「小さな恋のメロディ」は、1971年に公開されたイギリス映画。
イギリスの作品なのに当時は地元で受けず、その代わり日本ではめっちゃ受けたらしい。日本人の琴線に触れる何かがある。それも見れば分かる。
内容
作品の舞台はロンドン。主役は学校に通う子供達。
11歳のダニエル少年は、悪友のトムらと共に平和な学校生活を送っている。その中で、同じ学校に通う少女メロディに恋をする。
まだ若く純粋な二人の恋心は、まっすぐに互いを求め合う。その結果「結婚したい」という答えを導き出す。
大人達が反対する中、トムが仲人となって子供だらけの結婚式が開かれる。
学校の授業をサボってそんなことをしている子供達に襲撃をかける大人達、それに応戦して暴れる子供達、2つの勢力が激突する中、ダニエルとメロディはトロッコに乗って自由への脱走をぶちかます。
この逃避行の行く末には何が待ち受けるのか。そんな事を思わせる長く続くトロッコの線路が映る中、物語は幕を閉じる。
感想
最初に来るざっくりな感想が「意味なく何か良い」というもの。理屈ではない。意味なく良いものだ。私はそういう作品を見たんだと思えた。
そんなわけで、見ればとりあえず心が洗われる。
瑞々しくそれでいて拙い透明感ある男女の恋模様、不良だけど実はいいヤツな悪友、これらの要素に爽やかな青春の香りがする。
おしゃれな街並みが見えるばかりと思いきや、田舎らしい自然の美が見えたりもする点に癒やしと懐かしさを感じる。
こんな学校、街並み、自然、どれにも触れた経験がないのに、どういうわけか全てに懐かしみを覚える。これが映画マジックかぁ。心がこの年代の若者としてトリップしているのだろう。楽しいぜ。
子供たちが学校帰りの寄り道先として訪れる墓地は良きスポットだな。墓地とはいえ不気味さはなく、いい感じのビジュに仕上がって芸術的にも見える。
ここで女子達が隠れてイケメンのポスターにキッスしているのなんて、背伸びしたいガキンチョ臭くて可愛らしい。
そしてなんと言っても心馳せるものがあるのはラストのトロッコのシーン。長く続く線路の周りに広がる田舎風景には和むものがある。キレイなショットでの落ちだったな。トロッコの線路を引き画で映して落とすラストカットは印象的に残る。
世界観も良いが、所々に見える良き風景も魅力になっていた。
主要人物となるダニエル、メロディ、トムら子供達は皆キレイな顔をしている。ダニエル、トムは顔のタイプは違えどそれぞれイケメン。そんな彼らも公開からこれだけ時が流れた今となってはおっさん、おばさんになっているだろう。改めて古い映画だな。
身分や階級についてとやかく言う時代背景の中にあっても、それを無視して結ばる友情がある。そういった点もテーマの一つとして取り扱っている。
ダニエル、メロディ、トムの家庭は、階級分けすればそれぞれが異なるものに属する。それでも関係なく友人や恋人として深まっていく。子供たちは、友情に邪魔な概念を取っ払って互いを真に見つめていると分かる。その点が清く美しい。
学校の子供達の活き活きとした日常が見える点も楽しく可愛らしい。
子役がしっかり演技して魅せるというよりも、普通にしている自然さが見えるのが良い。本当に学校のワンシーンという感じ。てか学校デカイし、子供多いなと強めに思う。
ちょっと気になるのは子供がタバコを吸っているシーンがあること。めっちゃプカプカしている。古い時代の外国でならセーフだったのか?チビがタバコを吸っている絵面って思った以上に衝撃と違和感があったな。
トム達ワルガキが集まって爆弾の実験をしているシーンが印象的。あのようなたいした意味のない暇つぶしの集会は子供の内にならやりがちだ。とある会社を見れば大人同士でも集まって意味のない会議をしている事があるのだけども(笑)。
共感と親近感の湧く子供らしいコミュニティが見えた。
この学びに意味はあるのかと思い教師に反抗的な態度をとるトムの言動もちょっと理解出来るものがある。
ナマを言ったお仕置きの尻叩きのダメージ軽減のため、ズボンにタオルを入れておくという悪知恵が見える点にはクスリと笑えてしまう。
仲良しの友達が女と付き合うようになれば、自分と遊んでくれなくなってジェラシー。そんな都合がトムに見える。そこは正直な人間心理を描いていると思う。
メロディの事でトムがダニエルをからかい、その結果取っ組み合いの喧嘩になってしまう。でも根はいいヤツのトムは後になって謝るし、友情を重んじて結婚の後押しもしてくれる。トムのニセ神父役はちょっと面白い。優しいヤツなんだよな。
純粋無垢な子供の視点による愛の追求こそが作品の見所である。
結婚は親に反対される。10歳そこそこのガキンチョが何を言うのだと大人は思うだろう。そんな中で心情を吐露するメロディの訴えにキュンと来るものがある。
結婚は二十歳かもっと大人になってからと大人に言われれると「今の倍の年齢になってしまう」「今一緒にいたいのに」「ただ幸せになるのになぜたくさん苦労するのか」とこぼすメロディ。メロディ達子供の身になって考えれば、そういう意見が出るのにもちょっと納得できる。
敏感な子供ならではの鋭い考察がある。ここら辺の複雑な心情が見える点にはキュンと来る良さがあった。
愛とは戦いでもある。それが分かるのがラストの大人VS子供の大合戦。ここ、普通に面白いんだけど。外国でやる「ぼくらの七日間戦争」みたいになっていた。
ここへ来てそれまで複数回挟まれたオタクくんの爆弾作りの設定が活きてくる。この闘争で使用したものは大爆発の大成功を収める。
爆弾で燃やされた車を見つめる大人達の焦燥感よ。これが決戦終焉の狼煙となった。
トムの重大な仕事はトロッコの発車係だ。友人二人が乗ったトロッコを見送った後には、先生との一騎打ちというラストミッションが待っていた。
これまで自分をしばきまくってくれた先生への復讐もこめて魂のしばき合いが開始。でも先生は速攻逃げるのが笑える。トムが活躍するココが好き。
こんな騒ぎの中、トロッコで愛の逃避行に出た二人は、この後どうなるのだろうか。色んな想像が膨らむが、ここから先の未来は一切画かれない。
若さが爆発したこの楽しさの余韻を残したまま我々視聴者は日常生活に戻るのが良いのだろう。視聴者に何から何までオチを与えることはない。この先を予想するのは無粋にしてナンセンスだと言えよう。
こんなどうしようもない暴れたオチなのに、どういうわけか後味が良い。そんな謎の魅力に包まれた一作が「小さな恋のメロディ」だった。
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