「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」は、1991年から1992年にかけて発表された全13話のOVA。
やっぱりガンダムだな~。アニメもロボも好きなオタクなら、黙ってなんてことは言わずワイワイ騒いでもやっぱりガンダムだな~。というわけで急にガンダムに浸りたい夏気分到来なのである。モビルスーツで行うチャンバラやドンパチがとにかく見たいぞ。
これまで色々見て来たガンダムシリーズ。その中でもコウ・ウラキやアナベル・ガトーが出てくるこのシリーズだけは全然見たことがなかった。なんで避けて通れたのだろうか。
スパロボでよく見る顔なので、キャラやだいたいの物語は知っている。でもアニメは見ていなかった。意外な見落としがあったので、このクソ暑い夏を有意義に乗り越えるためにも今見るべきだと判断してサクッと見てきた。人生の判断は慎重な上で即決で行くべし。
登場ガンダムのフルバーニアン、ステイメンはお気に入りで、第4次スパロボではちょっと弱いながらも一軍にしていた。高い金を払ってめっちゃ鍛えました。それと最近のスパロボシリーズと比べれば第4次のムズいこと。最近のなんて全然ヌルいからね。ゲームも教育も昔と比べればゆとってるから。
ガトーの乗るGP02のアトミックバズーカのマップ兵器攻撃は、マジで強すぎて最悪の手札だったわという恨みが今も胸に残っている。コレもスパロボあるある。
このようにアニメは見たことがないけど、登場するガンダムには思い出がいっぱいだ。
で、アニメを見てみての感想。コレは面白いっす!
大きくなった今見て良かった。話ははっきり言ってキツい
戦争が終わっても兵士の中に燻るファイター魂は鎮火されず、また恐怖のトリガーは引かれることになる。戦場に生きる者だからこその心理があり、戦場でしか生きられない悲しい兵士の性も感じる。その上で最後はスッキリとした解決を迎えない。
物語としてはスッキリな後味にならないけど、戦争の集結ならばそうなるのがリアルとも考えられる。随分大人向けな内容と締め方で考察も捗るもので子供には難しい。だから今になって見てこそ良いものだと思えた。
お話はアムロが出てくる初代ガンダムとZガンダムの間の時間軸を描いている。終盤ではジャミトフ、バスクらも出てきてティターンズ結成の流れになっていく。
バスクはムカつくけどあのクソキャラ感は完成されていたので、Zの中では結構推せるキャラになったぜ。
恐怖の一年戦争が終わった後にもジオンの残党の燻りは絶えず、生き残った少数の勢力でジオン再興のためまた戦争を起こしてくる。
エギーユ・デラーズをボスにしたデラーズ・フリートなる勢力が活動を開始したことで再び戦いの物語が動き出す。ワクワクもするが、不穏が押し勝つ序盤となった。
その中のエースメンバーが「ソロモンの悪夢」の異名を取るアナベル・ガトーだった。強すぎる有名戦士なので、コウ達の士官学校のテキストにもその存在は刻まれているらしい。出来る男だぜ。教科書にも載るすごい悪夢でした。
表向きには全部終わりましたよ~を言っても、戦争に情熱と執着を燃やしたマジの戦士なら、単純に勝ち負けで終わりを受け入れることは出来ない。だから何度でもアタックをかけるのだ。
これって愚かで悲しいことだと思う。でも頭が狂っているわけでもなく、正常な頭で信念としてその道しか行けない悲しい人間がやっぱりいるんだよな。
人は一度争ってしまうと簡単にはそれを終結出来ない。良くない負の連鎖だと分かっているが、そうなるのもまた人の真実なのだから納得していくしかない。ガトーは本当に悲しい戦士だった。
片手を失って退役したケリィがジャンク屋をしながらも自分用に新型マシン ヴァル・ヴァロを作ってまた戦場に舞い戻るのにも悲しい戦士のドラマを見た。五体満足でなくなった身でも戦場にしか自分の居場所を見いだせないのは悲しい。
