の異質さも持つヤバい地に成り果てていくから困る。
この地で巻き起こる「うずまき」に関わる怪事件がとにかくずっとヤバいというお話。終始うずまきがヤバいの感想で終わって問題ない怪作である。
1話目の半分と待たず既に不穏すぎるから、その段階からもさっさとよそに引っ越した方が良いと思いながら見ていた。でも皆さんがいざ脱出を試みてもそれは不可能であり、渦巻きの呪いによって町に閉じ込められてしまうのだ。やっぱりそんなに簡単に行かないかぁ。いくら離れようとも結局最後には、ぐるぐる巻いた渦の中央に引っ張られるがごとく元に戻って脱出出来ない。そんな渦巻き地獄の中なのである。なんてキショくて怖い町なんだ。
とにかく渦巻きに関するありとあらゆるキショい異常が巻き起こり、この世の物とは思えない壮絶な風景がずっと見れる作風となっていた。
とあるおやじは渦巻きに魅せられたことで渦巻き状の死体になって死ぬ(文章にすすれば意味が分からんことだが、見ればあぁそういうことか!と一発で分かる)、人が渦を巻いた模様の殻を持つカタツムリ化してしまう、人の髪が勝手にカール状態になって渦巻きヘアーが人を襲うなどなど、渦巻きをヒントにしてこれでもかとキショい現象が巻き起こる。
外からは見えない耳の内部にある渦巻管にも反応して渦巻きの呪いが発動する。人体の内部にも潜り込んでくる呪いのパワーがヤバい。
当初はまともだった人達も渦巻きの呪いの力に当てられてゆっくりと狂気を宿すようになる。最終的にはここに住んでいるヤツらが全部怖いくらいに思える。
そんな恐怖の渦巻き世界を原作漫画と同じくアニメでも白黒の世界で描くことで、不気味感も増して見える。恐怖映像でもカラフルだと視覚的に賑やかに見えることで恐怖感がちょっと弱くなるんだな。こうして色彩乏しい白黒で不気味なことをやられるとそれが半減する要素がなくもっと気味が悪く見える。
全体的にどんよりとした暗くて重い空気感がこの手のジャンル好きには心地よい演出になっていた。私は普段陽キャをやっているが、それとは真逆の暗い世界を覗くのが全く嫌いではないからこういう演出でも全然イケる。
「うずまき」という現象、概念、模様から、こうも次々ととんでもなくキショい発想が浮かんでくる作者のアイデア力がマジですごい。この異常なまでに従来性から飛び出たとんでも発想に魅せられる私だった。
これは子供の頃に見ていれば泣いたことであろう。だが見世物に見るイレギュラー性への耐性が整い、それを好むちょっとの趣味も出て来た今見れば心から「面白い!」と思える。発想のユニーク性、狂気性、唯一性はピカイチなものである。
基本的には見る者を震え上がらせる恐怖とキショさを売りにしながら、たまにちょっとのギャグセンスを入れてくるこの作家の特性とも呼べるセンスが今作でも光っている。
ホラーではあるけどたまに笑えるのだ。まずは美醜の描き分けがやはり良い。先に見た「伊藤潤二『マニアック』」でもそこの良さ出ていた。今回も美形はちゃんと美形、逆にブスはマジでブスに描いてくる。このブスに残す美の要素をマジで全部切り捨てにかかる潔さと勢いの良さが好きになるし、あとはちょっと笑える。伊藤潤二が描くブスなギャグ要員が結構好きだったりする。
あとは肝心のうずまき現象もちょっとおかしいから笑う。
女子の髪がいくら直してもカールを巻き始めて、最終的には髪が意思を持って人を襲うようになる。毛で殺す「毛殺」をやってくるので、ジョジョの山岸由花子みたいだった。この毛が暴れるシーンも面白かった。
主人公少女 桐絵に突っかかってくる渦巻きヘアー女がいて、その二人の髪の毛がバトり始める展開はギャグバトルみたく見えて笑った。
