こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

晴れでも雨でも未来は大丈夫である「天気の子」

「天気の子」は、2019年7月19日に公開された劇場アニメ。

 かなりのヒットを飛ばした前作「君の名は。」から約3年ぶりとなる新海誠監督最新作品である。

 

 公開から約1年経ってやっと見れた。パッケージ化がありがたい。

 期待して視聴したところ、だいぶ楽しかったので2回見てしまった。

 

 絵が綺麗だしキャラデザも相変わらず好みである。メインヒロインの陽菜がめっちゃ可愛い。次点で活躍する夏美もかなり良かった。

 

 色々感動したので感想をだらだらと書き殴っていこう。

 

天気の子

 

 本作は、地元の島を脱して東京に家出した主人公少年 森嶋帆高が、雨を一時的に晴れにする不思議な力を持つヒロイン天野陽菜と出会って成長してラブも育てるファンタジックなボーイ・ミーツ・ガールものである。我々アニメ好きが好んで見たくなる安定のジャンルの一つであった。

 

 東京上陸前の船の中からでも、帆高は東京で生きていく恐ろしさと厳しさを実感していた。まずは東京って怖いと思える作品だった。未だに行ったことがない東京シティのことがちょっとばかし分かるお話だった。

 船の中で帆高が須賀さんにご馳走するビールが一瓶980円、ホテルの自販機で売っている唐揚げ、焼きそばも割高だ。カップラーメンが500円なのは恐ろしい値だった。東京の食い物って高い。

 ホテルのシーンで帆高が「カップラーメンは2分が丁度食べごろ」と伝えたのはCMにもなっていたと思い出す。

 

 とにかく東京で生き残るのは大変。金の問題は絶対について回る。宿がない帆高は、金がある内にはネットカフェで暮らしている。ネットカフェというのも昨今良く聞くようになったけど行ったことがないので、あんな場所なんだと学びになった。

 

 とにかく金がいるから仕事探しをする帆高少年。東京の街に知り合いがゼロでも、そこはネット社会の申し子ならではの情報を集めに出る。一人ぼっちがたくさんの脳で物事考えることが可能となる現代人の強い味方のネットコンテンツがヤフー知恵袋である。家出の未成年でも雇ってくれる仕事がないかと知恵袋で調べていた。優しい暇人の皆がすぐに情報をくれるのを見て「これがネット社会か」と実感した。「法律違反だから無理」「タヒね」みたいな厳しい意見が見える中、風俗関係ならそこらの事は緩いという情報を得て事務所に行くが「舐めんじゃねんねぇ」と追い返される。

 

 その後のシーンでは、ヒロインの陽菜が闇のスカウトにあう様子も描かれている。違法か、グレーなゾーンかのような怖いけどきっとある都会ならではの事情が見られる展開が印象的だった。東京で生き抜くのは厳しいのだ。

 帆高が陽菜に贈り物をする際にも、何が良いのかを検討するために再びヤフー知恵袋に世話になる。知恵袋のありがたみも分かるアニメだった。ちなみに、困難を前にしても自分一人の脳で突破することが十分に可能な私は、一生このサービスの世話になったことがない。

 

 東京での生活に困窮していた帆高にそっと「ビッグマック」を提供する陽菜は天使に見えた。箱を開いた瞬間にフワッっとしたパンの柔らかさが分かる描写が大変良い。とっても美味そう。

 

 いろいろあった結果、帆高は東京行きの船の中で一緒になった須賀さんと再会し、彼のオフィスで働くことになる。多分「ムー」的な雑誌に載せる記事を作成する事務所らしい。オカルティックな夢を追っては売るという素敵な仕事なので、控え目に言って出世である。

 

 就職後の帆高は、デカデカと「ムー」と書いてあるTシャツを着て働いている。「あのはな」のじんたんが着ていた「地底人」「白ネギ」とか書いてある謎ワードTシャツを思い出す。

