こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

強盗の青春「俺たちに明日はない」

俺たちに明日はない」は、1967年のアメリカ映画。

 

 その昔実在したボニーとクライドの男女強盗コンビの青春を描いた物語である。

 この二人の名前を始めて知ったきかっけはTM NETWORKの「SELF CONTROL」を聴いたことだった。歌詞に二人の名前が出てくる。聴いた時には「え、誰よ?」と思ってネット検索したんだよな。

 

 そんな強盗映画の今作はあまりに有名過ぎることから過去に何度もテレビで流れている。7、8年前に放送していたのを一度視聴済みだが、程よく記憶から消えかけているので再視聴した。

 二人が蜂の巣にされて人生を終える衝撃のオチだけはずっと覚えている。あのオチはすごいな。そこにたどり着くまでの物語をしっかり再チェックだ。

 

 そういえばこれの他に有名な男女強盗コンビに「ディック&ジェーン」なんてのがあったな。テイストが全然違うけど、あちらの強盗映画も別の魅力があって良かった。

 あとはSMAPのヒット曲「俺達に明日はある」も思い出す。真逆の意味だけどタイトルが似ているから記憶がごちゃ混ぜになるんだよな。

 そんな縁から「俺達に明日はある」を聴きながら感想とかを書き殴って行こう。

 

俺たちに明日はない (字幕版)

 

 刑務所から出所して間もなく強盗を働くクライド、それに興味を持って心惹かれるボニー、この二人が会ってすぐに意気投合し銀行強盗をやりまくるお話。

 旅の途中で手癖の悪いガソスタ定員のC・W・モスを仲間にし、その後クライドの兄バックと妻のブランチも流れのままに合流し5人の強盗団が完成する。

 

 金は取るし、車もめっちゃ盗む。盗んだ車で旅するロードムービー感も楽しめた。途中で入る過激な銃撃戦やカーチェイスにもエンタメ性がある。スリルありな点で良かった。

 

 人から金と命を奪いながら街から街へと旅するお尋ね者共だが、登場キャラは妙に人間臭くて好感が持てる。その点が不思議で大きな魅力。

 

 銀行に家を差し押さえられて出ていくしかなくなった農夫と関わったことで銀行強盗に出るクライドの心理には義賊的なものが働いていた。クライドと農夫が一緒になって空き家に銃弾を打ち込むシーンには哀愁を感じた。

 初の銀行強盗のお仕事の失敗には笑える。襲ったは良いけど既に倒産して店を畳む準備中で奪う金も無かった。これを受けてボニーがめっちゃ笑っているのも記憶に残る。初手にコミカルな要素を置いているが、次からは人死にも出る過激な強盗になる。

 

 元々は殺しをするつもりの無かったクライドが、人殺し後には激しく動揺している点はシリアス。仲間や兄弟の事を心配したり、なるたけ人に危害を加えたくない最低限の人の心を残した強盗なのが珍しかった。

 

 実家のママの事が心配で会いに帰るボニーの心は実に一般的。親不孝な事をしたが、それでも母想いな娘であった。

 こんな事をしたからには一般人には戻れず、後は逃げるだけの人生だと母に言われて絶望するボニーを描く点も印象に残る。

 

 弱者から金はもぎ取らず、強盗時にも「それはしまっておけ」と言ってくれたりもする。妙に人間味がある新手の強盗スタイルに面白みがある。

 新聞に情報が出る有名人となり、一部の大衆からは人気者になっている点が不思議。

 一般人のカップルを車に乗せてドライブに連れて行って楽しんでいるのも印象的。大衆に明るい強盗団だった。

 

 強盗団5人での旅にも面白みがある。メンバーはとても個性的。

 C・W・モスの愛嬌がある一方で人相が悪いとも言える顔つきは独特で記憶に残る。 

 クライドと兄のバックが再会した時のテンションの高さに笑う。おっさん同士なのに仲良しでめっちゃはしゃいでいる。バックが劇中で2度披露する話は笑えない。バックの学生のようなテンションはどうしたのだろう。

 

 あまり賢くない妻のブランチは仲間にするにはデメリットが多かった。警官がアジトに攻めこんで来た時にはバカみたく騒いでヒステリーを起こすし、後半は間抜けにもC・W・モスの情報を保安官に売ってしまい、それが強盗団壊滅に繋がる。

 そんなわけでブランチが絶妙にムカつく。ボニーが切れるのも分かる。大した仕事をしていないくせして強盗した分の分前をもっとよこせと言ってくるのもややムカつく。面白いポジのキャラではあった。

 

 運命の下で出会ったようなクライド、ボニーのお似合いの男女だが、クライドが性的不能ということで体の相性は良くない。二人がキスしてベッドインするシーンが中盤にあるが、クライドの股間がエレクトロしないことで不発に終わる。男前でスケベそうといえばそうなのだが、それでもその手の行為が苦手というクライドのキャラ性は意外だった。

 しかし牧場でバカンスを取る後半シーンでは野良行為を完了させた模様。自分にもちゃんとソレが出来たのだと喜んでいるクライドを見れた事が嬉しい。それだけに最後にあんな事になるのが残念。

 

 C・W・モスの実家で憩いの一時を過ごすクライドとボニーを映す後半展開だけを見ればとても強盗の話には想えない。田舎風景をバックに今後の人生の事などを話し合う二人だけの優しい時間が流れる。その中でクライドはやっと男になれたのに、モスの親父が情報を売ってしまうことであの衝撃のラストに繋がる。

 

 誘導尋問に簡単に引っかかって仲間の情報を売ったブランチのミス、そこからのモスの親父の裏切り。この過程を受けて、かの有名な一斉射撃による人体蜂の巣オチに辿り着く。

 本当にあっという間のオチ。絶対にやりすぎな量の弾丸を打ち込んで苦しむ間もなくクライド、ボニーの処刑は完了する。その後どうなったの説明もなくここでスパッっと終劇。この潔いシンプルな落とし方が逆に後々印象に残る良いものになった。しばらくぶりに見てもラストだけは忘れていなかったもの。このラストシーンは映画史に残る衝撃の名場面。

 

 

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