「飛べ!イサミ」は、1995年4月から1996年3月まで放送された全50話のテレビアニメ。
本作はNHKが何から何まで自社で手掛けた初のオリジナルアニメである。NHKオリジナルアニメ第一号作品とはすごいぞ。というわけでNHK的には記念碑的作品。
そういえば最近のNHKは、かつて他所の局でヒットしたアニメの続編を担当する事が増えたな。こんな感じで全部自社製のしっかりしたアニメを作っても良いのに。イサミは大変娯楽に富んだ名作だと思う。
最近何かと威厳を欠くネタをぶっこみがちなNHKだが、過去に行った事は善行、悪行問わずいつまでも変わらない。その昔には、このような良い作品を仕上げる素敵な仕事をしていたんですぇね。グッジョブ。
本作のタイトル、メインヒロインが短髪ということくらいは何とか記憶していた。その昔、家でビデオを見たことがある。懐かしくなって何か見たくなった。
アニメとは別個にジャニーズが好きなので、TOKIOが歌うOP曲「ハートを磨くっきゃない」は最近でもめっちゃ聴いていた。
この曲の思い出といえば、中古屋で8センチCDを買ったら一目でアウトだろうってくらいディスクに傷というかヒビが入っていたこと。当然1秒も再生出来ない。
仕方ないからジャケットに写る茂くんや山口くんを見てイケてる兄さん成分を補充するだけのアイテムになった。そんな苦さが押し勝った中でちょっとの甘みも得た思い出となった。あの店は許さん。そして売ったヤツも悪い。ちょっとの不注意でああなるものでもないから、扱いがクソ悪い。
それから関係ないけど敵が天狗という要素から、こっち側が天狗を操作して楽しめるシューティングゲームの「はなたーかだか!?」を思い出した。懐かしいのでアレも引っ張り出して遊ぼうかな。
そんなこんなでハートを磨きながら楽しんだ名作の感想とかを書き殴って行こう。
内容
ヒロインの花丘イサミ、その同級生男子の月影トシ、雪見ソウシの3人は新選組の子孫である。
ある日、一行がイサミ宅の蔵を物色していると、新選組が残した秘密基地が発見された。そこには新選組が残した伝説のアイテム「龍の剣」があった。
世界征服を企む悪の組織「黒天狗党」の存在を知った3人は、愛と勇気と伝説のアイテムを用いてコレに完全に立ち向かうのだ。
感想
新選組をテーマにした現代作品って結構な数作られているけど、こんなに昔からもあったのか。この後にもNHKは香取慎吾主演で大河ドラマの新選組をやったものな。新選組に縁のある局だ。
主人公達3人は小学5年生。程よくガキである。
新選組の血を引く子孫であり名前にも有名所の要素が入っているが、新選組要素はそのくらい。後は割りとハチャメチャで自由なNHKのオリジナルドラマが展開する。
初期だと3人いても剣を使えるメンバーは一人だけなので、残った2人は手持ち無沙汰だな~と自分たちでネタにしていた。そんなわけで、2クール目からは新選組ぽい専用衣装に変身して1人1つずつ武器を持って全員で戦えるようになった。テコ入れとか、設定の進化ってヤツだな。この服は新選組ぽくて格好良かった。
それからちょこちょこ先祖の残したからくりアイテムが出てくる点は「キテレツ大百科」ぽかった。
前期OP映像は画や動きが少ないやや省エネ仕様だったけど、後期OP映像は急に枚数を増やして作画力も上がっていた。後半から本気を出してきたこの変化は印象的。
全話通してOP曲はTOKIOの「ハートを磨くっきゃない」で固定だったのは英断。名曲や。
正義のチームで巨悪に挑むという特撮ものみたいな設定ではあるが、そこは子供に優しいNHKということで、どうにも全体的に締りがなくて緩い。
基本こっちもあっちもふざけているし、悪者軍団といってもそんなに怖いことはしない結構なポンコツ軍団だった。
敵陣営にいるのは、タイムボカンシリーズでいうところの3悪人的なテンションのやつばかり。思えば総員ギャグ要員なアニメだったかもしれない。
黒天狗党は、なんとなくジャイアントロボのBF団ぽい。微妙に十傑集メンバーぽいヤツもいるし。
トシがハマっている作中作の「ガンバマン」というヒーロー番組なのだが、そのOP映像がどうにもOVA「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日」のOPとも似ている。コレは多分意識して作ったのでは?
