「クイール」は、2004年に公開された日本映画。
テレビドラマ「電車男」の作中に登場したことで有名。思えば私もこれきっかけで視聴した。電車男とエルメスたんが一緒に見て感動していた本作は、この私をも感動させてくれた。
今回で人生3回目の視聴となる本作の感想を書いていこう。
主人公は可愛いラブラドール・レトリーバーのクイール。クイールが生まれ、盲導犬として活躍して老衰するまでの生涯を描く心温まるストーリーとなっている。
のんびり屋なクイールのキャラ性には愛着が湧く。そして出てくるわんちゃん達がとにかく綺麗で可愛い。クイールの同僚にあたる他のラブラドール・レトリーバーも多く登場するが、皆凛々しく賢そうで見た目が綺麗。悪意や嫌味を感じる展開もなく、ずっと目の保養になった。
初視聴時から忘れられないのがクイールの赤ちゃん時代を描いたシーン。デカくなっても可愛いのは同じだが、チビの時にはまた違った特有の可愛さがある。生まれたばかりの赤ちゃん犬は目がしっかり開いていなく、「クンクン」言いながら小刻み震えていたりする。弱々しくも美しい赤ちゃん時代のクイールとその兄弟のアクションが可愛くていつまでも記憶に残る。
クイールの飼い主のお姉さんがとにかく我が子を盲導犬にしたがる。盲導犬センターの指示で電話越しに軽くテストした内容が「おいでおいで」してもすぐに来ないヤツの方が見込みがあるという意外なものだったのが記憶に残る。用心深いのか天然のおマヌケさんなのか、クイールは他の兄弟達のようにすぐに尻尾を振ってご主人さまの元に駆けていかない。そんなわけで兄弟の中で合格者はクイールのみだった。
その後の盲導犬での訓練でものらりくらりとした感じで試験を合格していくクイールの独特なキャラ性が目立つ。基本的にのんびり屋な性格が可愛らしい。
盲導犬の訓練センターに送る前の一年間は、パピーウォーカーというボランティアに預けられる。この段階では、一緒に生活する中で人間の優しさを犬に教えるのが目的となるという。実にいい心構えの考えられたプログラム展開だ。
クイールの名はパピーウォーカーの家でもらい、「鳥の羽」という意味があるという。背中に鳥の形に見えるブチがあるのがトレードマークのクイールにもってこいの名前で良い。
訓練を終えたクイールは、視覚障害者の渡辺さんとタッグを組むことになる。最初こそ「犬畜生に手を引かれるなんて」とか言って盲導犬を信じていなかった渡辺さんも、杖を叩いて歩くよりも犬と歩く方が速いことを実感するようになる。渡辺さんとクイールの変わり者コンビの絆が描かれる展開が楽しい。
渡辺さんとクイールが夜中にビールを買いに行くシーンがなんとも可愛らしい。目の見えない渡辺さんが、自販機のビールのボタンをなかなか当てられないじれったさが面白い。ミスってはちみつレモンを買っていたけど、こうもクソ暑い今の時期ならあっちの方が飲みたいと思える。
このシーンでは酒の缶には点字があり、他の甘いジュースにはないということことが分かった。目が良く見えるものだから気にしたこともなかったが、様々な商品にも点字がついているのかという気づきが得られた。
渡辺家の息子の悦男は悪ガキで碌なことしないなと思った。
盲導犬への指示は英語に限定されている。日本語だと男言葉、女言葉、方言などがあって指示が定まらないので英語に決めているという。当たり前だけど、しっかり考えられた末に組まれたプログラムなのだなと感心する。
クイールの訓練についた多和田悟のキャラも忘れられない。なんだか掴みどころがないところが印象深い。椎名桔平の演技も良かった。
後半シーンでは、訓練センターを卒業した犬達とその相棒の人間達が集う同窓会が開かれる。そこでラブラドール・レトリーバーの大軍と共に一夜を過ごす多和田を描いたところが面白い。犬好きにとってはハーレムパラダイスな景色だった。
最後にはパピーウォーカーの家に戻り、穏やかに死んでいくクイールが描かれる。パピーウォーカー夫妻からクイールへの最後となる優しい呼びかけにはさすがに泣きそうになる。
こんな感じでわんちゃんが生まれて盲導犬になるまでの過程が分かる。この映画を見ない限りは一生知ることがなかったであろうことが分かって良かった。
クソ暑いがゆえに心もやや荒むこんな時期に本作を視聴したことで、ちょっとだけ暑さを忘れ、大いに優しい気持ちになれた。やはり犬は可愛い。ありがとうクイール。
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