こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

美しくも残酷な少女「サロメ」

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サロメ」はオスカー・ワイルド作の戯曲。1981年、フランスで発表された。

 

 サロメといえば思い出すのが「バトルフィーバーJ」に出てくる敵の女幹部。女レスラーのマキ上田が扮するかなりインパクトに残るキャラだったな。そんなことを思い出しながら手にとって読んだが、想像以上にバトルフィーバーと関係ない作品だった。

 

 

 

 月下で行われる宴で、サロメは継父ヘロデ王のために踊る。その報酬として彼女が欲するのは囚われの預言者カナーンの首。執拗にヨカナーンの首を欲すサロメの歪んだ愛情を写し出している。

 

 と、内容はそんな感じなのだが、この話、色々と分からない。ちょっとした心理小説のようだ。

 戯曲なので小説のように語りによる人物感情の補完がなされない。そして1時間ちょいで読み終わるくらい話が短いのでそこのところの理解が間に合わない。

 

 ヨカナーンは囚われの身になってもずっと予言を口にしている。ヘロデ王はそれに怯え、王妃のヘロディアは予言をずっとうざがっている。

 前王の弟であるヘロデ王は、その娘のサロメに魅了されている。近親相姦を想起させる要素となっている。ヘロディアは夫が娘に熱を上げるのをよく思っていない。なんかドロドロ関係になりそうな家族構造になっていた。

 

 序盤から登場する二人の兵士は実はゲイカップルという裏設定があるらしいとあとがきを読んで分かる。同性愛といえばワイルドだからその要素が隠されていた。

 

 サロメがヨカナーンに興味を示したのは、彼だけがサロメになびかなかったからなのかと予想する。

 最終的にサロメヘロデ王に頼んでヨカナーンの首を落とさせ、その首にキスをする。こうなれば愛を拒まれないとでも思ったのか。その後もかなりクレイジーなことを首に向かって囁いている。猟奇的すぎた。生首を抱いているとか「スクールデイズ」の最終回を思い出した。サロメヤンデレだった。

 サロメを可愛がっていたヘロデ王もここまでとなると気味悪がってサロメを殺すよう兵に命令した。ラストでサロメは死んだのだと思える。

 

 サロメが執拗にヨカナーンにキスを迫る展開が印象的。サロメは何度もキスをすると宣言するが、その間ヨカナーンはずっと予言を口にして受け入れない。サロメが全く聞き耳を持たず拒まれてもしつこくキスを迫るのがちょっと面白かった。

 サロメヘロデ王にヨカナーンを首を要求した時、ヘロデ王はああだこうだと言って報酬をそれ以外の何かに変更しろと言うが、何を言われてもサロメは絶対に「ヨカナーンの首」と言って引かない。サロメが簡単に意志を曲げない女だと分かるシーンだった。

 

 ヘロデ王の嫁のヘロディアが結構口が悪く、ずっと悪態をついてイライラしている。ヘロデ王相手でもそれは同じ。ヘロデ王の先祖は泥棒だったとディスっているのがちょっとおもしろかった。

 

 シリア人の兵士がサロメとヨカナーン接触をものすごく拒む。それでもサロメがヨカナーンと対面した時、彼はショックで自分を刺して死ぬ。このシーンではそこまでする?ってなった。

 

 

 短い話だったけど愛憎渦巻く気持ちの良いものではないと強く印象に残った。

 

 こんなダークな話を良く書くなと思える。

 

サロメ (光文社古典新訳文庫)

サロメ (光文社古典新訳文庫)

 

  

 

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