あとは後半になると、渦を巻いた風に乗って暴走するバタフライ族というのが出てくるんだけど、こいらなんかはもう異能力バトルスキル持ちの害悪人間だったから笑った。風をまとって飛んで戦うと聞けば格好良いイメージも湧くのだが、こいつらはなんだか間抜けに見えてウケた。
人がカタツムリになるヒトマイマイはマジでキショい。よくこんな事を考えつくものだ。最初はクラスメイトの一人くらいがなるだけだったのだが、だんだんと感染式に広まって多くの人がカタツムリ化した。
後半になると渦巻きの呪いで街が崩壊状態になり、食い物の調達も難しくなる。そこでヒトマイマイを食料として食う人間も出てくる。ヤバいって。殻に頭を突っ込んでまでして食っているから、ゲテモノ食いとしてのノリもすごい。
後半に行く程どんどん世紀末感が酷い。後半のノリなんて「漂流教室」にも見た世紀末の荒廃感が見えた。
避難所に集まった人達が渦巻き状に絡み合った結果、合体巨大うずまき怪物が誕生する終盤のビックリ映像はマジでキショかった。あのキショいデザインで怪奇現象を表すテクニックは嫌いじゃない。グロいとかキモいシーンが結構イケる口なので、ああいうのが出てくるのも全然アリとして受け止められる。
家屋が渦巻き状に繋がって建てられることで渦巻き遺跡になっているアレとかも発想として面白い。上から見ると不気味なサークルになっている。
最終的にはカルト的渦巻き思想に話が持っていかれ、もう訳が分からん。とにかくなんかすごく壮大で荘厳な感じで締めた。もはや渦巻きは思想や宗教レベルの高度な概念となっているようだ。キショくて怖い。
落ちを見るに、不思議過ぎてまぁバッドエンドなのかな~。グッドとは思えない。
最後の流れを見るに、一旦は大人しくなった渦巻きの呪いも時代を経てまた復活するのかもと予想出来る終わりだった。
それから毎度のED曲が独特の雰囲気を持つ民謡テイストだったのも印象的。寂しい感じがしてちょっと不気味で怖い歌だった。楽曲でも雰囲気を出してくるよなぁ~。
いや~すごかったっす。とにかくずっと渦巻きだらけの作品だった。
作者も渦巻きという形状や概念に取り憑かれたようにして描いたのかなぁ。作品が持つそこへの執着がマジで異常。 こうして何か一つに特化しまくってぶち抜く作品熱に感動出来た。マジでキショい作品だと思うけど、そこに全振りで極めようという熱意と尖り具合が本当に愛せるものだった。
そういや思い出したけど、以前遊んだ「車輪の国、向日葵の少女」というゲームに出てくるヒロインの中に、うずまきを見るのが好きな子がいた。味噌汁をかき回すことで出来る渦巻きを見て和んでいるような子だった。ああいう子もいるくらいだから、渦巻きには人を魅了する何かがあるのだろう。
結果とても好きです。もっとこういう問題作テイストなヤバい作品が出てきても良いかも。最近のアニメはとにかく冒険していないからなぁ。異世界冒険ものなのに大して冒険しないアニメもたくさんあるし。
原作はまだ20世紀の頃の作品で古いのだが、それをわざわざ掘り起こして新しく映像化するだけの価値はあった。私がそれを認めます。
こいつを見たからには、しばらくは渦巻きを見る度に何か思い出しちゃいそう。風呂の栓なんかを抜けば日々見れちゃうものだからな。意識しないだけで、世界は案外渦巻きだらけなんだな。
そうして私の思考もぐるぐる渦を巻いてもう何を考えて何を言いたいのか混乱しつつあるから、ここいらでこの狂気の渦巻きアニメの感想を終えよう。
ではまた心地よい渦巻きの中でお会いしましょう。
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