こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

悲しき宿命を超えて戦えマーズ「六神合体ゴッドマーズ」

六神合体ゴッドマーズ」は、1981年10月から1982年12月にかけて放送された全64話のテレビアニメ。

 加えて、ちょっとテイストを変えてのOVA、ファンから多数の署名があって実現した劇場版がそれぞれ一作ずつ存在する。

 

 我が家に古くから眠る書物の一つに、本作の資料集というか図鑑のような分厚い本がある。これだけ古いのだから今では結構価値が出るのかもしれない。

 古すぎるためアニメ本編はまるで見たことがなかったが、我が家にある本でなら本作に触れた事があった。

 知ったからにはいつか見てみよう。そんな事を思いながら幾年。

 そんな本作を今になってやっと見る事が可能となった。なんだか見れただけでも嬉しい。

 

 本作は横山光輝の漫画「マーズ」を下敷きにし、そこにテレビオリジナル要素を加えた意欲的新作である。こちらの原作は残念ながら読めていないのだが、漫画、アニメ双方を知る先人、つまりは我が父に聞くところによる、と二つの作品は「全然違うよ」という事らしい。ほとんど別物と考えて問題ないらしい。原作も死ぬまでには読んでみたいと思う。

 

超合金魂 GX-40 六神合体ゴッドマーズ

 

 主人公少年の明神タケルはまだ17歳の少年。若くして正義のクラッシャー部隊に入隊し、戦闘機を飛ばす日々を送っている。

 

 地球人の子供として育って来たタケルだが、実はそうではないと後に親の口から真実を知ることになる。

 タケルの本名はマーズといい、ギシン星という別惑星から地球に送られた異星人だった。しかも超能力を持っていて、最強ロボット ゴッドマーズを操ることも出来るのだ。

 

 本作では、宇宙を股にかけて悪さをする異星人とゴッドマーズの戦いが描かれる。

 超能力戦士×合体ロボットアニメという二つの要素で攻め込む作品となっている。横山光輝作品だけあって、ちょっとバビル二世の感じもしなくはない。

 

 5体でならありそうなものの、本作では6体のロボットが合体して更に巨大な戦士ゴッドマーズとなる。6体合体は業界初のことだった。

 タケルの相棒ロボのガイヤーはコアの役割で、他5体のロボで顔面と四肢が構成される。

 細目が目立ちがちなロボ業界では珍しく、ガイヤーはパッチリとしたお目々になっている。しっかり見つめられるとちょっと怖い。

 

 この最強ロボのゴッドマーズだが、オタク界隈ではジ・Oと並んででなぜ動かんと疑問を投げかけられがちなネタ要素を持っている。そう、ゴッドマーズは動かないのだ。見れば分かる。

 多くの場合5体かそれ以下のところ、本機は6体で合体してるから余計に動きにくいのだとは思う。そもそも可動領域が狭いという都合もあったのかもしれない。

 大きく動いてアクションを取らずとも、ゴッドマーズは無敵だからとっても強いのだ。

 

 一年放送作品よりも1クール長い64話も作られたアニメで、中身は大きく三分割され「ギシン星編」「マルメロ星編」「地球編」に分かれている。

 

 ギシン星のズール皇帝を討つまでが一部、二部ではマイナス、プラスで種類分けされた超能力者同士の小競り合いを描いている。同じ超能力者なら仲良くしろやとずっと思えるシリーズだった。三部ではまたズール皇帝が帰って来て地球侵略をしに来る物語が描かれる。

 

 当初は半年放送の予定だったと聞くが、おもちゃの売上が良く、作品としても人気が取れたので長く続くことになったという。

 この手の商売は、実は作品価値よりもおもちゃの売上が存続の鍵を握ることもあるんだよな。作品が良くともおもちゃの収益が出なかったら打ち切りってこともあるから、大人のビジネスの世界はシビアだと分かる。

 

 シナリオに関しては、それぞれが子供向けにしては結構暗くて重めだと思う。

 宇宙を股にかけての戦いを行っているのだから、それなりに死者だって出るし、残酷な運命を辿ることもあって当たり前かもしれない。だとしてもこのアニメ、とにかく終始タケルことマーズの心身がいじめ抜かれるキツイ展開で進んでいく。

 タケルの生い立ちも現状も辛いものだから、いつだって彼にはどこか影があるように見える。

 

 ギシン星人のマーズとして地球に送られたため、タケルは敵の出なのである。それでも地球に味方する戦士に育つ。

 

 育成用カプセルに入った赤ん坊の時のタケルは、人気の無い所に降り立つ。何かあれば守護神ロボのガイヤーがタケルを守る。そんな所を偶然発見した地球人夫婦がタケルを保護し、愛を持って育てることで正しき地球人になって行く。

 この点には、ドラゴンボールの悟空ぽい生い立ち見ることが出来る。正義の格闘家 孫悟飯に拾われず大きくなれば、サイヤ人の悟空も地球に仇なす破壊者に育っていたのかもしれない。

 

