こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

走れ!緑の王「みどりのマキバオー」

みどりのマキバオー」は、1996年3月から1997年7月まで放送された全61話のテレビアニメ。

 

 これは絵の存在感がヤバいことから、その昔再放送をちょこっと見ただけでもキャラクター絵だけは覚えていた。

 最近は馬を擬人化した競馬作品として「ウマ娘」が大ヒットした。私もめっちゃハマった。だってシナリオが熱いし、そんなのは抜きにしても可愛すぎるので見ているだけで楽しい。

 で、それよりうんと前にも、割りと擬人化を深めた馬作品のこちらがヒットしていた。

 

 ブサイクだけど愛嬌のあるキャラ絵、謎に耳に残るOP、ED両主題歌だけを知っている状態で、内容は今年に入るまでよく知らなかった。

 

 ウマ娘にはまっていると、マキバオーユーザーの私のお兄ちゃんからこっちも見るよう勧められた。

 視覚的には似ても似つかないが、競馬がテーマなこと、レースに賭ける熱い競走馬魂があることは共通している。ライスとブルボンが走るのを見て泣いていたヤツならこっちでもきっと胸熱になるはずだ。だから見た方が良い。こんな感じで言葉多めに推して来たのだった。

 じゃあ見ようか。

 

 それで約10日かけて61話を見たのだが、これが実に面白い。

 こちらは馬でも息子であり、ブサイクだから華やかさでは完膚なきまでにウマ娘に負けるが、レースに見る「熱」の部分では双方大変胸を打つ要素がある。

 

 では、おかしな馬アニメのマキバオーを見た感想を殴り書いて行こう。

 

みどりのマキバオー Blu-ray BOX

 

内容

 北海道のみどり牧場に暮らす名馬ミドリコが出産した息子は、真っ白な毛でアホ面のチビ馬だった。馬よりもカバ、ロバ、犬に見えるくらい小さくてザコっぽい。

 みどり牧場は経営不振から借金をし、それを返すのも苦しい状況に追い込まれていた。そこで出産後のミドリコは借金の形に取られ、ひげ牧場に連れて行かれてしまう。

 

 母から名をもらう前だった息子は、母を訪ねて北海道の野を駆け回る。その道中で出会ったネズミのチュウ兵衛から名前をもらうことになる。うんこを垂れまくる特性から「うんこたれ蔵」と命名された。酷い。

 

 一度は馬肉行きになりかけたたれ蔵だが、小さな体にも抜群の馬力があると判明する。持ち前のパワーで競馬レースを勝ち抜けば、借金の返済が完了して母を取り返すことが出来る。

 こうして母を取り返す未来への目標が出来たたれ蔵は、ファイトネーム「みどりマキバオー」を名乗り、競走馬としての道を歩むのだ。

 

感想

 仮にも少年ジャンプ掲載作品だというのに、マジで気が抜けるブサイクな絵だな。主人公がこんなに待った無しのブサイクなのも珍しい。今をときめく少年達が熱き魂を賭ける場がこの雑誌なのに、その主人公の顔がコレって笑える。

 昨今の作品でも主人公の顔面が落書きみたい、あえて周囲のキャラより薄口のモブデザインに設定しているという物が多々あるが、あれらが比ではないくらいたれ蔵やその他メイン所の面々がブス。

 兎にも角にもまずは絵が強烈。例え漫画、アニメであっても美男美女オンリーでブスはお断りと言って食わず嫌いする者もいるだろう。そう人は損だな。汚い絵柄だけどこの作品は面白いので愛せる。

 

 漫画家の人生ドラマを描いたアニメ「バクマン。」では、内容が面白ければ絵は二の次みたいな事を言っていた。マキバオーは、本当に絵を二の次にした漫画だったのだな。この絵で内容がクソだったらヒットの道は無い。

 

 それにしても笑えるくらいのブサイク無双だった。まずは主人公のうんこたれ蔵。名前が酷い。チュウ兵衛親分のネーミングセンスがゴミだろ。

 狼にケツから丸呑みにされかけたたれ蔵が、最後の抵抗でケツから放った一撃がうんこだったわけで。それを口に食らわせたことで敵を撃退して死なずにすんだ。このエピソードから「うんこたれ蔵」と命名。他にもいくつか名前の候補があったが、これが一番マシなくらい他のも汚い名前で酷かった。

 ていうかマキバオーが本名じゃないのかよ。全編に渡ってよくうんこを垂れるという主人公のキャラ性も酷いけど、そこから引っ張ってきたこの名前が最低すぎて、最高に笑える。

 

 そしてマキバオーは顔もブサイク。鼻の穴がデカすぎるだろう。酷い顔をしてるな。思い出しても笑える。

 ライバル馬のカスケード、アマゴワクチンモーリアローニトロニクス、モンゴルの師匠のツァビデルらはイケメンでスタイルの良い馬に描かれている。そこへ来るとマキバオーは段違いのチビでブス。それから好きなキャラだったけど、ベアナックルもブスでバカだった。

 

