こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

緩くて楽しい南さんちの三姉妹の日常「みなみけ」

みなみけ」は桜場コハル作の漫画。

 週刊ヤングマガジンにて2004年から現在まで連載中。

 

みなみけ(1) (ヤングマガジンコミックス)

 

 本作がアニメ化した時には、その独特の緩さの中に見るくすりと笑える日常劇、そして女子の可愛さにハマって漫画を購入したものだ。それも11巻までしか購入していないけど。現在は24巻まで出ているという。そんなに出ていたのか。ていうかまだ連載していたのか。とっくに終わったのかと思ったらまだやっていたことを先週知った。

 先日、同作家が先に出した「今日の5の2」を読んだらこっちも読みたくなって毎夜こっそり読み進めていた。まぁ11巻までしかないんだけど。秋は読書が捗る。

 

 内容は上から順にハルカ、カナ、チアキの南さんちの三姉妹の何気ないようで突飛だったりもする愛しい日常を描いていくもの。それも淡々と。長い連載の中で調子を崩すことなくその感じでまったりゆったりやっている作品。

 ポケモンでいうとノーマルタイプっていうか、これといってどこが伸びているというステータス持ちでもない。ずっとシュールでハイになり切らないローな感じのテンションでやっていく。ヤングの読み物にしては低カロリーな作風。

 シュールや低カロリーといえば作画もそうかも。手抜きとかではないが、まぁお家にいることが多いってことから全体的に白が目立つ。家の壁は白いことがあるものね。

 というわけで背景が真っ白な箇所が目立つ。キャラも線が細く全体的に白いから内容的にも視覚的にも疲れない。省エネ作品かも。

 

 そんな上げているのか下げているのかどっちなのさ?な感想が真っ先に出てくるが、内容としては良い。面白くてとても好きになる。出てくる人間は楽しく愉快、女子は皆可愛い。これといって不満がない作品である。

 

 南家三姉妹のライフステージは綺麗に小中高に別れている。姉妹の家には毎度愉快な学友達が訪れる。姉妹それぞれが異なる学校の友人を呼ぶことで、家には年代ごちゃ混ぜの集団が生まれる。そこに年歳差による感覚のズレが見える点を作品の楽しい売り込み要素にしている。確かに一行のやり取りにはくすりと笑えるものが多い。

 

 とある巻の帯には「ほぼ毎日女子会」と書かれているがまさにそれすぎる。小中高含めた姉妹の友人が集まって皆仲良しなのは和む。こういうのって結構ないかも。兄弟の友達ともたくさん遊ぶってありそうでたくさんはない経験かも。

 毎日女子会ってくらいだから基本はお家でのお話がメイン。姉妹と学校の友人がメインの狭い生活範囲の話のため、すごいドラマティックなことは起きない。とにかく緩い日常絵図が続く。

 

 各巻冒頭部分には「この物語は南家3姉妹の平凡な日常を淡々と描くものです。過度な期待はしないでください。」という印象的な文言が書かれている。これはアニメ化した時にも同様のアナウンスがあった。これといって何も起きないところに何かしらのお楽しみ要素を見出す。そういうコンテンツである。

 何もなさそうな所にこそ何か面白いことが隠れている。人生って案外そんなもの。

 

 事前に特に何も起きないとアナウンスしている正直さと控えめなところは良い。今やっている異世界アニメなんかも、何かありそうで特に何もないスッカスカなものだから、こういうのこそみなみけみたいに事前にネタバラしのアナウンスをすると良い。

 

 三姉妹はしっかり者の長女ハルカ、おバカな次女のカナ、しっかり者とバカの両サイドに立って場を美味しく調整出来る末っ子のチアキの良い布陣に仕上がっている。親の教育方針が良かったのだろう。

 特にチアキが良い味を出していて好き。可愛いし頭もキレる。普段ムスっとしているようでなんだかんだ付き合いが良く、おバカな連中にも合わせることが出来る。社交性がある子なんだな。チアキは絶対美人になると思う。

 チアキがいることで全体が上手いこと回って各話をスマートに締めることが出来ていると思う。作品を楽しくする最重要キャラかもしれない。

 

