こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

騒いで恋しての蘭世の青春「ときめきトゥナイト」

ときめきトゥナイト」は、1982年10月から1983年9月にかけて放送された全34話のテレビアニメ。

 

 諸々の事情で放送休止が多く、放送期間が一年枠だった割には、3クール分よりちょっと少ないくらいの話数しかない。その点は残念である。

 

 1982年の作品とは、めっちゃ古いな。この時代の空気など一呼吸分も吸ったことがない。

 放送期間中の1983年夏にファミコンが発売となった。あのファミコンよりもまだちょっと先輩のアニメということから、どれだけ古い時代の物なのかがよく分かるだろう。ファミコンのもっさいドットから考えて、現在のニンテンドースイッチのような滑らか画面のゲームが到来する未来がやって来るなど、当時の人間は考えもしなかっただろう。これぞカルチャーショックである。ファミコン愛はこのくらいで終わりにする。

 

 それくらい太古の少女漫画原作アニメを、令和に入った今こそしっかり見るのだ。

 

 このアニメはチビの頃に再放送しているのを見た事があるのだが、タイトルと蘭世がマン一(マント一枚のみ)で踊るエンディングしか覚えていなかった。あのエンディングはなかなかの印象強さで、絶妙にエッチかつセクシーでもあったことから、当時の男子のお供達には結構喜ばれたのではなかろうか。

 

 内容がまるで思い出せないけど、最近どこぞの噂で「実はすごい漫画なんだ」と耳にしたことがあった。「じゃあ見てみるか。アニメで」となって忙しい合間を縫ってサクッと3日で視聴。忙しい合間を縫っての隙間時間ドリブルが私の得意技である。

 

 ではトゥナイトだけとは言わず、一日中ときめきまくりな江藤蘭世の青春をプレイバックした感想とかを書き殴って行こう。

 

ときめきトゥナイトDVD-BOX(6枚組)

 

内容

 ドラキュラのお父さんと狼女のお母さんとの間に生まれたモンスター娘の江藤蘭世は、こっそりと人間社会に紛れて暮らしている。

 

 蘭世は学校の同級生イケメンの真壁俊に恋をしている。だがしかし、蘭世達魔界の者のルールとして異種族間ラブは禁じられている。

 

 そんなタブーなラブの道を、実にお気楽なテンションで行く蘭世の騒がしい青春ドタバタラブコメが展開する。こいつはとっても面白い。

 

感想

 タブーに踏み込んだ異種族間の命がけのラブをテーマにしている割には、娯楽性とおふざけに富んでいてだいぶ面白い。全体的に笑える。

 異種族の交流から愛情が育まれる内容を騒がしくユニークに描くこの感じは「うる星やつら」を思い出すものだった。

 

 作風と絵が好き。古臭いけど蘭世はとても可愛く、躍動感ある若き命として描かれている。

 一昔前のギャグマンガ的演出が懐かしくも愛しい。蘭世は基本的に美形ヒロインに描かれるが、ギャグ展開に入って行くと変顔をしたり急に目が小さくなったりと、狙って間抜けな感じに絵柄を崩してくる。アラレちゃんのアニメの演出がこんな感じだった。

 緩急をつけて絵柄をいじってくるこの感じは良い。作画に躍動感があって楽しめる。今期の最新アニメの中には、省エネ作画ゆえずっと死んだような画が連続する物がある。それと比べると昭和時代の古いアニメなのにしっかり生命力を感じる絵だと言える。

 

 キャラがだいぶユニークで良い。無駄な数は出さず、数を絞って個性的なキャラを配置し、毎度各員の濃いキャラ性を魅せていく展開が良い。

 

 ヒロインの蘭世がたいぶ面白くて変な女に描かれているな。これはすごく好きになる。髪型がマジンガーZの弓さやかと一緒だな。今時の漫画にはいないタイプの曲者ヒロインではないかと想える。

 演じた原えりこは、この年がデビュー年だったという。一年目でハマり役をゲットしたとはすごい。アニメ「きまぐれオレンジロード」では、芸人の響のデカい方くらい「先輩、せんぱ~い」と言って主人公にくっついてくる元気な後輩ギャルを演じていたのが印象的な役者だ。あの感じで蘭世のパワフルさと真壁くんの前でキャピるあざとさを演出出来ているのが良い。