 作画が悪いことは全くない。ただ基本のキャラデザが何か汚い。そこが面白い。

 源次郎おじさん、昌虎おじさん、若ぞうさん、菅助くん、子供の勝までがブス。

 目が小さく鼻がデカい、そしてたらこ唇。そんな癖になり愛嬌もある絵なのだが、美が皆無のキャラばかり。

 若ぞう役はイケメン声の石田彰だった。彼の声はとても好きなのに、めっちゃブスの役をやっているなとツッコンでしまう。彼に限らず、キャリア史上一番ブスなキャラを演じた現場がココという役者が幾人かいたかもしれない。

 

 おっさんキャラなんだけど、所々普通に会話をしていても唇が濡れている。普通によだれを垂らして話しているのが汚い。そこにも笑う。

 それからレース場にウヨウヨいる裸のモブおっさんキャラも印象的。あれは賭けまくって身を持ち崩した競馬民という事なのだろうか。服も無くなるまで賭けるべきではないと学びになった。

 

 ヒロインの麗、諸美さえも可愛くないし。マキバオーの妹マキバコも兄貴とほぼ同じ顔だし。この兄妹キャラの中の人を見るとニャースピカチュウなんだな。そこも何か面白い。

 多分全部の中で一番美人なキャラは母のミドリコだったと思う。

 

 今日日よそではなかなか見ないこの絵のクオリティが令和だと新鮮。よくこのキャラデザで企画会議が通ったな。先日視聴した「ぶーりん」もなかなかに攻めた内容とブタ絵だったけど、マキバオーはそんなの比ではない。

 

 ブサイクなキャラが多いが、各員を演じる声優は有名人ばかり。役者の顔ぶれは豪華だった。そこはすごい。

 

 見た目がとにかく悪いが、それでも内容はユニークであり、レースに向けての特訓やレース本番展開はマジで熱いのでしっかり面白い。めっちゃ笑うところもあるけどね。

 

 マキバオーモーリアローは、所属する牧場が経営不振になって厳しい目にあう。ここの設定とかは結構リアル。

 時世としては、バブル崩壊のダメージを食らう者が多く出た頃だったとか。その関係での借金発生だという説明もあった。そういう古き困った時代の漫画でありアニメだったのだな。ちょっと勉強になる。

 牧場に金を入れるため不正行為にも打って出るモーリアローの心境などは、見ていて結構きついものだった。

 

 たまには賢い要素も入っていて、競馬の基礎知識も学べる。様々ある各レースの紹介も行っている。ここはウマ娘も一緒。基本、見ているガキは競馬なんて知らんものね。

 たれ蔵は蹄が大きくて滑りやすいから雨日のレースに弱い。全身の4%もの割合を心臓が占めているから、体を大きく使えばびっくりして倒れがち。だがその分馬力がすごいなどなど、競馬レースに絡めたちょっと賢い馬の話も聴けた。

 

 モンゴル修行でツァビデルと戦う中、マキバオーは新走法の「マスタングスペシャル」を会得する。ここの流れは馬の素人的には新鮮で印象的だった。

 人間をやっている私は普段なんとなく走っている。走法という物を意識して呼吸したターンなど人生の中でほぼなかったはず。

 このエピソードでは、馬にも走法があると教えている。4本足で走るからその点で深掘りが出来るようだ。同じ走るでも、足をどう動かすのかで速さの優劣が決まるというのだ。適当に早く動かして走るだけだと思っていたが、そうでは無かったのか。4本の足をどうやって動かせば速く強くなれるのかというロジックに切り込む所は、ちょっと頭が良かったぞ。

 

 見せ方でユニークなのは、ウマ娘でもっと完成された擬人化がここでもかなり現代向けに進んでいること。

 馬は普通に人間と話す。人権的に人間と馬がイコールくらいになっている。馬も大いに主張してトレーナーや騎手と意思疎通が出来ている。

 たれ蔵はレースでは4本足で走るけど、二足歩行も出来る。普通にお店に入ったり旅行にも行く。この点は子供向けでユニーク。

 他の馬キャラはそうはいかないが、たれ蔵はサイズ的に人間の生活空間でもお邪魔して行ける。ドラえもん感覚で人と謎の何かの共存を見て楽しめる。

 

 幼いたれ蔵にとっては良心にもなったチュウ兵衛の扱いにも注目できる。勘助と共にマキバオーの頭に乗るもう一人のジョッキーとして活躍するターンが多い。小さなネズミをここまで重要なポジションで扱う点も面白い。

 チュウ兵衛親分がレース中に落馬して死にかけ、ジョッキーとしては引退する重い展開にもドラマ性があった。ああいったシリアスな場面だが、この世界にはちゃんとあるネズミの病院、その名も「国立ねずみ病院」の存在がファンタジーすぎて笑う。国での扱いって事は、皆さんの税金で成り立っているわけで、そう思うと面白い。

 

 この馬とネズミのコンビも良かったな。

 幼い頃に見た「ピノキオ」では、ピノキオをサポートするコオロギのジミニー・クリケットがいて、「ダンボ」では、像のダンボをサポートするネズミのティモシーがいた。あれら二組を思い出す。大きい子供をサポートする小さな大人という構造は一緒。