 小気味よいセリフ回しはユニークでギャグ展開でもインテリジェンスを感じる。これもやっぱりチアキの立ち回りにそれを感じる。小学生にしてはセリフにインテリジェンスを感じるチアキはナイス。

 

 次々出てくるキャラ同士が狭い社会の中で繋がり面白い関係性見せてくれるところも良い。割りとキャラも増えて来るが、それぞれがユニークな繋がりを持っている。これは劇団「みなみけ」として楽しませてくれる群像劇要素になっている。キャラの個性出しや面白い関係性の構築が上手い。

 

 これは日常もの作品としての完成形なのではなかろうか。ギャグも派手ではないものの磨かれたテクニックが見えて上手い。素晴らしいっす。

 で、メインにはならないけど隅っこの方にあるラブコメ要素の展開の仕方も上手い。カナと藤岡の関係に端を発し、その他の男女もほんのりとラブコメ要素に入ってくる。

 

 チアキが藤岡を気に入ったのは意外だった。ちびっこにモテる男子なんだな。チアキがムスッとしたお子様に見える割には藤岡に懐いたり、ぬいぐるみを可愛がったりと結構女子なところを見せるのが良かった。

 

 途中からもう一つの南さんちとしてチアキの友人の南トウマの家庭も描かれる。こっちの南家は四人兄弟で一番下のトウマ以外は男。こちらの南家も面白い。特に次男のナツキが段々と面白い。長男が下に完全にナメられているこっちの南さんちの事情も笑える。ナツキがめちゃナチュラルに長男を蔑ろにするのに笑える。

 トウマも男前で可愛い女子で良かった。トウマは絶対人気キャラのはず。トウマが出て来たあたりからもう1段階ギアを上げて面白かった。

 

 そして保坂が良い。彼は傑作キャラ。

 こいつがマジで面白い。この漫画最大の発明がこの保坂という変人。

 見ればすぐに分かる。イケメンでスタイルも良いのだけど、中身が静かにおかしい。クールキャラだけどずっとおかしいから笑える。

 ハルカの事が好きだから弁当を食ってもらいたいというのが保坂の当初の目的だった。それを果たせないままずっとうだうだと面白く弁当の事を考えてレベルの高い物を作っては意味なく終わる。そこにウケる。保坂の理解者の早見ちゃんとの絡みも面白い。

 

 メインの三姉妹とはニアミスばかりで全然絡んでいないのに、作中では独立勢力として魅力と存在感を出している。そんな変人の男子高生が保坂だった。

 南姉妹との直接の絡みが無いのにメインに来るキャラも彼くらいか。主人公達と絡まないのにここまで完成されたおもしろキャラとして作品の看板になるのはすごい。私はこちらの彼の事も看板キャラだと思っている。可愛い女子だらけの漫画と思ったところにこういう変な男が出てくるとは当初全く予想が出来なかった。それだけに印象に残る。

 

 可愛い女子ばかり出る中で一番濃く記憶に残る不思議な男性キャラだった。

  アニメでも話題になったカレーの妖精の歌のところが一番好き。「全ては愛のタ~メリック♪」の歌詞から始まる美味しいカレーの作り方ソングはネット界隈でもネタになっていたはず。アニメで小野大輔が演じて歌ったのもハマっていた。

 

 男子キャラなら話の流れでずっと女装することになったチアキの同級生のマコトも笑えた。チアキとマコトの揉め事を挟みつつも仲良しな関係性も好きだった。

 

 サクッと面白くて可愛い短編が連続するものだから長くてもずっと楽に読んでいられた。これは良い作品だ。

 アニメを4期までやったものだからそこもすごい。しばらくアニメをやっていない間に原作ストックがめちゃ溜まっているからまたアニメをやれば良いと思う。

 この低カロリーな感じでだいたい20年も漫画をやっていたのが今更ながらすごい。サザエさんみたくずっとやればこっちもずっと見れるなぁ。

 というわけで大変可愛くて癒やされる三姉妹がメインの漫画でした。おすすめです。

 

 

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