こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

イケメン幽霊と滑りまくってトリノオリンピックを目指せ!「銀盤カレイドスコープ」

銀盤カレイドスコープ」は、2005年10月から12月にかけて放送された全12話のテレビアニメ。

 

 以前、熱血サーカスアニメ「カレイドスター」の情報を探して視聴した時、似た名前のがあるな~と思って偶然存在を知ったままずっと見ていないアニメだった。そして、カレイドスコープに主演している川澄綾子が好きで、彼女の事を調べていたら出て来たタイトルだったことからも知っていた。

 この度、ふと見てみようとなって視聴したところ、結構面白くて一気見してしまった。12話なので割とサクッと行ける。意外にも楽しくて一話が短く感じたぜ。全然退屈しない作品で、総合的に好きなヤツだな。

 

 本作は女子フュギュアスケートをテーマにした作品であり、その点は当時でも今でも珍しい。プリティーリズムやユーリオンアイスが流行るより前から滑りまくりアニメがあったのかと勉強になった。

 

 特徴的なのは時世とリンクしている点で、主人公は放送当時だと開催直前だったトリノオリンピックを目指して戦っている。リラの咲く頃にバルセロナ五輪を目指して戦っていた「YAWARA!」みたいな感じの仕組みになっているな。

 これはトリノを楽しみにしているフュギュアスケート好きのアニメオタクには相当受けたはず。まぁそこまで厳選された趣味を持つ人物はあまり多くはいなかったと思うけど。

 

 しかしトリノとは、古すぎて知らないなぁ~。地理にまるで興味がないため、地球儀のどこら辺にあるのかも知らないし、誰が出て何をした大会なのだろう。スケートをやる人といえば、イナバウアーが代名詞だった例の彼女と羽生ゆずれないの元ネタのあの人くらいしか思い浮かばない。

 思えばまずは五輪、次にフュギュアスケートをまともに見たことが無い。てか五輪をやればアニメやバラエティがお休みになるので結構迷惑という思い出しかない。そんなことからトリノに馳せる想いはゼロだが、それゆえ新鮮な想いで楽しめた。

 

 タイトルの「銀盤」はスケートリンクを示し、カレイドスコープは「万華鏡」の意である。

 戦いの場を銀盤と呼ぶのは、「侍ジャイアンツ」で4つの塁をダイヤモンドと呼んでいたのと同じようなものか。勉強になる。 

 他にも競技者が審査結果を待つ席を「キス・アンド・クライ」と呼ぶなどの学びも得られた。スケートの事をマジで知らなかったので賢くなれたね。

 

銀盤カレイドスコープ1 (通常版) [DVD]

 

内容

 100億ドルの美貌を持つ16歳のスケート選手 桜野タズサの青春が銀盤上に弾ける。円単位じゃないんだ。

 

 その内容を詳しく語るとこうだ。

 

 タズサはとある大会で技を決めようと思ったところ、大失敗して頭から派手にコケて気を失う。

 時を同じくして、カナダ人の少年ピートは、フライト飛行時に墜落して死んでしまった。

 で、どういうわけか気絶から復活したタズサに、国境を越えて幽霊になったピート少年が取り憑いてしまうのだ。

 

 天界の方で色々手続きがあるのか、ピートは100日間は成仏出来ず、タズサに取り憑いて過ごすことになる。

 仕方ないので、カナダ人の幽霊をくっつけたまま、タズサは学校にスケートの訓練に、マスゴミとの戦争にと忙しい青春を過ごすのである。

 

感想

主人公が好き

 主人公のタズサは傲慢で毒舌なところもあるが、嘘のない気持ち良い人間性が好ましいヒロインとして描かれていた。歯に衣着せぬ物言いは気持ち良いし、選手として筋を通して戦うファイティングなヒロイン性も良かった。かなり図太い女子だな。

 スタイルも良く可愛い。性格も見た目も好きなキャラだった。川澄綾子の透明度の高いボイスも好きだった。

 

 一話目冒頭から派手に技をミスし、そこからもミスは続き、三大会連続で演技中にミスをしてしまう。それは競技者として悔しいし、その悔しい点をマスコミに突かれて煽られもするので精神的にはかなり追い込まれることになる。それでもタズサのメンタルはかなり強く出来ていて潰れない。総じて強い女であった点は良い。惚れる。