ガンダムなら他シリーズでも言っていることだが、こちらでも強めに戦争は悲しいと言っている。しっかり確認出来ました。
一度は終わった戦争が後に残した傷跡の生々しさも印象的。それは人の心だけにあらず、土地にも見られる。
かつてオーストラリア大陸だった場所の一部が、コロニー落としで無くなってしまっている。それまでシドニーだった場所は大クレーターとなっていて、空いた大穴には海水が入り込んでいる。
コロニーが落ちて地表にここまでデカい穴が空くのか。コロニーが落ちた後の世界が見えるシーンには悲しみと恐怖を感じる。
地球連邦が作った2機のガンダムの内1機をガトーが奪取してしまうことで騒ぎが本格的に厄介なことになる。
今思うに、あそこでガトーが1号機を奪取していれば事はもうちょっと簡単に行ったのかも。
スパロボをやれば完全に分かることだが、1号機と2号機なら断然2号機が強く、相手取るのも厄介。2号機の方がゴツく、ビームサーベルが大型で刃が太い。何よりも厄介なのは核兵器を持っていること。これは敵に回れば厄介でしかない。
主人公のコウが他シリーズと比べても見た目、能力共にモブっている主人公設定なのは印象的。パイロットとしてペーペーで、まだまだバニング教官の指導のもとでないと心配なよちよちレベルだった。
あとは人参が食えない幼稚な設定も記憶に残る。食堂で人参はいらないと職員に告げるも、逆に鬼盛りにされるのは笑う。人参って美味いのにな。積極的に齧りたい私のような人間もいるのに。前世が馬かウサギだったのかもしれない。
そんなコウだが、若く情熱的な分には愛せる男です。
とにかくコウにとって厳しい物語展開で進んだのも印象的。意外なくらいラッキーで進む主人公補正が機能していない。最近のビギナーズラックから入って落ちまでずっと困難のない異世界クソアニメを見て慣れていると、コウの進む道の厳しさにビックリする。
パイロットとしてガトーが上手なため、2号機回収作戦は失敗してしまう。早い段階でシーマにボロクソにやられて1号機も大破してしまう。戦績としてバツが連続するからキツい。
そんなのだから、補充パイロットで来たクソキャラのモンシアのおっさんからも虐められてしまっている。モンシアを演じた茶風林はクソキャラをやらせたら光るなぁ。この人のクソ人間ムーブの芝居が好きだわ。
アムロの時にもそうだったけど、心が参って一時的に家出しちゃうコウ。まぁ分かる。そんでケリィさんのところに家出するわけだ。そのケリィと一緒に作ったヴァル・ヴァロと後に戦うことになる展開も鬱だな。
コウの一番辛いのは、恋の戦争でも負けたことかな。モビルスーツ戦で負けてもそこは勝ちたいのが男の真実だよな。
1号機、2号機の最終対決は共に大破の引き分け。次にデンドロビウムとノイエ・ジールに各員が乗り換えた後の再戦時では、途中でコロニーレーザーの邪魔が入って決着つかずだった。
基本的にガトーに押し負けて、彼を越えて行くことが出来なかった。その上でニナがガトーの方に行っちゃうからもうコウの心はズタボロだよな。あれはキツい。ソロモンの悪夢は、ただの男のコウにとってはマジに悪夢となったわけだ。
ガトーを生かすために、威嚇とはいえニナがコウに向けて銃を発砲するのは酷い。あれは可愛そうだろうに。
あそこまでのことをしておいて最終回ラストではニナとコウが再会し、どうやらニナはコウのもとに戻って来る感じで終わったのはちょっと如何なものだろうか。あそこでコウがニナを殴り倒してもまぁしょうがないかな~な感じなんですけど。
しかし世の中には、銃口を向け合ってでも結ばりたい男女仲というのもあるのかもしれない。であれば二人がまた結ばるのも納得するしかないのかもしれないが、銃を握ったこともない私にはここまでの考察が限界なのである。だからもう止めるね。
戦争の裏で悪い大人の暗躍もあり、事態が暗黒展開に突っ込んじまう。その結果コウが軍法会議にかけられて懲役まで言い渡されるのはあまりにも酷い。一生懸命戦ったのに。このラストあたりはスッキリせず、ていうか胸クソかも。
