こしのり漫遊記

どうも漫遊の民こしのりです。

こしのり本

エマの青春「エマ」

「エマ」はジェーン・オースティン作の長編小説。1814年に発表された作品である。岩波文庫の上下巻を読んだが確かに長かった。忙しい生活の合間を縫って上下二冊を読むのに約一ヶ月かかった。ジェーン・オースティンの作品ならかなり前に「高慢と偏見」とい…

悲痛な純愛「狭き門」

フランスの小説家ジッド作「狭き門」を読んだ。 昨今の小説というか、ラノベというのを見ると、大体こういう話ですっていう内容がそのままタイトルになっているパターンが多く見られる。あれは長ったらしいタイトル明記がダサかったり、バカっぽかったりもす…

水の精の悲哀「オンディーヌ」

「オンディーヌ」は1939年にフランスの作家ジャン・ジロドゥによって書かれた戯曲。 先に世に出たドイツ作家フーケの作品「ウンディーネ」を下敷きにした作品である。 「ウンディーネ」をフランス的に言うと「オンディーヌ」らしい。 内容 遍歴の騎士ハンス…

悩ましい大佐の人生「ひとさらい」

「ひとさらい」は1926年に刊行されたフランス人作家ジュール・シュペルヴィエルによる小説。 妻がいても子供が出来ないビグア大佐は、子供を欲しく思っていた。そんな彼は捨て子や、人から譲り受けた子、さらには誘拐までして子供を我が家に集める。こうして…

芸術を突き詰めたその先の世界「知られざる傑作」

「知られざる傑作」は1831年に発表されたバルザックの短編小説。 タイトルがすごい格好良いと想って手に取った。 図書館には昭和27年に入荷したと記載される古いものしか無かった。一昔前の表紙がついていない岩波書店の文庫本だった。全く飾らない地味でレ…

男女の愛欲を紡ぎし二編「だまされた女 / すげかえられた首」

トーマス・マン作の二編の中編小説を読んだ。 「だまされた女」は1953年、「すげかえられた首」は1940年に発行された。 二作共に男女の愛欲、肉欲をディープに掘っている。ライトな読み物ではない。 ・だまされた女 「だまされた女」では初老の未亡人テュム…

世界が病んでも人は優しく美しい「ヒューマン・コメディ」

「ヒューマン・コメディ」は1943年に発表されたウィリアム・サローヤンによる小説。 物語の舞台は第二次世界大戦下のカリフォルニア州イサカという田舎。そこで電報配達をしているホーマー・マコーリー少年の青春が描かれる。 父を亡くし、兄が戦争の兵隊に…

破壊の限りを尽くす逃走劇「愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える」

「愚者(あほ)が出てくる、城寨(おしろ)が見える」は1972に出版されたジャン=パトリック マンシェットによる小説。 作者マンシェットは、ランボー作「地獄の季節」作中のセリフからヒントを得て、このタイトルに決めたとか。 「愚者~」よりも先に訳され…

ハードな少年時代「にんじん」

「にんじん」は1894年に出版されたジュール・ルナールの小説である。 主人公少年は、赤茶けた髪とそばかす顔の二つの特徴から「にんじん」とあだ名されている。 そんなにんじんは家族からもあだ名で呼ばれ、不当な扱いを受けている。 彼の母ルピック夫人はか…

異世界冒険ヒロイン「鏡の国のアリス」

「鏡の国のアリス」は1871年に発表されたルイス・キャロル作の児童小説。 「不思議の国のアリス」の続編である。 前作と共通して主人公少女アリスが摩訶不思議な世界を冒険する物語である。 作者のルイス・キャロルは、知り合いの幼女アリス・リデルに面白い…

ファンタジックヒロイン「不思議の国のアリス」

汚れなきあの日(ティーンエイジ)の心に帰ってみたい。そう想った私は、1865年に発刊されたルイス・キャロルの代表作「不思議の国のアリス」を手に取り、この秋の夜長を楽しむことにした。 昨今の色んなアニメを見ても、この作品の名前が出たりパロネタにな…

なかなか進まない離婚話「蓼喰ふ虫」

「蓼喰ふ虫」は谷崎潤一郎の書いた小説。 1928年12月~1929年6月まで新聞連載された作品である。 谷崎文学らしくテーマは男と女のラブについて、この作品でも男女愛の奥の深さ、同時に面倒臭さを解いている。これだから人は恋愛をせずにはいられない。 内容 …

高潔な精神がカムバックする「復活」

「復活」はロシアの文豪トルストイによって書かれた長編小説である。 1899年から雑誌連載された。ノストラダムスの大予言がどうのこうのと騒いでいた時より100年も前に書かれていた物語と想うと、クソ古いとしか言えない。 内容 主人公青年のドミートリイ・…

どんどん変わるその姿「変身物語」

変身にまつわるローマ神話が約250作収められた作品、それが「変身物語」である。 古代ローマの詩人オウィディウス作。 変身ヒーローが好きなので「変身」の言葉に釣られて読んでみた。 短編がたくさん入ってるので寝る前にちょこっと読むのに良い。 この夏は…

アホすぎる冒険の終わり「ドン・キホーテ(後篇)」

作家セルバンテスによって書かれた「ドン・キホーテ(後篇)」を読んだ。 この後篇は前篇から約10年経ってから発表されたという。すごい長い物語だけにその構想を固めるにもまた時間がかかったと見える。 後篇でもドン・キホーテの狂人めいた様を拝めること…