 須賀さんの事務所の給料は月給3千円。安っ!もろもろ差っ引いてもこれは安い。我が祖父が言うには、昭和初期ならたいした稼ぎであるらしい。令和に入ってもこの賃金だから東京暮らしは厳しい。

 

 作中の東京は雨日が続く異常気象になっていて、後半では夏なのに雪が降って暖房をつけるくらい寒くなる。徐々に東京が水に沈み、「ARIA」の世界に近づいて行ってる。果てにはそこも飛び越えて「青の6号」や「AIKa」みたいな水浸しの世界になっていた。

 ファンタジー作品だが、こんな異常気象がリアルにやって来るのも案外遠くないのかもしれないと思うと怖いぜ。

 

 タイトルに「天気」というワードが入るだけあり、本作の全体的なイメージとして強く残るのは「めっちゃ雨降っている」と「めっちゃ晴れている」だった。雨降りのシーンは多く、その中で水の演出に拘っていると分かる。逆に晴れて行く様を描く時も、雨上がりの空ってこんなに素晴らしい、ということを最新の映像技術で伝えている。天気の演出は神がかって良い。

 主人公たちが雨を晴らす儀式巡礼をしているシーンを通し、晴れた空が人々の心を明るくしているということを現している。晴天を視界に入れれば心がリフレッシュするという天気と人間心理のあり方を描いているのが良い。

 

 雨を晴れにする100%の晴れ女の異名を取る陽菜が、雨を晴らして欲しい人々の元に訪れては雨と共に人々の曇った心も晴らして行く。陽菜の持つ異能力と呼んで問題ない特性を活かした新手の商売を描く展開には注目できる。一回3500円で晴れサービスを受けることが出来る。安いか高いかは晴れを求めるあなた次第。

 

 初業務の際には、陽菜の弟の凪が等身大のテルテル坊主になり、帆高はテルテル坊主を吊るしまくった傘をさして儀式の援護をしていた。成功しない限りはマジで胡散臭いだけの雨降り儀式にしかならない。晴れ女最初の勤務地となったフリーマーケットを管理をするおっさんが、早く帰ってもらえと指示を出す気持ちも分からないではない。

 

 晴れ女という最新ビジネスを、今どきの売り込み方であるネット予約で行っているのもなんかすごい。ヤフー知恵袋同様、放浪先でネットコンテンツに助けられている帆高少年が描かれている。ネットは家出の強い友になると分かる作品でもあった。

 晴れ女出張予約サイトトップ絵のカバに見えるカエルのイラストは陽菜が担当している。どうやら絵心いまいちなヒロインらしい。

  

 

 雨に包まれた東京の運命を変えるすごい力があるメインヒロインの陽菜は、それだけでも十分特徴的なヒロインだが、他にも良い点がさまざまあり、総合的に見て大変私のツボを突く推しヒロインとなった。とりあえずめっちゃ可愛い。

 私が陽菜に出会ったのは2020年だが、映画公開は2019年だったため、彼女は2010年台最後期のいわゆる「俺の嫁」枠ヒロインだったのではないだろうか。

 

 メインヒロイン陽菜の思い出を振り返りたい。

 

 天気を操る以外の陽菜の特性としてもう一つあるのは、本編中盤くらいまで引っ張った年齢詐称問題。 

 最初は今年18歳になると帆高に告げるが、実はまだ義務教育過程にある中3だと後で分かる。年齢を偽ったことがバレてマックのバイトは首になる。

 よく注意して見ていれば、家のカレンダーに記された陽菜の誕生日の欄に、次に迎える年齢の「15」の表示があり、帆高を捜索して取り調べに来る警官も児童だけで暮らすのはマズイと言ってきていた。そんなヒントをチラつかせていたにもかかわらず、梶君演じるリーゼントで態度の悪い刑事が、帆高に陽菜の年齢を告げるまでまさか帆高よりも年下とは気づかなかった。