コウとしてはコロニー落としを食い止めることが出来ず、ガトーには戦場でも恋でも勝てずってことで、まさに勝負に負けて試合にも負けての不遇な戦士ライフだった。こんなにキツい話でいくのかよ。
最後に左遷された先で親友のキースに会えたのが大きな心の救いになったな。キースと再会して喜ぶコウが見れたのは良かった。
コウと一緒に戦って来た仲間達も最後はティターンズに取り込まれる進路となる。ティターンズはZだと敵サイドになるので、それを知っちゃっているからには複雑だよ。Zのどこかのシーンで、アルビオンにいた皆を敵として討っていたことになるのか。
それまで物語のメインとして描いた2つの戦力の内、どちらもが敗戦的な戦績となり、そこをティターンズ勢力が漁夫の利として儲けを全部持って行ってしまったみたいないやらしい戦闘の落ちだったような。ティターンズもヌルっとずる賢くやることをやりおる。
アルビオンのシナプス艦長を演じたのが大塚周夫で、ガトーは息子の大塚明夫は演じている。この親子共演ポイントにも注目出来る。それぞれ違う勢力の配置だが、ここで共演していたのね。
怖いおばさんとして結構有名なシーマもやっぱり怖かったと印象的。声が意外にもしんちゃんの風間くんと一緒なんだよね。
シーマの乗り込むガーベラ・テトラは真っ赤なボディの格好良いマシンだった。あれも好き。
厳つい軍人オヤジのバニングさんも良かったな。この人、格好良いオヤジじゃんか。
バニングが死ぬ所は悲しかった。やり手のバニングが逝ってしまい、生き残れるかどうか心配だったキースが最後まで生き残ったのは意外。ごめんけど、キースの方が途中で逝ってしまうものだと予想して見ていた。
何よりも良いのは、アニメーションとしての出来だな。この古い時代なのに信じられないくらい絵が綺麗。さっき見た深夜アニメの録画分の中に絵が下手くそなのも混ざっていたので、この違いに驚く。
ゆっくり小出しのOVAだからこそ出来ることだな。戦闘シーンなんて格好良すぎる。その戦闘シーンを盛り上げる今作に登場するガンダムが最高だな。
試作1号機、2号機、3号機ステイメン、並びにデンドロビウムと全部良い。他を見てもノイエ・ジール、ガーベラ・テトラも素晴らしい。どのモビルスーツも格好良くて美しい。
ステイメンとか最高じゃんか。バズーカを構えた姿が良い。とどめの最強形態のデンドロビウムはヤバい。初見だともう何コレ?ってなったもの。要塞みたいなフルカスタムしとるやんけ。
第10話の段階で1号機、2号機が大破して、残りの回はコウとガトーは何で戦うねん?と当時のユーザーは不安と期待を持って次話を待ったことだろう。で、次に出てきたのがどっちもデカくてすんごいヤツだからビックリだわ。まさかこんなすごいのが後に続くとは思わんだろう。デンドロビウムはやばすぎるって。
ケロロ軍曹が、こたつに潜って顔だけ出した状態がデンドロビウムのそれって例えていたのを思い出した。本当にそれっぽく見えてくる。
今ならとっくの昔に全部出揃っているから一気見し放題だけど、リアタイだと全話発表まで1年以上かかっている。
当時のユーザーは1話毎にワクワクして待機していたのだろうな。私なんて面白すぎたから一気に見たし。連続するOVAのリリースをリアタイで待つことがないので、これを実際に待っていたら相当焦れたことだろう。特に1号機、2号機が同時に爆破となった後の話数がそうだろう。
話はキツいしスッキリせず、子供には難しい。娯楽性としては弱い地味な内容だが、これはこれで味わいがある。総じて面白い。
とにかくガンダムが出てきて戦うシーンにワクワクした。完成度の高いアニメーション技術として大合格だ。こんなに古いのにここまですごい絵なのかと今見てもビックリしてる。
この星屑の記憶は22世紀まで連れて行こう。
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