こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

映画は見るのも作るのも楽しい一流娯楽「映画大好きポンポさん」

「映画大好きポンポさん」は、2021年6月4日に公開された劇場アニメ。

 

 もともとは5分枠のテレビアニメで放送する予定だったらしいが、企画がお流れとなり、すったもんだの末に銀幕デビューとなった。そんなドラマティックな経緯を持つ作品である。

 

 趣味のネットサーフィン中にたまたまタイトルを見かけて気になり視聴。

 作品の存在を知った時には、とりあえずポンポさんというヤツが出てくる事だけは分かるタイトルだな~、そしてマジで誰なんだと思った。 

 

 内容は映画を作るクリエイターの青春を描いたもの。映画好きが集まる映画館でやるにはうってつけの内容だな。映画好きなら刺さるものがあるはず。

SHIROBAKO」とかが好きならこちらもイケると思う。あとはポンポさんのヒロイン属性のロリが好きヤツもきっとイケる。

 

 絵柄はポップ、そして魅せる演出もこれまたポップ。そのくせ暑苦しいまでのストイックなクリエイター精神を描いている。とっつきやすい見た目で中身はしっかり硬派なので見応えがあると思う。絵や背景も綺麗だし、全体的に上品かつ上質な一品である。

 

 映画に向き合うにあたっての心構えが得られる質の高い作品となった本作を見た感想とか書き殴っていこう。

 

映画大好きポンポさん

 

 ハリウッドぽいけどそうではないニャリウッドを舞台に、新人映画監督ジーンが映画作りに捧げる青春が描かれる。

「ニャリウッド」のネーミングセンスを見ると、リアルにあるものと被る要素の避け方として、ホント最低限な回避行動しか取ってないなぁと思える。語感としてもちょっと可愛いニャリウッドはお気に入りワード。

 ジーンは高木さんの西片くんを睡眠不足にしたような見た目だなぁ。

 

 タイトルにあるポンポさんは、冴えない新人監督ジーンを導く良き先輩として描かれている。こういう立場のキャラになるとは意外。ポンポさんはチビでとても可愛い。勢い良くドアをぶち開けるシーンが複数あることから、結構暴れたギャル要素もありな元気ヒロインだと言えよう。ロリキャラを演じる事で更に芝居が映える小原好美の声も良し。

 

 ジーンと共にこちらも映画デビューとなる新人女優ナタリーの成長もピックアップされる。シンデレラストーリーを登っていくナタリーの青春にも注目出来るものがあり、とっても可愛い子だなと思える。バイトをしながら女優を目指すナタリーを応援したくなる。

 最初は髪が長いけど、映画の役作りでばっさりカットする。映画一本の中で二段变化を見せてくれる良きヒロインだった。どちらの髪型もイケる。

 

 映画業界関係者の生き様を見せる一方で、銀行マンの矜持を示すアランの生き様も描かれる。本筋がからやや離れるものの、こちらの業界で生きる者の姿を追うのもまた一つの見所と言えよう。

 

 映画撮影に入るまでの物語をジーンサイド、ナタリーサイドで見せ、その後は撮影シーンに入り、ジーンの大仕事となる編集のシーンを描いて最後には映画が完成する。物語の主な流れはそんな感じ。

 

 全体として見えるのは映画作りの極意。これには感心する気づきが複数含まれる。

 ジーンにとっては先輩のポンポさんの語る映画作り概論には引き込まれるものがある。そりゃ人それぞれ考え方はあるだろうが、ポンポさんの語るものも一つの正解だと言えよう。

 映画ってのは、最悪女優を魅力的に撮ることが出来れば見世物としてイケる。軸としてそこを確立すれば後はなんとでも面白く出来る。こんな事が言えるポンポさんは一端のクリエイターだな。格好良い。

 

 泣けるテーマ性の映画で客が泣くのは当然。対しておバカなテーマ性なのに泣けたらなんかすごい。そんな事も言っているポンポさんは、様々なテクニックを使うことで筋としては下らない映画を感動的なもの仕上げるプロデュース能力を持っている。実際にポンポさんの手掛けた作品を見たジーンが、下らないのに面白いと感想を述べている。

 バカみたいな内容なのに面白いってのは、娯楽を手掛ける技術としては確かに高等なものだと思う。昨今だと深夜にやっているラノベ枠とかがそれの挑戦の場にふさわしいかなって思う。誰が見てもアホみたいな話なのに、何か気になって最後まで楽しく見れちゃうものもたまにあるものなぁ。で、そういうのに出会うとアホな話なのにちゃんと面白く見れるってすごいと思ったりもする。

 脚本の質に依存するのではなく、どんな本が出来上がろうと面白く見せるのが一流クリエイターの証なのである。ポンポさんの言う事には説得力があるなぁ。

 

 ジーンを監督に選んだ理由がポンポさんの口から明らかになる。これも映画クリエイターの真意を突いたものであり、聴けば頷ける面白いものだった。

 ジーンと比べて他の同期連中は目がキラキラしていた。でもジーンはキャラクター性として死んだ目の持ち主であり、ゆえに一般的に言うリア充ではない。

 ポンポさんは、幸福は想像の敵と考え、それが叶わないヤツ程まだ手にしない幸福が叶う「面白い」を生み出すための思考を忙しく行えると言っている。確かにリアルに満足しきってそれ以上の幸福を想像しない者があれば、それはクリエイターとしては致命的欠陥となるだろう。

