こしのり本
ホフマン作のサイコホラー小説「砂男」「クレスペル顧問官」「大晦日の夜の冒険」の三篇が収められた一冊を読んだ。この寒い夜を更に寒くするような内容の作品群である。 どれもこれも幻想怪奇な内容となっている。ヒッチコックの映画を見た後のような気持ち…
アーネスト・ヘミングウェイが描く失われた世代の若者達の青春を描いた一作、それが「日はまた昇る」である。 物語がスタートする前のページに 「みんな失われた世代ね、あなたたちは」 ガートルード・スタインの言葉 と表記されている。 実に意味深で印象的…
ブレヒト作の戯曲「三文オペラ」。 乞食と盗賊と娼婦の栄えるというなんともダークな要素の揃ったロンドンの貧民街を舞台として、お尋ね者の盗賊ボス メッキースの大捕り物を描く内容となっている。 タイトルに「三文」と付く通り、気品溢れる従来のオペラと…
アーサー・ミラーによる戯曲作品、それが「セールスマンの死」である。 作品の内容はタイトルが示す通りに、とあるセールスマンが死ぬお話である。 セールスマンのウィリー・ローマンが死を迎えるまでの過程を見ると創作物だからといって無関心でいることは…
劇作家オニール作「楡の木陰の欲情」を読んだ。 いや、全く知らない本だった。 何か底知れぬ深いテーマがあるような心に引っかかるこの変わったタイトルに釣られて読んでみた。 これは面白い。 作品前面に良くも悪くも「人間」らしさが漂っている作品であっ…
コクトー作の「恐るべき子供たち」を読んだ。 先日見たアニメ「空の境界」で登場人物の黒桐幹也の名前についてヒロインの両儀式が「フランスの詩人みたいな名だ」と感想を述べたシーンがあった。そのフランスの詩人がこの本の作者コクトーであろう。 かつて…
プーシキン作の「オネーギン」。 オネエではなく登場人物のエヴゲーニィ・オネーギンという青年の名がタイトルとなっている。 遺産で遊び暮らすオネーギンが田舎娘のタチヤーナに惚れられて恋文を貰うのだが、オネーギンは他に類を見ない特殊な振り方をして…
イプセン作の戯曲「人形の家」を読んだ。 日本では弘田三枝子が歌うこれと同じ名前の「人形の家」という楽曲が大ヒットしたのを思い出す。私も良く聴いていた。いずれもマストで子供の遊び道具ということから布施明の「積み木の部屋」という曲とごっちゃにな…
サミュエル・ベケット作の戯曲である。 本作はとある田舎の一本道が舞台。エストラゴンとウラジーミルというかなり歳のいった冴えない浮浪者が主な登場人物の2幕構成のストーリー。 途中にポッツォという高慢ちきなジジイとその下僕のラッキーというのが出て…
戯曲作家として有名なチェーホフの小説作品。 表題の2編の他に「中二階のある家」「イオーヌイチ」「往診中の出来事」「谷間」「いいなずけ」の合わせて7編が収録されていた。全体的にどことなくアンニュイ感が漂っている印象があった。 「かわいい女」に「…
ロシアの文豪トルストイの書いた恐ろしい作品。 ロシア人作家の作品の登場人物はとにかく名前が覚えづらい。ロシア文学を好んで良く読むのだがこの名前の問題には困ったもんだぜ。 一官吏であるイワン・イリッチが不治の病にかかり、迫り来る死からそれまでの…
夏目漱石も絶賛したという名作「銀の匙」を読んだ。 農業高校を舞台にした漫画あるいはアニメ、そしてセクゾの中島ケンティーで実写化もした「銀の匙 シルバースプーン」の方では無い。ちなみに私はシルバースプーンの方に登場する御影というヒロインキャラ…
横光利一(よこみつ りいち)による十篇の短編小説が収められている。 「春は馬車に乗って」という素敵なタイトルに惹かれて読んでみた。 これはタイトルどおり素敵なお話であった。 機械・春は馬車に乗って (新潮文庫) 作者: 横光利一 出版社/メーカー: 新…
ロシアを代表する劇作家アントン・チェーホフ作の戯曲である。 チェーホフ四大戯曲の内2作が収められている。過去に他2作の「かもめ」「ワーニャ伯父さん」も読んだのでこれで四大戯曲は無事コンプリートである。 4作共通して言えることは、喜劇要素とどうし…
国語や社会科の教科書で良く目にした人物石川啄木の歌集である。綺麗なタイトルに惹かれて読んでみると中身はなかなかヘビーで笑えない話であった。 私としては歌集などを手にとるのは慣れないことで少々内容が脳に入りにくい箇所もあった。しかしその内に慣…
太宰治の未完の絶筆それが「グッド・バイ」である。遺作がタイトルでバイバイを言っているのでコントな組み合わせとなっている。太宰にしてはちょっとばかし変わった作風で楽しく読めたので是非最後まで書いて欲しい作品だった。実に惜しい。せめて物語完結…