 幼い頃に育ての親である明神夫妻に拾われたことで悪の戦士にならずに済んだが、元々は地球に悪なす目的で送られた。その事を大きくなって知ったタケルは当然苦しむのである。

 実の子でなかったことを嘆いたタケルが、母に向かって、どうして自分を生んでくれなかったのだと叫ぶシーンは可哀想で見ていられない。きつい。

 

 序盤ではクラッシャー隊の仲間から、中盤にも地球のお偉いさんから追い出しにあうタケルの立場も可哀想。追い出しといっても、ちょっと職場からではなく、地球からの追い出しだからすごい。人類史上最も規模のデカい排斥行為である。

 タケルがゴッドマーズで戦ってくれるからこそ、地球の危機は回避できる。しかし同時に困った都合が存在する。ゴッドマーズの核であるガイヤーには、地球ごとぶっ飛ばせるような爆弾が内蔵されている。ガイヤー大破時には当然だが、脳波でリンクしているタケルが敵に討たれて死んだ時にもガイヤーの爆弾は作動するのだ。そんな都合から、前線に置きたい頼れる戦士であるのと同時に、最後まで守らならければならない砦にもなる。それがタケルとガイヤーの扱いで最も困る点。

 本末転倒な要素の見れるこの設定はキツイ。いたら頼れるけど、危なくて落ち着かないという厄介な要素持ちなのである。

 

 仲間達は考えた結果、危ないから地球から出ていけと言うのである。めっちゃ可哀想。

 しかし、ゴッドマーズがいなくてもどうせ地球は侵略対象だから敵が攻め込んでくる都合は変わらない。

 勝手なことだが、なんだかんだあってもいてくれなきゃ人類は全滅するという都合もあってタケルとガイヤーは地球に帰ってくるのである。

 

 こんな扱いがあるくらいだから、タケルは地球の中で異分子あることを実感し、孤独をも感じるのである。可哀想だし怖い話だな。私だったら地球追い出しにあえば、逆に地球へ向けて報復に出そうなものだ。

 

 タケルの家族関係も最終的には義理の母が残るのみで、実の両親、兄、地球での育ての父まで失いどんどん孤独に追い込まれていく。

 唯一残った地球の母だけが心の支えとなり、精神安定剤にもなっている。本作には、親の愛こそがタケルを支えていると強く感じる部分がある。

 

 序盤で最も苦しい展開となったのが、兄マーグとの対決である。マーズとマーグという似た名前の兄弟でややこしい。

 やっと再開出来た兄を討たなければならないというまたまた厳しい展開がタケルの心を苦しめる。

  

 悲劇の死を迎えはしたが、作品を盛り上げたキーパーソンだったマーグは相当な人気キャラだったという。

 マーグを殺さないでくれとシナリオ変化を願うファンレターが来たり、マーグが死んだら力石徹のようにファンが葬式をあげることもあったと聞く。マジかよ、すごいな。

 

 死してもなお、残留思念として物語の合間合間に登場するくらいだから、マーグも印象の強いキャラクターとなった。

 後半では、弟を強く想うマーグの力がロゼに宿った状態の覆面ヒーロー「バラの騎士」が登場。作品を盛り上げた覆面お助けキャラとなったが、真っ白でバラの要素は皆無だった。

 

 ヒロインについてだが、本作にはタケルの同僚のミカという据え置きヒロインがいるのにも拘らず、シリーズごとにゲストヒロインを迎える方式を取っている。しかもゲストヒロインのロゼ、フローレはどちらもタケルといい感じになっている。二人のターンが多めでミカを活かしきれてなくない?とは思う。

 一部、三部ではロゼ、間の二部ではフローレがメインヒロインになっている。

 

 タケルと同じく敵側のボスの子だったフローレは、憂いを帯びた美女として描かれる。こんなに弱々しく控え目な感じなのに、声が強気な女をやりがちな榊原良子だったのが意外だった。ハマーン様の時と声の感じが違いすぎて途中まで気づかなった。

 

 オチではタケルが地球にさよならして旅立ってしまう。これはちょっといきなりで何で?となっても仕方ない。ロゼと駆け落ち的な感じに持っていくにはこうするしかなかったのかなと納得して終わろうと思う。

 

 あと気になる点は、声も顔も絶対に大塚署長やん!っておっさんが出てくる。その名も大塚長官。鉄人の時と同じく富田耕生が演じている。原作が横山光輝で共通している関係か、名物キャラがこちらにも出てくる。結構出番も多かったので嬉しかった。

 

 ざっくり全体を見ると暗い。そんな感想が出る。

 タケルは心身共に追い詰められることになり、それゆえタケルの叫びのシーンが多かったという印象もある。

 ゴッドマーズはダサいことはないが、特別格好良い感じもないかなと思う。でもおもちゃはヒットしたんだ。

 

 悲しき愛憎劇も見え、シリアスなドラマ展開が見どころなちょっと変わったロボットものだった。

 劇場版のエンディングでは、作品を映画化するために奔走したファン達もクレジットされているではないか。そんなことから、多くの人に愛された作品だと分かった。

 

 

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