 要はハングリー精神がある方が質の高い想像物を作るのに適しているって事を言っている。腹が減っていたら膨らせるためにあれこれ頑張るが、満腹なら満足しきって頭も体も働きが鈍るってわけだな。すげぇ考察力で物を言っているなぁ。

 

 他にも面白いのは、娯楽に長い拘束力を求めるのはナンセンスってこと。娯楽とはいえ集中力を注ぐのは人にとって疲れることであり、ストレスにもなる。だから長い映画は嫌いであり、絞って90分にまとめたくらいのものが良いとポンポさんは考える。チビの頃に爺さんに長い映画を見させられたことから長い映画にトラウマがあるっぽい。

 長い映画が嫌いの話題でポンポさんが例に引っ張ってきたのが「ニュー・シネマ・パラダイス」だったのは印象的。私は好きだけどね。映画好きならとりあえず見るやつだな。

 この時間についての考えも結構納得できる。長いですぐに思いつく名作と言えば「アマデウス」「風と共に去りぬ」あたりだが、確かにこれらは作品としては好きだけど長いから見れば疲れを感じる。

 ポンポさんの意見に対してジーンは「好き」をそれだけ長く楽しめるのだから面白くて長い分には一向に構わないというガチ映画オタならではの反論をしている。こちらも確かに分かる。楽しいが長いのはやっぱり楽しいし気持ち良い。

 色々考えたところ、しっかり面白くて90分で落とす。これがベストな落とし所なのではなかろうか。このシーンを受けて、ジーンも自分の手掛けた映画を90分でまとめている。

 

 ポンポさんの言い分には、極力無駄を避けてダラダラした作品にならないようにって事が含まれる。時間経過による場面変化をスマートに見せることで、物語にメリハリをつけ、より簡潔にまとめる。そのテクニックの使い所について迫った展開も見られた。ジーンが死ぬ程頑張ったフィルム編集作業でそこら変の事情が良く見えてくる。

 

 筋の通った理論を解くインテリなキャラ性が見えるポンポさんを演じたのが小原好美だったのは印象的。藤原書記とかシャミ子などのギャグ要員というか軽くアホの子の役をやりがちな女優だけに、普段は見ないインテリ喋りの芝居に意外性があった。どんな役も出来てこそ一流役者であると分かるもの。 

 

 ジーンが撮った映画フィルムは72時間もあるのに、それを90分にまとめるのだから、編集には究極の引き算スキルが求められる。部屋に閉じこもって連日編集作業をするジーンの苦労もよく分かる。

 せっかく撮った物の多くを切り捨てるわけだから、これは胃が痛むはず。自分が出た箇所をカットされたナタリーの悲哀も見えた。仕事の全部が公の場に出るわけではないから厳しい世界だな。

 

 編集者の仕事現場を映すという地味な場面が後半の見所となり、そこに割く尺もまあまああった。普段は見ないお仕事の現場で珍しいということと、ジーンがここでこそマジな顔を見せることから良き見所になったと思う。

 

 序盤ではB級映画の15秒スポット作りをポンポさんから依頼され、ジーンは客の興味を引くスポット作りのために邁進する。

 映画本編は見なくとも、色んな所で流れる15秒スポットを見る人まらたくさんいる。実際のところ、映画ってのは本編よりもその紹介VTRの方が多くの人に見てもらえることが分かる。

 確かにそうだな。このに私もテレビスポットなら何度も見たけど本編は一生見たことがないという映画に複数心当たりがある。故に短く紹介するスポット作りはマジに大事だと作中で語られている。

 スポットの完成度いかんで社員の明日の飯が決まるとまで言われているらしい。編集者が魅力を凝縮して短い作品を作るのにはすごい苦労があるのだと分かる。胃が痛くなりそう。

 

 同じ時間軸をダラダラ見せる余裕はないので、サクサクとした場面切り替えの演出が重要だと本編で言っている。その要素が見える作りになっているのも本作の良さ。

 作中で時間や場所に動きがあれば、実におしゃれでスピーディーな演出でそこを見せている。

 時間経過を伝える字幕の出し方などの技法が面白い。序盤でジーンがポンポさんの書いた脚本を読むシーンがあるが、そこでの時間経過の見せ方はおしゃれでナイスアイデアなものだった。映画撮影開始前のナタリーのレッスン過程をリズミカルに見せる手法も面白くて良かった。

 

 意外にも熱血映画作り魂が見えるシリアスさのある作品だったが、緩く和むシーンもいくつかある。

 マーティンがミスティアに「SNS交換しようぜ」と言ってナンパをかますが、「スマホ、持っていません」と多分嘘をつかれてかわされるシーンが前半と後半それぞれにある。

 ミスティアのセクシーさも良かったな。売れっ子女優ミスティアの貫禄を見せる加隈亜衣の綺麗な声も好きだった。

 ペーターゼンがジーンに会う度に必ず名前を間違える。間違って呼ぶ名前は有名なプロレス選手の名前だという小ネタ要素が含まれている。プロレスは詳しくないのでBDのオーディオコメンタリーを聞くまで分からなかった。

 これら天丼ギャグ要素が何気に好き。

 

 起承転結をスマートに見せるまとまりある映画で見やすい。そして楽しかった。ヒロインも可愛くて目の保養にもなる。総合的に良き作品だった。やっぱり映画って面白いと改めて思える点がとても素敵。

 原作ではコレの続きもあるっぽいので2作目とかもやってくれると嬉しい。

 

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