 アスリートってのは、心身共に屈強でなければやっていけないのだな。そんな事も思えて来る。

 

 あとは斎藤千和が演じたタズサの妹もちっこくて可愛くて良かった。

 

イケメン幽霊との青春

 スポーツものである点と共にプッシュする要素は、イケメン幽霊と共に青春を謳歌すること。この要素はちょっとだけ「満月をさがして」を思い出すものだった。

 最初はピートの事が迷惑でウザいと思っていたタズサだが、二人で夫婦漫才みたくコミュニケーションを重ねて行く内に、心と命をも重ねたソウルフレンズになっていく。二人のやり取りは楽しく、後半に見る絆の深さにやや泣けもする。

 

 タズサは、自分にしか見えていないピートに話しかけて喧嘩もするので、周囲の人間には「コイツ、イッちゃってるのかよ」と引かれてしまう。いい加減周囲に引かれる事に気づいて控えろよと思ってしまうくらい、タズサの独り言シーンが多いのが印象的。

 

 ピートとは体の感覚を共有出来るという設定になっている。その都合から、ピートを痛めつけるために、自分の頭を壁にぶつけるタズサの奇行が見えることもあった。

 ピートが気に入らない時の逆襲方法としてメインになったのが、ピートが苦手としているトマトを食いまくること。タズサがトマトを食えばピートにも食った味わいが伝わる。ピート成仏までの100日間が、タズサにとっては人生で最もトマトを食いまくった期間になっただろう。トマトって美味いのにな。私はトマトが大好き。

 

 感覚共有も行う取り憑き方は珍しいかもしれない。タズサが男とキスをするようなことがあれば、感覚としては自分もしたことになるから止めてよねと注意したこともあった。

 

 後半でタズサがピートに「キスして」を言う所はキュンドキして良かったな。

 ピートが消える100日目がトリノオリンピック当日というドラマティックな仕掛けにもワクワクとハラハラがあった。

 ピートは自分と生き、2度死ぬ。タズサが導き出したこの概念にはなんだかスピリチュアルにしてグッと心を掴まれるものがあった。

 特殊な仕掛けのアニメだったが、ピートとお別れするラストはしんみりして良かったぜ。

 

スケートシーン

 スピード感と滑らかさが競技の肝になり、それをアニメで表現するのは絶対に楽ではなくとっても難しい。このアニメでは、ピートとの楽しいやりとりやマスゴミとの戦争にも力を入れているため、決して競技シーン作画に全振りして戦っているわけではない。

 てなことからそこまで高いアクション性は無しの微妙なスケートシーンが楽しめる。

 

 タズサの演技の見せ所となったのは、ウエイトレスの衣装で滑った回。あれは可愛い。 

 これの見せ方が特殊で、感心もすれば普通にウケると笑えもするものだった。

 しっかり銀盤を映すのではなく、ウエイトレスがレストランで接客しているイメージシーンが展開するのだ。これは滑っているのに滑っているシーンを描かなくても良い省エネな仕掛けだった。

 賛否あるかもしれないが、このイメージ映像で戦うのは面白いと思う。タズサのウエイトレス姿は普通に可愛いので目の保養になった。

 

 どの衣装で滑るのかの選択も選手にとっては重要になるようだ。タズサの衣装も華がある良いものだった。

 OP映像で毎度見れる後ろ半分をパージした改造着物は格好良くエロい感じもして良かった。最終回で着た桜色の衣装も美しい。衣装も良いアニメだった。

 

 競技者が行うのは演技であることから、ただ滑るだけでなく、時にはまるでアイドルのようなスマイルも取り入れることが必要とされる。序盤のタズサは笑わない選手として描かれていて、嫌味が一流のチーム監督からは「石膏」と呼ばれていた。この監督とバチバチやってる所も楽しかった。愛ある嫌味を飛ばすだけのことで、最終的におばさん監督はいいヤツだった。そこは安心。

