「忍風カムイ外伝」は、1969年4月から9月まで放送した全26話のテレビアニメ。
やはり、幼い頃から今日まで良く聞きはするが謎の職業である「忍者」には興味を持つし、好きになる。考えれば忍者とつく作品はだいたい楽しんでいた。
今作の見どころは、爽快な忍法アクションと、抜け忍の悲しい性を追う重厚なエピソード展開にある。
本編前には「東芝がカラーで送る~」というナレーションが入る。カラーが当たり前の現代でここを番組の特徴として挙げないだろうから、当時はまだ全編カラーの作品が新鮮だったのだと思える。
良く聞くが、やはりある忍の掟が組織を裏切る者、抜ける者は抹殺するというやつ。
抜け忍の主人公カムイが追手から逃れて我道を行く過程を全編に渡ってお届けしている。
カムイは、変移抜刀霞斬り(へんいばっとうかすみぎり)、飯綱落し(いづなおとし)などの必殺忍法を用いて追手を倒す。この忍法アクションは見ていて爽快。随分古い作品だが戦闘シーンはなかなか良い動きだと思う。
虚しい忍者の世界に嫌気がさしたことで抜け忍となったカムイは、逃げたその先で恨みのない追手を殺し、自分が生き延びる過程で罪のない者も死に巻き込んでしまう。
忍の世界を離れてただの人間として生きたいのに、そのためにはただの人間から程遠い人殺しの世界と隣合わせでなければいけない。
当たり前に持つ人の性を貫く過程で、関係のない者が死んでいくことがある。そこで当たり前のことをしていながらも己の中にエゴを感じて自己嫌悪に陥るカムイの暗く辛い心理描写がなされる。
追手の中には民間人に変装して自分に近づく者がいるかもしれない。その猜疑心からカムイが人間不信に陥る過程も描かれる。抜け忍をやる以上、人を「信じる」行為は実に慎重に行わなければならない。うっかり人を信じれば自分が騙されて殺られることもあるからだ。この疑いだらけで人間関係が希薄になる抜け忍の都合が辛い。
ある時には追手だと疑って危険な状態にある者を見捨てたら実はただの一般人で、だったら助けてやれば良かったと後悔することもある。人を信用できない病んだ心が本来助けられる命を見殺しにする結果になり、それによって罪悪感を得る展開もあった。こんな緊張ばかりする生活をしているカムイを見れば、ストレスでハゲると思った。
人間を信じるのは危ないという状態でもカムイはやはり人間。ということで時には心の孤独を埋めることをしなくてはならない。旅の途中で鷹を手なづけたり、忍犬を飼うこともあった。しかし何れも追手との戦いの際に殺されてしまう。
忍犬と心を通わせた後にカムイが「これでお前が言葉を話せたら」と漏らすシーンでは人間らしさが分かり、同時に彼の孤独が分かって可愛そうになった。
後半に登場するくのいちスガルのエピソードは面白かった。古い絵柄だがスガルが色っぽく描かれていて好きになった。
カムイは後にスガルの家族の下で世話になり漁師として働く。この他にも旅の過程でカムイは民間人に混じっていくつかの仕事をして生計を立てている。
追手が家族の飯に毒を持ったことでスガル達の家族は皆殺しになった。この流れはキツかった。スガルの娘のサヤカはカムイの嫁志望を持つ可愛らしい娘だったのに殺されてしまう。これには復讐や人殺しを良しとはしないカムイも完全に怒って犯人を殺る。
最終回まで物語を追っても、カムイの行く道には殺戮とそれに伴う虚しさしかない。
かなりハードな人情劇となり、物語は一貫して暗めだった。これは子供向けではないと思う。そんな訳で当時は子供人気がいまいちだったとか……。
しかし大人にはそれなりに受ける内容だと思う。人間心理だとか、カムイが求める当たり前の人間生活や幸福については深く考えさせられるものがあった。
という訳で個人的には好きになる作品だった。
最後に、カムイが着るピンクの服は好きだけど派手なので、これでは追手にすぐ見つかるだろうと思う。

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