 声優が好きだし、それより先行して芝居が好きなので、ちょっと突っ込んで芝居も褒めるぜ。

 

 可愛い顔をして蘭世のやることは大胆。1話目から恋敵の神谷曜子と元気にシバき合っていた。うら若きギャルが顔面をしばき合う、この構造が面白い。

 イケメンの真壁くんを巡って蘭世と曜子が揉めるのは毎度のことだが、二人共荒っぽく、ほぼ初手の段階から手を出してくる。美少女なのに物理に物を言わせた争いに出がちな点に笑える。

 ライバルの曜子も凄い勢いで攻めてくるから笑える。大柄のスケバンや男子相手でも大立ち回りするパワフルヒロインだった。こっちも相当面白い曲者ネタ女だった。笑える。

 二人のヒロインは物理的にもメンタル的にも強かった。やはり昭和のギャルは精度が違うな。

 

 あと蘭世のお母さんもだいぶパワフルな女なので、血が同じなのだと良く分かる。美人な蘭世ママの声は昔ののび太くんの声だった。

 蘭世の母は、旦那を呼ぶ時に「あなた」を変化させた「あ~た」呼びをしてくる。我が人生で「あ~た」を言うヤツを見たのは、デヴィ夫人に次いで二人目のことだった。

 

 真壁くんを真ん中に置いてパワフルヒロイン二人が暴れる割りとガバガバな三角関係が楽しめる一作だった。ふざけたアニメだな。めっちゃ好き。

 一応の三角関係がある作品だけど、コレは蘭世が優勢で曜子が絶対に噛ませ犬だろう。蘭世が可愛すぎて曜子は決して美少女ではない気がする。まぁ面白いヒロインだからどちらも好きだけど。

 

 カチューシャ女の曜子を演じたのは冨永みーな冨永みーなってこんなに昔から業界にいたんだとびっくりする。今はカツオくんの声をやっている人。

 そういえばこれよりずっと後に放送した「地獄先生ぬ~べ~」でもみきちゃんというものすごくグラマーな小学生のカチューシャ女を演じていたな。彼女の演技が面白い。

 

 ヒロインの蘭世を第一に愛でるものだが、そこを除けば一番好きなキャラは曜子の父親の玉三郎だった。このおっさんだけ他より一歩踏み込んで絵柄がコミカル。おっさんなのに可愛いらしく面白いマスコットキャラになっていた。

 真壁くんの所属するボクシングクラブ、人気のスーパー、土建屋などを経営し、あんな間抜けな顔で商業の方はやり手な社長である。娘が大好きな親父な点もユニーク。

 

 蘭世は玉三郎のことを最初は「生理的に無理」と言っていた。酷い。まぁこの年頃のギャルはおっさんのことを一層汚く思いがちなので無理もない。でも関係していく内に、真壁くんのお母さんに片恋しているのが可愛いなどと反応するようになり、普通に仲良しになっていく。この関係性には安心した。

 滝口順平が間抜けでおバカかつ可愛らしく玉三郎を演じているのが良かった。この人の声はなんだか落ち着く。

 

 蘭世は噛みついた相手の姿をコピーできる能力を持っている。くしゃみすれば変身が解除される。この変身能力を用いて毎度の騒動を面白おかしく乗り越えていく。変身能力がシナリオを面白くしているのは子供向けに良い。

 蘭世が男キャラに変身した場合には、コピーされた役を演じる男性声優が女喋りの芝居をすることになる。その点も楽しめる。玉三郎おじさんの女喋りには笑った。

 もしかするとの話だが、当時の男子のお友達は自分も噛まれたいと思いながら見ていたのかもしれない。いや、絶対何人かはいただろう。

 

 魔界からのお友達が人間界に来てひと騒ぎ起こす展開も楽しい。透明人間、巨人、サンタさんなど、ファンタジーな連中がやってきて楽しい。

 人の目には見えないメスの透明人間なのに名前はミエールというキャラにくすりと笑ってしまった。こういう微妙なセンスのギャグネタがいいよね。私の好きな土井美加が演じていたのも良かった。