 それにしても色んな表情を操るテクもいるのか。色々と勉強になる。選手達は銀盤の上に立つ女優でもあるのだな。まだ奥が見えてこない競技だが、浅くはない事は確実だ。

 

 競技をするには当然ライバルもいるわけで、ライバルキャラも出て来た。でも各員をそこまで掘り下げる時間はなく、他の選手はそこまで目立っていなかった。

 すごい噛みついて来るドミニクを岡本麻弥、ロシア選手のリアを能登麻美子が演じていた。有名な人達なのにちょっとしか出てこないし、出てきても現地の言葉で喋るのでEDのテロップを見るまで役者に気づかなった。

 

マスゴミとの戦争

 主人公が精神的に追い込まれるキツイ展開から始まっているのが印象的。戦績が振るわないことは運営にもマスコミにも突っ込まれることになる。加えて恋愛関係のスキャンダルもすっぱ抜かれるから大変。

 タズサを取り巻く環境にいつもいるのが迷惑なマスコミ共の存在。作風として印象的な点は、選手に対するマスコミのマナーについて問う展開があったことだ。この要素も結構見どころ。 

 

 アニメに出てくるマスコミのやり口が酷すぎる。自分達の都合良く面白い記事を書くために、タズサをヒールキャラに陥れる罠まで張ってくる。やりすぎなくらいこちら側を煽ってくることで、まさにマスゴミの蔑称にマッチする本性を見せている。悪い記者が徒党を組んで情報操作を行っている業界の裏の都合も見えて来る。

 

 第8話のサブタイトルは「マスコミ戦争」であり、タズサは銀盤を離れて質の低いマスコミと全面戦争を起こす。それまでなんとなく嫌味でウザいマスコミをちょいちょい出してきたが、この回ではそんな連中がメインになる。

 いい加減を言って書く記者は当然悪いが、運営側が選手をしっかり守らないし、中にはマスコミと通じて選手を売った裏切り者もいた。業界の闇の事情が怖いし、すごくムカつくと思える回だった。

 ゴミ共を切れ味抜群の刀で一刀両断するかのごとく冴えるタズサの弁舌は爽快。スカッとする気持ちの良い物言いが聴ける。というかこうもベラベラと口が回るタズサはかなり頭が良い子だな。

 意外にもマスコミのマナー違反を彫り込んだ展開は強めに記憶に残る。

 

主題歌

 OP曲を歌っているのがYeLLOW Generationなのは懐かしい。OP曲「Dual」は彼女らのラストシングルとなった。YeLLOW Generationがラストを飾る銀盤になったなんて振り返れば美しいメモリーになったのではなかろうか。

 そしてED曲は新人時代の井上麻里奈が担当している。井上麻里奈が主題歌担当をしているなんてレアだな。というかこんなに昔から働いていたのか。

 井上麻里奈は、タズサの友人のミカ役でアニメにも参戦している。タズサからピートへの暴言を勘違いして受け止めては傷つくというコメディリリーフな所もあるヒロイン役だった。

 

まとめ

 フィギュアスケートにかける乙女の情熱は温くはない。それが分かった。

 

 聞くところによると、このアニメは放送時だとかなり作画が雪崩れていたことでネタになったとか。もっとヤバいことに、なんと初回放送時にはOP映像の完成が間に合っていなかったという。OPが仕上がっていないとか、遅刻の中でもかなりヤバいレベルだろうに。

 当時をしっかり生きて視聴した猛者達はびっくりしたことだろう。リアタイしたかったぜ。

 

 現在の2022年7月から放送の新作でも作画がかなりヤバいのがあるくらいだから、2005年アニメだとそれも仕方ないかな。DVD版ではかなり修繕されたらしい。DVDを見ると、まぁなんとか見れるって感じだった。

 

 トリノで頑張った人達もいたし、これからの五輪でも頑張る人しか出てこないはず。見たい番組が中止になることで五輪を好きになる要素はまるでなかったわけだが、タズサやピートの物語を見れば、そんなことを言わずに皆を応援してあげようと思えるようになった。

 結果、川澄綾子の演技に萌えて癒やされて心が寛大になれる作品だった。

 私は銀盤に青春をかける乙女達を応援します。

 

 

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