 

 下品で寒いギャグも散見される作品だが、所々感心できる面白さがあり、感動も出来る。

 やはりライバルとのバトルは胸が熱くなるし、それを越えた先の友情で繋がる物語には感動して泣ける。

 

 他の馬達の物語も良いんだよな~。

 生みの親ヒロポンの想いを背負って走るカスケードの生き様はストイックで惚れるものがある。玄田哲章がキレイなキャラにキレイな声を当てているのも良い。

 地方の仲間の想いを受けて走るサトミアマゾンの上京までの物語も良かった。

 

 怪我をして引退した兄ピーターⅡからシャドーロールを受け継いで走る弟のアマゴワクチンの戦いも格好良かった。

 兄弟馬の弟ポジでシャドウロールなら、ウマ娘だとナリタブライアンだな。男女問わず私はシャドウロール萌えなのかもしれない。あれ、良いよな。

 ワクチンを演じた松本保典のイケメンの声は好き。今はのび太のパパという大人しく丸まったおっさんの声をしているが、若手の頃の彼の芝居は格好良かった。

 

 一番泣けたのは、カスケードとマキバオーがぶつかった有馬記念レース。マキバオーにとって最初の敵でラスボスだったカスケードとの最終戦となった。ここがアニメの最高潮だったな。

 気持ち良く全力合戦とは行かず、カスケードは激しい不調の中で、しかもこれが引退のつもりで走ることになる。

 振り返ればマキバオーも不調、アクシデントのため、全力で戦えなかったことが数回あった。競馬ってそういう所も読んで全てをレースに合わせないと勝てない難しい世界なのかも。

 二人の全力対決が遂に叶わない中、マキバオーが優勝で終わる。その補完となるのが、カスケードの作る黒い幻想とマキバオーが並んで走る最後のところ。

 カスケードは不調で下位に落ちたが、それでも挑戦者を迎えることが王者としての礼儀だと言って欠場せず走りきった。カスケード本人がまともに走れない状態でも、マキバオーは誇り高き王者のオーラとどこまでも競っていた。このシーンは、作品を追う中でカスケードとマキバオーの人となりが理解出来ているヤツにはしっかり分かる熱の籠もった幻想的ファイトとして描けていた。そこがマジで良い。

 

 マキバオーはカスケードが大好きで惚れ込んでいたのだなぁ。ゆえに倒したい。憧れと対抗心でレースに出ている。マキバオーがカスケードに寄せるラブの想いが分かるバトルシーンにとても泣ける。

「僕たちが命がけで追いかけた」のがカスケードという馬。マキバオーのこの評価で、カスケードがどれだけ同期を引っ張ってきたカリスマ爆発馬であったのかが良く分かる。普段はふざけいるマキバオーが熱を込めて言ったこのセリフには泣いた。

 ポエモンでは白い猫を演じている犬山イヌコの間抜け声が映える馬キャラがたれ蔵だったが、熱っぽい芝居もさすがだった。

 

 モンゴル修行編では、ジョッキーの勘助が騎乗するターンも少なく、馬、狼、ネズミら動物だけのシーンが多く見られた。ここら辺は「ガンバの冒険」とかの動物作品を見ているような感覚になった。

 

 終盤の外国旅ではベアナックルもレギュラーに昇格してふざけていた。本当にテンションの上げ下げがスゴイ。レースシーンは真面目で迫力もあるが、あとはしょうもない下ネタギャグが続く汚いアニメなんだよな。真面目なお母さんなら子供が見ていたら注意するかもってくらいうんこネタが多いし。

 序盤展開からは想像がつかないくらい泣かされることになるポイントもあってそれが意外。カスケードのキャラ性は秀逸で、彼が絡む物語はとても見応えがあった。イケメンだから見ていて気持ちよかったし。

 

 そんなこんなで、熱の入れ方としてはイレギュラーなパラメーターとなった異色の競馬ファイトドラマとなったのが名作「みどりのマキバオー」だった。めっちゃ面白かった。

 

 そして忘れてはいけないのがとにかくキャッチーなOP、EDの主題歌。

 OP「走れマキバオー」は「走れコウタロー」の替え歌ソングでとてもキャッチー。歌っているのはSMAPをパロったF・MAP(フマップ)。こちらは親のレコードで先に原曲のコウタローを聴いているので、余計に耳に馴染んで心地よい。

 

 ED曲「とってもウマナミ」はもう色々酷い仕掛けで、中身は下要素が濃い。しかし楽曲としては優秀。すごい良い曲だと思う。曲内容としては、下の要素を持ち入りつつも、なんだかんだで深いラブを歌っていて良い。

 洋楽「君の瞳に恋してる」「ジンギスカン」をオマージュした構成でおしゃれ。

 

 楽曲もユニークで良曲だった。曲だけでも面白いから聴くべし。

 

 ウマナミなのね~♪ と一節歌っておわり。

 

 

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