「ロスト・バケーション」は、2016年に公開されたアメリカ映画。
うん、まず思うのがとっても新しい。
著作権の権限が及ぶ範囲としてこんなに若い作品を見るのが珍しい。それくらいに私はクラシック思考。
たかだか5年前の作品なんて最新映像みたいなもの。そんなわけで映像がものすごく綺麗。
くるくる回す電話でなくスマホが出る映画というのも新鮮。だって私はまだガラケーだし。
公開から50年だって余裕で過ぎた作品群で慣れた私からすると、本作は大変新鮮なものだった。たまには新しいものも良い。
そして対岸の火事として見るなら、人食いサメは人生の共にして問題ないものである。
今作はジョーズの時代からブームの火がまだ消えきらないサメ×パニックものの新顔である。
女ひとり旅に出た主人公ナンシーは、とても綺麗な海で優雅にサーフィンを楽しむ。そんな素敵な休日をぶち壊すのが恐ろしき人食い鮫である。
200メートル程向こうにビーチが見えているのに、サメの奴がしつこく狙いをつけているので、ナンシーはビーチに戻れず、足を負傷したまま岩礁の上でサメをやり過ごす。
負傷したナンシーが力尽きるのが先か、なんとかサメを倒して海から脱出するのが先かの歯がゆい時間比べが続く浅瀬遭難サメパニック映画がここに誕生した。
本編は90分程の作品なので、たっぷりの引きを使う間もなく、割と序盤からサメのヤツが登場する。
ちょっと上手いなと思った引っ掛けの演出が、あたりに気配を感じて海を見渡すナンシーに迫る魚影が実はイルカだった点。あれはビックリした後に和む。絶対にサメが来たと思った。初手は寸止めで一旦安心させておいて次に本命をぶっ込む、この点には上手いホラーのテクにも通ずるものがある。
わかりやすくチープな感じもなく、サメの前に出てくる鯨の死骸、サメ自体も迫力ある作りだった。
鯨の死骸に乗って一旦サメから避難するシーンはスリルがあった。
サメ襲撃の前には、秘境のビーチで大変優雅な時を過ごすイケている女の休日感がたっぷり見られた。
海はすごく綺麗。弾ける波をスローで美しく見せる技術は、現代における技術革新そのもの。最近のカメラは自然風景をここまで細かく描写出来るのかと軽く感動もする。
ナンシーが医学生という事で、その点を活かす設定がサメに噛まれた足をナンシーが岩礁の上で縫うシーン。グロいのが駄目な人はあのシーンは向かないと思う。
止血のため足を縛り、出血を留めるために足を縫うナンシーの判断は迅速なものだった。怖い。
サメの攻撃以外にも海には危険なヤツがたくさん。サンゴ礁、クラゲにも攻撃を受け、痛みでナンシーが「NO!!!」を言うシーンが複数あったことが印象的。
海のど真ん中でもなく、たかだか数百メートルの距離でナンシーは遭難する。陸はそこに見え、大きな声を出せばビーチの人にも声が届く。こんな浅瀬での戦いなのも意外。でもサメはマジにしつこくずっとそこにいるので、夜を徹して戦いは続く。陸からちょっとの冒険だが、それでも緊張感はそこそこ。
昼は暑く、夜は冷える。加えて負傷していることでナンシーは心身ともにジリジリと疲弊して行く。可哀想。
本編キャラは少なく、ほとんどナンシー1人がいる一人芝居スタイルが取られる。
ナンシーの孤独感がより伝わるのが、岩礁でナンシーと時を共にするカモメの存在にある。たまにカモメに話しかけたりもするのだ。海の上で1人は心細い、それがよく伝わる。
医学知識を用いてカモメの脱臼を治すシーンも見られた。少しの間だが時間を共にしたナンシーとカモメの間に妙な絆が見えもする。
サメばかりでは怖い。でもカモメをたまに挟むことで、揺れるテンションのバランスが維持出来た。
サメに照明弾を打ち込むと激しく燃えるシーンをCGで描いている。海に炎が走るあの演出はちょっとファンタジックっで格好良かった。
多分浮浪者なのか、ビーチで寝ていたおっさんがナンシーの荷物をパクろうとする。そんな悪い泥棒の彼もサメに食われてしまう。人の荷物を盗んでは駄目というのもメッセージ性だったのだろう。
ナンシーの母は最後まで病気と戦って悲しくも散っていったと設定にある。本作では、母の生き様を想うことで、執拗なサメの猛追に絶望せず戦うナンシーの勇姿が描かれている。
作品の裏テーマはココかな。メインはサメとの荒れた休日、そしてもう一つしっかり伝えたいのは、命ある限り戦ってしっかり生きること。教訓だな。母は偉大だ。
私も相手が病気だろうがサメだろうがしっかり戦い抜いて生きてやる!
そんな感じで、見れば己を鼓舞するエネルギーも湧く楽しい作品だった。
あとは人気の無いビーチでは遊ばないことかな。何かあったら助けを呼べない。そこそこにお客が集まったビーチで遊ぶのが良いだろう。
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