アホすぎる冒険がとても面白い「ドン・キホーテ(前篇)」

「ドン・キホーテ」はスペインの作家セルバンテスが描いたとんでもなく長い冒険もの小説である。 「ドン・キホーテ」なんていう激安ショップがあるが、小説の「ドン・キホーテ」を知る奴は一体何人いるのだろうか。 この物語は前篇だけで文庫本3冊分、後篇も…

姦通事件から破滅へ「ボヴァリー夫人」

フローベール作「ボヴァリー夫人」を読んだ。 不倫、浮気を取り扱いながらも、滑らかな文体と卓越したワードセンスによって文学作品として高い地位を得ている作品である。 二十才は越えていないと、忍耐的に読めないであろうと想った。 かなりの長編である。…

流されて魔法使いになった王様「テンペスト」

シェイクスピアが単独で手掛けた最後の作品、それが本作「テンペスト」である。 「テンペスト」は嵐を意味し、ストーリーは船が嵐に襲われたことから始まる。 シェイクスピアの人生も嵐のように騒がしくもあっという間に過ぎ去ってしまったものなのかもしれ…

華麗なる復讐「モンテ・クリスト伯」

アレクサンドル・デュマ作の長編小説「モンテ・クリスト伯」を読んだ。フランスの本だけど、これの日本版ドラマが現在放送中らしい。一話も見ていないけど。 我々の世代には「岩窟王」のタイトルの方が親しみがある。10年以上前にこれのアニメが放送していた…

人生をまっすぐ歩む素敵なヒロイン「ジェイン・エア」

シャーロット・ブロンテ作の長編小説「ジェイン・エア」を読んだ。上下2巻に分かれた長い話だった。 内容 ジェインの子供時代から十代後半までの人生を、ジェイン自らが語る一人称視点の物語である。 物語冒頭では幼い頃に両親を亡くしたジェインは伯母のリ…

「赤と黒」けしからんが魅力的な青年の心理を描く大作

スタンダール作の長編小説「赤と黒」を読んだ。上下二巻に分かれ、とにかく長いお話だった。 七月革命を挟んで執筆された1830年代のお話で、実際に起こった事件や実在した人物をモデルにしたキャラを取り入れた大作となっている。 ナポレオンが倒されてから…

理想郷を見た「失われた地平線」

ジェイムズ・ヒルトン作「失われた地平線」を読んだ。理想郷を意味する良く聞く言葉「シャングリ・ラ」の出典元はこの作品であるらしい。 偶然にも謎の地へ潜り込むことになるこの冒険ロマン小説、なかなか面白い。 作品の内容は人跡未踏のチベットの奥地にあ…

世俗を越えて辿りつく悟りの境地「真理先生」

武者小路実篤の小説「真理先生」を手に取った。 武者小路の作品なら「愛と死」「友情」を以前に読んだことがあったが、この「真理先生」はそれらとはまた毛色が違う、明るくハッピーなお話であった。そして人生教訓がたっぷり詰まった本であるが、この教訓は…

大河愛憎劇「嵐が丘」

エミリー・ブロンテによる長編小説「嵐が丘」を読んだ。映画化もした大変有名な作品であるとは知っていたが作品内容は全く知らなかった。 読んだ感想は、とにかく面白い。作品の持つ熱が尋常でない。表紙の触れ込みに「ページをめぐるのももどかしい面白さ」…

子供であったことを忘れてはいけない「飛ぶ教室」

ケストナー作の「飛ぶ教室」を読んだ。そういえばこれと同じタイトルの漫画も昔あったな。 児童文学の名作とされるこの作品を児童と呼ぶには大きくなりすぎたこの私が手に取ったわけだが、これは中々に大人にも響く教訓を盛り込んだ一冊である。 最初はこの…

芥川が世を去る前に残したメッセージ「河童・戯作三昧」

芥川龍之介の短編集を手に取った。 水木しげるの「河童の三平」が大好きなため、同じく「河童」というタイトルに目を引かれて読むことにしたのだ。 芥川が自殺する前の10年間に発表された作品が計10篇収録されている。 まず、「戯作三昧」。戯作は俗世間で広…

閉ざされた街で・・・・・・「ペスト」

カミュの「ぺスト」を呼んだ。 この流行病の前知識は楳図かずおの漫画「漂流教室」で得ていた。恐ろしい病とは知っていたが改めて怖いと思った。 アルジェリアのオラン市という、地理を知らず、また一つも興味あらずの私には地図でも引っ張ってこないと世界…

狂気とエロス渦巻く世界へ誘う「マダム・エドワルダ / 目玉の話」

バタイユ作の眠い夜でも読めば目が覚めてしまう程に衝撃的な一冊がコレ。 内容の濃い2篇の短編が収録されている。 両作品の詳しい内容についてはここでは触れられない。なぜかと言うと、この本の内容がこの世のエロスと狂気、そして溢れんばかりの変態性を集…

訛り言葉を直しレディになる「ピグマリオン」

ついに明けた2018年初の一冊となったのはバーナード・ショー作の戯曲「ピグマリオン」である。 中身は特に知らずにタイトルだけ見てなんとなく読んで見た。 どぎつい訛り言葉を発する花売り娘イライザが言語の科学である音声学の教授ヒギンズの指導の下で訛…

大衆読み物の決定版「暦物語」

ブレヒト作「暦物語」を今年の読書の読み収めとして楽しく読ませてもらった。 鬼才西尾維新の放つ大ヒット長編物の「物語シリーズ」のひとつにも暦物語という作品があるが、今回私が手にとって読んだブレヒトの暦物語は西尾維新が書いたのよりも遥か古に書か…