 気づかないくらいに陽菜がしっかりしていて大人っぽいといういうことである。巨乳キャラの夏美さんみたく体付きに大人を感じるまでは行かないのだが、弟の面倒を見て働いて自炊も出来るという自立した女の一面を見せていた点で、帆高より年上感があったな。年齢において意外な驚きを見せた食わせ物ヒロインだった。めっちゃ可愛い。

 

 男帆高の女子のお宅初訪問となった陽菜の家でのシーンで見れる陽菜のお料理テクニックは大変印象的だった。やはりお料理女子は強い。陽菜の作ってくれるポテチ入り焼き飯が美味そう。チキンラーメンのサラダとかもアイデア料理で印象的だった。これが東京女子の腕前か。田舎暮しでは出てこない発想、とも言い切れないが、やはり都会暮らし者の冴えたるアイデア力は侮れない。

 ネギ、豆苗の根っこを水につけて栽培し、さっと料理に入れてくる女子力高めな点も惚れ惚れする。料理をしながらも、客人の家出少年帆高を放っておかず、悩みを聞いてやる態度を示す点にはお姉さん感を越えてママ感も感じた。ええヒロインや。

 しかし、この段階で本当の年齢は伏せられていたものの、年齢で言うと中3女子の家に上がるのにドキマギしていた帆高のことを思うと「プスス」という笑いも起きる。この反応は童貞だな。

 

 ホテルのシーンではマジでちょっとだけ陽菜の入浴シーンが見れたのが良かった。風呂上がりの女子の髪の香りにドキッとなっている帆高の心情が良く分かる表現も良い。

 ホテルのベッドでのシーンで髪を降ろした陽菜も良い。ここで陽菜渾身のヌードシーンが見れるのだが、晴れ女の呪い的な反動で体はスッケスケで良い景色は見れない。

 

 陽菜がめっちゃ可愛いけど、サブヒロインポジションの夏美も大変良い。サブにしては存在感と可愛さがありすぎる名キャラだと思う。巨乳のお色気枠でもあり、胸の谷間とかも見えている。色気たっぷりの目の保養キャラだった。

 前作「君の名は。」では、ヒロイン三葉がバスケをするシーンで乳揺れ現象が起きたことに大変衝撃を受けた。こちらの夏美も新海作品キャラとしてはかなり衝撃的なお色気番長だった。童貞(予想)の帆高少年の目線が胸に集中することを感じて「胸、見たでしょ」と強めに出てくる感じも良い。

ほしのこえ」「雲の向こう~」などの初期の暗いテイストの新海作品ではまず見られないポップな女子像と萌えがここにある。嬉しいことである。

 

 単車をぶっ飛ばして帆高を警察の追ってから助けてくれる所では素晴らしいドライブテクを見せてくれている。夏美が駆るバイクのピンクカラーのボディデザインがおしゃれで可愛い。それまで何社も就職試験に落ちた彼女が、白バイ隊員ならイケるかもと唐突に進路志望を口にするドライバーズハイ状態なシーンも良かった。頼れるお色気番長の夏美が一押しキャラだった。

 

 スケベな分析ばかりではなく、胸に響く人生観というものも本作から感じることが出来た。

 

 一見堕落した人間に見える須賀さんが、早くに亡くした妻を思って泣くシーンにはしんみりとする。ちゃらいように見えて奥さんのことが忘れられない須賀さんが、人間は歳を取ると大事なものの順番が入れ替えられなくなると呟く点に深い人生観を見た。心に響くセリフだった。

 形はどうあれ、東京を雨だらけの世界にしてしまう未来決定を行なった帆高に、世界なんて元々狂っていると言って励ます良き先輩の一面も見せた。須賀さんが何気なく言い放つ言葉に重きものを感じる。ガキに一瓶980円のビールを奢らせ、月給3000円しかくれないケチな一面も見せるが、物事の本質を見て喋る良きおっさんでもあった。好きなキャラだな。

 

