こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

中二病にスポットが当たった10年前「中二病でも恋がしたい」を振り返ろう

 今から10年前ってどんな楽しいアニメがあったっけ?

 

 そりゃゴミみたいなアニメだってあったけども、それに混ざってもなお良い物ってのは光る。間違いなく光るのだ。そんな光って光って眩しかった10年前の秀作、それが「中二病でも恋がしたい」という変な名前のアニメだった。

 

 その昔ならクラスの端っこに数名いるかいないか、そして最近ならクラスの端っこでも真ん中でも、石を投げればきっと当たるってくらいの確率でたくさん増えたのが中二病罹患者(とある田舎にて行った自分調べ)。

 だがそれも決して悪いものではない。時にとっても楽しい、後でたっぷり恥ずかしい。振り返った時に人生を生々しく感じさせ、同時に愛しくも想わせる。そんな良き作用もあるのが中二病なのだ。かかっている間はきっと楽しい。

 

 最近では雨後の筍レベルで中二病が書いたような小説がたくさん出てくるようになった。このアニメは、そんな中二病が考えたような世界観のファンタジーではなく、現実世界の日本に生きる中二病の人間自体の青春物語を濃く描いたものなのだ。

 中二病っぽい作風のものはそれまでもたくさんあったが、本作には花ではなく根っこを狙った斬新な視点からの攻めが見られた。そこに突っ込んでいく目のつけどころは面白かった。

 

 中二病だからということで人からありがたく想われることもないだろう。むしろどっちかというと蔑ろにされるのかもしれない。がしかし、そんな病の有無に関係なく、人が人を好きになる行為、つまり恋をしたい衝動にボーダーなどない。地球にある全部の命が想って感じて起こすアクションとして不思議ないもの、それが恋なのだ。

 そんなわけで、中二病でもしっかり恋がしたいと願う若者を描いた正直な物語なのである。美しい。

 

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 主人公少年 富樫勇太は元中二病であり、一応の卒業を迎えた身ではある(でもたまにぶり返す→完全治癒は難しい)。 

 そんな主人公は、高校入学と共に現役の中二病に絡まれることになり、なんだかんだと愉快な青春を送る。

 

 基本設定を知った一話を見て「バカみたいなアニメが始まったな~」という感想が最初に飛び出た。

 基本的にはバカみたいな展開で進むが、ちゃんとラブコメしていて、最後にはグッと心を掴むキュンキュンする純愛で落とす。

 結果としては心に清涼な風を吹かせる良き青春ものだった。これは確かに異色作ではあったが、押さえる所は抜かり無く押さえた名作だった。

 

 割と無難な所を攻めてしっかり成功するという勝利の方程式で社を大きくしていたあの京アニが、京アニらしからぬ変なアニメの製作を担当している。当時としてはこの点に結構驚いた。

 これの前にやった「日常」で変なテンションの作品への耐性が完璧なものになったようだ。結果、上手いこと妙なテンションを演出して楽しめた。京アニとコレの原作の相性はとても良かったようだ。

 

 舐めしゃぶりたくなる程に可愛い。いつだって京アニ女子にはそのくらいに強い魅力がある(全部個人調べ)。というわけで出てくるヒロインズはめっちゃ可愛いのだ。

 

 痛い。初手からとっても痛いメインヒロインの小鳥遊六花(たかなしりっか)には強烈なエルボーをもらった(精神的に)。

 怪我もしていないのに眼帯、その下はカラコン。雨も降ってないのにフリフリの傘。ゴスロリチックなイケてる服。もう出で立ちからして色々完成している。新時代の萌えヒロインはこんな感じなのかと新しい可能性が見えすぎた。

 

 続いて出てくる変な女達。

 モリサマーこと丹生谷森夏(にぶたにしんか)、ミョルニルハンマーの使い手の凸守早苗(でこもりさなえ)、寝てばかりの五月七日くみん(つゆりくみん)と、一癖も二癖もあるけったいなヒロイン達が作品を賑やかにする。どいつもこいつも一発で読めない難しい名前をしている。

 

 これらヒロイン達の持つ程良いバカ加減が好き。特に凸守のキャラ性は一番バカだったかもしれない。Fate以外で見て聞くサーヴァントってこんなにバカなのかと想ったものだ。めっちゃ好きだったけども。

 単体でも楽しい連中だが、各員が部活を通して絡み合うことで生まれるユニークな関係性も楽しめた。

 特にモリサマーと凸守が愉快に喧嘩する関係性には安堵感と萌えを見た。序盤こそ真面目な委員長キャラだったモリサマーが後にあんなネタ女だったと正体を明かす流れは予想出来なかったな。

 

 メインで登場する4人のヒロインを演じた内田真礼上坂すみれ、赤﨑千夏、浅倉杏美とは、それぞれココでお初となった。

 加えてOP曲「Sparkling Daydream」を歌ったZAQともココでお初。挿入曲、キャラソンまで手掛け、クリエイティブな一面を発揮しまくりだった。コレのOP曲は神っていて、10年経ってもまだ聴いている。マジで夢ならたくさん見た。ZAQは良き音楽家

 役者に音楽家に、新時代の新しい才能が開花した現場でもあった事が、この作品の大きな価値に繋がっている。

 