 

 前半はほぼおふざけな感じのアニメだったけど、中盤では真壁くんや曜子に蘭世がモンスター娘であることがバレてしまい、そこから展開が少し真面目になってくる。

 

 魔界の民の秘密を知った人間はやはり滅殺しなければならない。それが鉄の掟である。しかし愛した男である真壁くんを殺すことはなんとしても阻止しなければならない。そんな愛の想いから蘭世の言動もシリアスめいたものになってくる。ここに強く愛を感じる。

 このアニメが真に言いたいのは、異種族同士でも真剣に望めば愛は育つということ。そんな根っこのテーマは美しい。一生懸命愛する蘭世の生き様は間違いなく美しく尊いのだ。萌える。

 

 真壁くんを魔界の仲間にすることで、身内なら殺さなくてOKとなってピンチは回避される。それ以降の話ではスペースウォーズを始めたり、過去に未来にの時間旅行をしたり、キャラを原始人化して原始時代のエピソードを展開したりと、バラエティに富んだ色んな魅せ方で楽しませてくれた。

 

 蘭世と真壁くんの恋と同じく、序盤から同時進行していたもう一つの重要要素が、人間界にいる魔界の王子を探すというモーリに課されたミッション。

 魔界の王子は実は二人いて、内一人は人間界に紛れ込んでいるとのことだった。上からの命令で、モーリは売れない小説家として活動する傍ら人間界のどこかにいるであろう王子様探しを行う。

 これは視聴者的に「絶対真壁くんがそれでしょ~」と極序盤から当たりをつけてしまうものだった。最終回では案の定真壁くんが王子だと言ってモーリは真壁くんを魔界に連れて行く。しかし、実は間違いだったとなる。でも最後に真壁くんのお母さんが語った星型のアザの話を聴けば間違ったと見せかけてやっぱりそれで合っている感じしかない。やはり彼が魔界のプリンスのようだ。

 

 まぁそこのところは原作をチェックすれば良いことなのだが、最終回は結局そこのところどうなの?って感じでスパッと終わる。

 ちなみにネットで調べたところ、アニメは基本設定くらいは原作と合わせているけど、他はほとんどテレビオリジナルにしているらしい。

 

 それからよくよく突っ込んで考えて集中して見ると、秀才こと邦彦くんと真壁くんとの関係性にBLの可能性が見えないこともない。いや、見えないか。

 邦彦くんも地味に良い味を出している良いキャラだった。

 

 小ネタとして印象的なのは、序盤回に具志堅用高が出てくること。真壁くんがボクサーだということから偉大な先輩ボクサーの彼を出した模様。具志堅用高もこんなに昔からデビューしていたのか。彼を知った当初こそ芸人と思っていたが、実はとんでもない戦績を上げたすごい人らしい。

 あとの芸能ネタといえば、テレビをみているシーンで松田聖子が「風立ちぬ」を歌っていたこと。あれはいい歌だよね。

 真壁くんがボクシングの特訓を行うシーンでは、明らかに映画のロッキーのオマージュが見えた。

 演出もユニークで良かった。

 

 OP、ED共に楽曲のセンスが良い。

 割りと最近放送した「Anison Days」で森口博子がOP曲「ときめきトゥナイト」をカバーしていた。それを聴いてなんか良い感じ~と思っていた。オリジナルを聴くとしっかり味がある。オタクが弱いジャンルであろう「物理学」の歌詞から始まる点が印象的。

 そして蘭世がマン一(マント1枚のみの姿)で踊るED曲もなかなか格好良い。最終回では主要キャラ皆が揃ってマン一パフォーマンスを見せてくれる。玉三郎おじさんのマン一はいらんだろ~とツッコミを入れてしまう。

 

 最初から最後まで騒がしく、そこが楽しいアニメだった。1話完結の緩いギャグテイスト作品なので、また見ても楽しめそう。良い感じに忘れるであろう10年後くらいにまた見たい。

 こういう楽しい作品なら現代でリブートしても受けるんじゃないかな。今度「うる星やつら」も令和版をやるというのでこっちもイケると思う。

 古いけど好きになれる素敵な作品だった。

 

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