 須賀さんを演じたのは小栗旬だった。小栗にアニメで会うのは「どうぶつの森」のとたけけの芝居以来だ。犬だけどたくさん聴いた歌手の一人に上がるのがとたけけである。

 ドラマ「GTO」では、女子にめっちゃ虐められていたガキ役だったのに、ここでは随分ダーティな役が出来るようになったものだ。そう思うと彼も経歴が長い。

 

 後半では、晴れ女の陽菜を人柱として天に捧げることで、雨や雪に覆われた東京の異常気象を正すことが出来ることが明らかになる。これに対して須賀さんは、一人の犠牲で東京が助かるなら歓迎だと言う。単体よりも全体が良くなることを意識した社会人の大人な意見だが、まだガキの帆高はそんな体裁は良いからとにかくマイオンリーワンのヒロインを取り戻すことに奔走する。がむしゃらなのは無様である一方、真っ直ぐで清々しくもある。東京の未来が暗黒に染まろうがなんだろうが警察に銃を向けてまで陽菜を天から奪い返した帆高の自己決定による行動には大きな成長が見れた。

 お利口に周りの顔色を見て皆の利益を追うのではなく、ただ一人のヒロインのためだけに後のことは無視して一生懸命に行動した帆高を描いたのが良かった。東京を救う選択肢を捨ててまで愛に走ったことは美しい。後に須賀さんが言うように、世界なんて元々狂っているんだから東京のことは無視して陽菜をゲットして正解だった。

 なんだかんだでおかしな未来になっても、二人が一緒なら「大丈夫」と最後には悟る帆高の爽やかな成長が見れて良かった。

 

 天気にまつわる謎を扱ったファンタジー展開にボーイミーツガールだけで十分面白かったが、そこに帆高がおもちゃと間違ってガチの拳銃を拾ってしまう非行少年要素を加えたのは意外性のあるドラマとなって良かった。悪意からではないが、いけない物を所持したことで、東京から引き上げた後も高校を出るまではまさかの保護観察扱いになるのは印象的な設定だった。帆高は良いヤツだが、地元では東京のお尋ね者として女子共に噂されているのがちょっと気の毒だけど面白い。帆高もなかなか愉快な青春を送っていると分かる。

 

 アニメファンに嬉しい仕掛けが、前作「君の名は。」に登場した瀧君と三葉が友情出演でちょこっとだけ出てくることだ。彼らを見つけた時には思わず「あれ?」と声が出てしまった。前情報がないから抜き打ちの感動要素だった。プチ同窓会気分になって楽しかった。

 

君の名は。」を見た数年前にも、なかなかの感動と衝撃を受けてここにダラダラとあれこれ書き殴ったのがまるで昨日のようである。

 

 瀧君は男前度がアップしていた気がする。こんなにイケメンだったっけ?と思った。

 瀧君の勧めを受け、帆高は陽菜の誕生日プレゼントの指輪を買うためショップに足を運ぶ。そこの店員が三葉だった。久しぶりに昔の女に会えた気分で嬉しい。三葉がめっちゃ可愛かった。ちょっと大人のエロスも出て良い感じだった。口噛み酒を作らせれば日本一の女も田舎を脱してジュエリーショップの売り子になり、すっかり垢抜けていた。良い傾向である。

 

 声優好きにウケるネタが、凪くんの二人の彼女を佐倉綾音花澤香菜が演じたこと。どちらの少女も演者の下の名前を取ってアヤネ、カナという名前に設定されている。どちらの声優も推しなのでこの仕掛は嬉しかった。

 

 老齢の刑事が登場するが、声がめっちゃ平泉成で、本業の声優でないにしてもこればかりは声を聴いて一発で分かった。小栗旬ら他の出役畑の出演者の中でも飛び抜けて声に特徴があるのが平泉成だった。好きなおっさん声である。

 

  なんだかんだで未来には希望の光が指しているという明るいメッセージ性が読み取れる作風が好きだった。大変感動した。あとはヒロインがめっちゃ可愛い。

 

 

 RADWIMPSの担当した主題歌の良さが改めて分かるものだった。これもセットで聴こう。

 

 

 愛に出来ることはめっちゃある。

 

 

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