それから失踪中のイサミのパパがコートを着た包帯男という点も、ジャイアントロボの村雨みたいに見える。
メインの子供たちは実に子供らしく活き活きしているし、敵もかなり愛嬌がある連中で良い。後半に進む程漫才みたいなやり取りがあった。
敵味方も含めて新喜劇みたいな一幕を作っていく劇団イサミ感があって良かった。
一度でなく度々出てくるゲストキャラも面白いし、黒天狗党四天王のデザインも結構格好良くて好きだった。ゴールデン天狗は普通に変態の見た目で職質に合うと思う。
新選組がお仕事をした際には「新選組参上」の札を置いていくルーティンがある。初出動時には、漢字に弱いトシが「新選組三上」と間違えて書いていた。警察とかの関係者が新選組の三上(みかみ)と思っているのに笑った。こんな感じの分かりやすいギャグ要素が連発して大変ユニーク。
最終回のラスボス戦でも、剣の切り合いが始まると思いきや「停電したから仕方ない」ということで敵味方揃ってちゃぶ台を囲んでお茶を飲むような緩い展開が見えた。この緩くて楽しい感じが良い。
後半に行くほど黒天狗党メンバー間のやり取りが面白い。主役はそりゃ大事にするけど、作り手が敵サイドキャラも愛していると分かる。長い話数の中で良い具合に各員のキャラ性を掘り下げているのは評価できる。
大規模で展開する悪の組織メンバーとはいえ、普段はそこらの一般人として生きている。
敵キャラも普段は企業運営者、大学生や学校の先生、その他の仕事をしていたり家庭を持っていたりする。下っ端から四天皇まで、敵側主要メンバーの日常も見れる点は面白い。
中身が女子大生の鎧天狗は、講義やバイトが忙しくて組織の会議に出れないという何ともリアル性を持つキャラだった。
主人公ヒロインのイサミが性格から見た目までボーイッシュな点は当時だと新鮮かもしれない。NHKならこの後にやった「カードキャプターさくら」とかがかなり萌え萌えだったので、活発な短髪ヒロインのイサミの設定は結構攻めていたのかもしれない。でも声は可愛い。
当時人気上昇中だった内田有紀的な感じで作りたいという考えからこのビジュになったという。内田有紀は短髪でイケメンだったなぁ。「TENCAを取ろう! -内田の野望- 」と「Only You」は良く聴いていたぜ。
一応帰国子女としてイサミが転校してくるところから物語はスタートする。転校初日からトシがイサミちゃんにパイタッチするというアクシデント絡みのファーストコンタクトは良き導入だった。これ以降、よく喧嘩して共闘もするようになる二人のちょっとラブな関係性も良かったな。
女子がセンターで周りに男子が二人のこの構成だと「赤ずきんチャチャ」感もある。日髙のり子はどちらにも男子役のメインキャラで出演している。
イサミのお母さん役が井上喜久子姉さんだった。90年代真ん中のこんな時からもお母さん声優だったのか。この時から今日まで何人お母さんキャラをやったのだろうか。ママが美人キャスターというキャラ設定も印象的。
ヒロインキャラが優秀。皆可愛かった。
普段はゆるふわ系ギャルのテンションで学校の先生をしているはるか先生が、裏ではセクシーなくのいちな点には萌えた。
鎧天狗の中がボスの孫娘でこれもセクシーで良かった。
最初はボイスチェンジャーで梅津秀行のおっさん声になっていたし、言動に女子っぽい感じもしなかったので、この設定は読めなかった。鎧をパージしたら中身は大学生のルリ子さんだった。
中国から放たれた刺客のニイハオ3姉妹も皆可愛かったぜ。
長女のジャスミンはエネルギー弾をぶっ放す強者で新選組を圧倒したこともある。何気に新選組が普通に負けた超人キャラだった。亡き水谷優子が演じているのも懐かしい。
次女の名前がタピオカなんだけど。タピオカって最近ブームになったヤツだけど実はこんなに昔からあったのか。
三女のライチはギャンギャン吠える元気なお子様でイサミちゃんにめっちゃ突っかかる。でもなんだかんだ仲良しで萌えた。
萌えるチャイナ娘をぶっ込んで受けを取るという手法は、この後にNHKを盛り上げたCCさくらのメイリンにも流用されている。メイリンも原作にはいないアニメオリジナルキャラだったことから、NHKはチャイナ萌え演出に長けるといえる。
それから女天狗7号も結構可愛かった。
女子が天狗のお面を付けると妙に色っぽく見えるのは何でなのだろう。
後半は宇宙より飛来した謎のエネルギー源「ルミノタイト」を巡るSF色濃い目なお話も楽しめた。
芹沢会長の正体が宇宙人だったとか、謎パワーで若返るとかの何かスゴイ話になっていたけど、全体的に緩い話なので最終回ではそれも簡単に畳める。
スッキリ楽しくなオチで平和な作品だった。
かなりライトな作風で見やすかった。何よりもキャラが単一でも集団で絡んでも楽しいのが良かった。
50話もあったけど疲れずに5日くらいで完走した。NHKも良い作品を持っているじゃないか。コレなら今でも再放送すれば子供に受けそう。
というわけで、童心に帰ってハートも磨ける楽しい一作だった。大好きだぜ。
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