短編作家のイメージのある志賀直哉の中編作品それが「和解」である。 父との不和から実家を出た息子順吉が長きに渡る父との不和を治めるまでの話である。読み終わってから、やはり家族は仲良くなければ損であるし、家族愛は美しい物だと晴れ晴れした心になる…
「雁(ガン)」とはカモ目カモ科ガン亜科の水鳥である。カモに似ているがカモより大きい鳥である。国語の教科書に載る「大蔵じいさんとガン」や、名作絵本を原作にした日本名作アニメ「ニルスのふしぎな旅」などで御馴染みの例の鳥である。可愛い、そして美…
なんとも奇怪にして淫猥さを感じるインパクトのあるタイトルだ。まずタイトルが好きなんだよね。 肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫) 作者: ラディゲ 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2013/12/20 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 20歳にしてこ…
オーロラ姫が出るやつじゃないよ- 川端康成作の素敵なタイトルの本だが、中身は変態チックにして人間の歪さが露になった結構ヘビーなものとなっている。 三島由紀夫が本作を猛プッシュしている。ユーモア的には決しておもしろい筋を持った作品ではないが、…
著者である泉鏡花の名前の響きの良さから本作を手にとって読むことにした。 そして、私が手に取った本の表紙は吉永小百合がアップで写っている映画「外科室」のポスターが刷られた物であった。角川文庫のから出た本である。 収録作品は「義血侠血」「夜行巡…
シェイクスピアと言えば「四大悲劇」なんて呼ばれる作品群を手掛けたこともあって悲劇の作家のイメージが強いが、実はこの人は万能な作家で喜劇の方も腕もピカイチである。 新訳 夏の夜の夢 (角川文庫) 作者: シェイクスピア,河合祥一郎 出版社/メーカー: 角…
「いっぺん死んで見る?」のセリフで御馴染みの地獄への案内人娘のお話ではありません。 「少女地獄」は幻想的且つ怪奇な推理物をお得意とする作家である夢野久作の作品である。 少女地獄 (夢野久作傑作集) (創元推理文庫) 作者: 夢野久作 出版社/メーカー: …
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」の冒頭があまりにも有名な川端康成の小説「雪国」を読んだ。 漱石の「坊ちゃん」、太宰の「走れメロス」と本作は冒頭の一文が有名でクイズ番組の問題で出てきたりする。 有名な書き出しであるが読んだことが…
土 (新潮文庫) 作者: 長塚節 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1950/06/13 メディア: 文庫 クリック: 9回 この商品を含むブログ (9件) を見る 舞台は明治時代の茨城県の農村。当時の農民の暮らしをリアルに書き綴った作品である。大昔のしかも都会でない田舎…
新たに生まれて来た子供が障害児の場合に親は一体何を想いどのような行動を取るのかということがわかる考えさせる一冊であった。 個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10) 作者: 大江健三郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1981/02/27 メディア: ペーパーバック …
志賀直哉の思い出とえば、高校の国語の教科書で「清兵衛と瓢箪」を読んだことだ。テンポの良い短編でとても好印象なままに記憶に残っている。高校の国語のテストで志賀直哉の作品を2つか3つ挙げよという文学青年の我にはサービスな問題が出題したこともあ…
檸檬(れもん)、私の大好きな黄金の果実だ。何の話か全く知らない作品だったが「ただ檸檬が好きなので」という理由で手に取った。しかし、これは軽い気持ちで読める簡単な本ではなかった。難解な文体、独特な心理描写、不思議でオカルティックな要素も含む…
「或る女」。なんとも性を主張した深みがかったエロスを彷彿とさせるシンプルタイトルだが、内容は決してそういうのでない。本当に或る女、つまりは主人公 早月葉子の一年間の人生記録を読んでいく本である。 表紙の女の絵をじっと見ているとなんだか変な感…
中国古典作品を元に書かれた小説作品なので当然にして人物、地名その他もろもろのワードが小難しい漢字で書かれる。開いたページが漢字まみれだと活字に慣れない方は遠慮したいと思うかもしれないが集中して読めばいける。 読み進めるのに少々不自由をするか…