こしのり漫遊記

どうも 漫遊の民 こしのりです。

狂気と恐怖の深みにご招待「伊藤潤二『マニアック』」

伊藤潤二『マニアック』」は、2023年1月19日にNetflixで配信された全12話のホラーアニメ。

 

 前作「伊藤潤二『コレクション』」が2018年1月スタートアニメで、次作まで5年も経過している。コレクションの方はリアタイしてしっかり見ていた。あれがもう6年前なのか。恐怖と狂気の歴史も過ぎてみれば速いものだ。

 

 配信は去年だったが、今年の夏アニメとしてテレビ放送が開始した。

 去年の年明けからこんなに夏向けのホラーアニメが配信していたのか。寒い1月配信にしては寒さを加速させる怖い枠だったろうに。配信リアタイ勢は余計に寒いから夏にやれってツッコンでいたかも。

 今ならクソ暑いから、それをちょっとでも静めるには放送時期としてベストだと言えよう。

 同期放送枠には「闇芝居」も最新シリーズの第13期を展開中。この夏を冷ややかにするホラー枠として、伊藤潤二マニアックと闇芝居がツートップを駆けている。まぁ滑って寒いネタ枠なら、異世界なろう枠が年中常駐しているのだけど。

 

 色々あって去年の配信は見逃していたので、この7月から初視聴となった。コレを1話、2話と見ていく内に「面白い!」とハマってしまい、一気に残りも見たくなった。なったならもう私の視聴熱は収まらない。というわけで週1放送を待たず、一気に最後まで見ることした。面白かったのですぐに全部見れちゃった。

 

 うちの親がホラー好き好き人間なものだから、楳図かずおと並んで伊藤潤二のマンガもそこそこお家に揃っていた。「富江」とかは結構チビの頃からも知っていたやつだわ。

 同じ怪奇ものでも楳図かずお水木しげるらとは描く世界観がまた異なるんだよな。伊藤潤二でしか得られない怖さ、狂気性、そしてキショさがある。キショいものや世界が割と好みなので、こういうホラーものは普通にいけちゃいます。

 ちなみにうちのお兄ちゃんはホラーがオールダメなので、この手の本を読んでいたらキショがられます。その反応も割と好きなんだなコレが。というわけで伊藤潤二の恐怖の世界と私は相性が良い。こちらのアニメ化したものもしっかりと楽しんだ。

 

 全12話の中で1話完結もの、その半分のAパートで完結するもの、合わせて多くのマニアックなショート怪奇エピソードが楽しめた。

 印象的なのは、コレクションの時にも出てきた双一、富江が出るエピソード。もはや定番の伊藤潤二名物キャラたちです。三ツ矢雄二が憎たらしさとキモさ全振りで演じる双一のキャラ性はユニーク。キモいけど笑えるから結構好きなキャラ。

 本作の画風として目立つのは、振り切って美醜の区別を描く点。ブスはとことんブスに描かれ、美形のキャラはちゃんと綺麗に見える。美醜の属性違いでキャラデザに緩急を持たせているのは視覚的に刺激になります。例として上げるなら、富江は妖艶かつ美形に描くが、双一はめっちゃキモいブスに描いている。この差を見ても面白い。

 

 内容として特に面白かったのは、第3話の「首吊り気球」かな。

 自分の顔をした気球が飛んできて、先には首吊り用の輪っかロープが突いている。こいつに自分の首をゲッチューされたらもう終わり。空に浮かんで首吊り死体が完成するのである。キモいし怖いアイデアで来たなぁ。面白いです。

 気球だから突付いて空気を抜けば良いじゃん!と想って攻撃したら、同じ顔の人間の方がしぼんで死ぬ。それならもう太刀打ちできないから家に引きこもるしかないじゃんか。

 分かりやすい恐怖とキショさで、不要不急の外出が徹底して封じられることから、コロナ期を経た今見るとなんかだかなぁ~となる。

 空がキショい気球でいっぱいになり、世界規模で狂っていく内容は一番心に残った。

 

 第7話の「墓標の町」も気味が悪くて面白かった。この気味の悪さに用がある。

 人が死んだらどこだろうとその場で死体が墓石化するという恐怖現象を扱った怖い話だった。交通事故の末道路で死んだら、道路の真ん中にも固い墓石が出来る。そうなったら車で走れないというクソ迷惑な現象になるのが印象的。

 病院のベッドで死体になられたら運び出すのが重いから、死にそうになった人は事前に施設の外に出しておくという酷い事もしていた。

 遺体を燃やす、埋めるの手間はないけど、石になられたらそっちの方が困ると分かるものだった。一般的に面倒とされる葬儀の簡略化をテーマに作った話なのかな。

 

 その他にも単純に怪奇現象だけでなく、人間心理に潜む狂気性を強く扱った内容が印象的だった。

「屋根裏の長い髪」のエピソードは振られ女の怨念が男を狙うものだったし、「いじめっ娘」では人が弱いものへ対して持つ嗜虐心を描いていた。

「恐怖の重層」では、大きくなった娘をまた幼い頃から育てたい、合わせて自分も若返りたいという母親の極まった育児コンプレックスが描かれていた。

 これらはとても怖いことだけど、人間心理としてリアル性もある。なんだかんだ本当に怖いのは、幽霊や化け物より人間。そのように捉えることも出来る。

 

 それぞれ上質な恐怖&狂気漂う物語に仕上がっていた。この手のジャンルが好きなマニアにはハマる内容です。

 これを見ればちょっとは涼しくなるかなと期待していたが、そういえば私はホラーが平気で簡単にはブルブルしない。なので、いくら見てもやっぱり暑いままだった。まぁそういうこともある。夏から逃げるなってことっすね。

 ホラーも夏もよりマニアックに!そうした方が楽しいってものだ。

 

 

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