 主要キャラが集まって結成した部活の名は「極東魔術結社」というものだった。学校の部活なのに結社とか入っている。バカバカしく大仰な名前で笑える。名前だけでは何をするのかまるで分からないこの部活の内容なのだが、活動内容を見たところでもまだ良くわからない。 

 立ち上げ時には「極東魔術結社」。後にくみんが所属する昼寝部と合併して「極東魔術昼寝結社」。そしてモリサマーを迎えた最終形態が「極東魔術昼寝結社の夏」と、どんどんバカみたいな名前に変わっていく。この小気味よいネーミングセンスには笑った。モリサマーの成分がしっかり独立して含まれているのにも笑えた。

 

 このくらいの時代から、変な名前で中身は結局ダラダラするだけみたいな、アニメならではの部活が増えて来たよな。

 近い時代のアニメなら、隣人部、ジャージ部、娯楽部、GJ部、無所属を指すものでなく正式に存在する帰宅部などがあった。振り返ってみると、この時期が変な部活のオンパレ時代だったんだな。

 

 印象的な賑やかしキャラに一色誠というのがいた。コイツがかなり好きだった。

 一色のキャラ性を引き出すためにバカっぽく演じている保志総一朗の活躍にも注目出来る物があった。

 主人公よりも等身大のバカな学生って感じがして親近感が持てるのが一色の特性だった。と言っても私は優等生だったので、よりクラスにいそうなのがコッチだという観点からの共感と親近感である。

 

 一色のやらかし事件というのが、女子禁制の男子のみで密かに行っていたクラスの可愛い子ちゃん選手権。これって人様の美醜を競って優劣を決めることだから、学校で行うには道徳的にアウトかもしれない。でもちょっとだけ面白そうとも思った。

 それの集計結果が書かれた生徒手帳を落としてしまい、拾ったのが女子だったので、一色はクラス中の女子から敵視されることになる。まぁ女子の気持ちも分かる。

 このネタが本当にどこぞの学校にありそうで、女子にバレた時にはマジで怖いんだろうな~とか思って見ていた。実際に私のお兄ちゃんの高校の同級生は、コレと同じ事をこっそりやっていたという。

 男子学生のおバカさが分かるこのエピソードは印象的だった。このやらかしを受けて、一色が頭を丸めて反省するのも笑えた。

 

 他には、用語としてもここでしか聞かないおバカだったりパワーワードだったりするものが飛びかっていたのも印象深い。

「ダークフレイムマスター」「バニッシュメントディスワールド」「プリーステス」「ミョルニルハンマー」「マビノギオン」「偽モリサマー」などなど、これ以外にも一般人が常用しないであろう中二病ならではの妙なワードが飛び交うのだ。愉快に頭のおかしい世界観が心地よい。

 

 特にマビノギオンを巡って本性が明らかになるモリサマーの下りは印象的。この流れで本物なのに凸守から偽モリサマーと悪口を言われるモリサマーは気の毒。

 好評を受けて後に放送した第二期では、丹生谷森夏とは別人の本物の偽モリサマーというややこしいキャラまで出てきて楽しかった。本物の偽モリサマー登場エピソードで凸守と本物のモリサマーがちょっと仲良くなって百合百合しくなるのも良かったな。この二人の関係性がすごい好きだった。

 

 演出としてバカらしくて面白いと思ったのは、時に挿入される中二病ワールド。

 普通に日本の街で暮らす皆さんにの目には、当然日々の暮らしに見る風景は普通の物として映っている。だがしかし、中二病の人間は特殊フィルターを通して世界を見ているのでそこの事情が変わってくる。

 普通の人が見る世界が、六花や凸守にはこのように見えているという愉快すぎるギャップに笑える。ユニークな想像力を持つことと病気は紙一重なのである。

 

 中二病達が見る世界はハイファンタジーな世界観で、すごい武器が見えれば激しい爆発だって見える。こういう動きの速い妄想世界でのバトルシーンには、高い作画力を誇る京アニならではの風格が良く見える。無駄なシーンといえばそれまでだが、ヒロイン達が妄想バトルを展開させるシーンの書き込みは結構すごい。

 ここでの仕事が、後に展開する本格バトル作品「境界の彼方」製作時に役立ったのかもしれない。不愉快ですを言いまくるあちらの作品も好きだったな。

 

 バカなのかと思ったら、やはり勇太も六花も恋にときめく等身大の男女という事が分かって安心できる後半展開も楽しい。

 文化祭の準備中に、教室のベランダから落ちそうになった六花を勇太が救出するシーンがある。助かった六花と勇太が抱き合うシーンには「なんか可愛い」とか思ってキュンキュンしたものである。

 

 ヒロインズの役者を見れば当時のフレッシュな顔ぶれが並んでいたと分かる。主人公の勇太は福山潤だったし、その他の人物も結構ベテランで固められていた。役者はしっかりと良いのが揃っていた。

 ダンディに聴かせるナレーションは大御所の大塚芳忠だった。要所要所でおふざけアリなちょっと変わったアニメだったが、最終回は大塚芳忠がナレーションで良い事を言っていた。なので中二病も悪くはない、むしろ期間限定の良さがあるくらいに思えた。というわけでナレーションも良い味を出していたんだな。

 

 というわけでオタッキー要素あり、恋もありの充実の中二病ライフが楽しめる良きアニメ、それが「中二病でも恋がしたい」だった。

 

 世に溢れかえる中二病罹患者達よ幸あれ。そして新しい世界へ~♪

 

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